1. HOME
  2. 記事一覧
  3. 【妊娠中のむくみ】妊婦さんができる対策や対処法12 個!注意が必要なときも説明

【妊娠中のむくみ】妊婦さんができる対策や対処法12 個!注意が必要なときも説明

2025.02.14

555

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「妊娠中で体がむくみやすい…」
「妊娠後期で象の足みたいになってる…」

妊娠に伴って体が変化するとさまざまな変化が起こりやすいものですが、その中でも多いのがむくみです。

今回はむくみでお困りの妊婦さんに向けて、妊娠中のむくみの特徴や原因から、むくみの対処法・対策・予防を合計で12個、最後に注意が必要なむくみについて説明します。

妊娠中のむくみの特徴

妊娠中のむくみは、貧血や便秘と並んで3大マイナートラブルと呼ばれています。

血管の中の水分が染み出して、細胞の外にたまっている状態がむくみです。
体の構造的に、心臓よりも下にある足がむくみやすく、人によっては腕や手指にもむくみを感じることがあるでしょう。

むくみがいつから 起こるかというと、妊娠初期から妊娠後期まで、どの期間においても起こる可能性があります。

妊娠初期はホルモンバランスの変化によるむくみが、妊娠中期は血流量が増えることによるむくみ、妊娠後期では血流量の増加や子宮が大きくなることによるむくみを感じるでしょう。

妊娠中のむくみの原因

妊娠中のむくみの原因には、ホルモン分泌による影響や体内の水分量の変化、大きくなった子宮による血管の圧迫、下肢静脈瘤などが主に挙げられます。

ホルモンによる影響

妊娠中は女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの分泌が増えます。これらは妊娠を維持するために基礎体温を上げたり、水分や栄養素などを体内にとどまらせたりする作用があるため、むくみが起こりやすくなるのです。妊娠後期になるとアルドステロンやコルチゾールといった水分を体内にためこむホルモンも分泌されます。

体内の水分の増加

妊娠中は出産時の出血に備えるために、体内の血流量が増加します。血液にはもちろん水分が含まれているため、これが原因でむくみやすくなることが考えられます。

子宮による血管の圧迫

赤ちゃんが成長して子宮が大きくなってくる時期には、その重みで太い血管が圧迫されるため、むくみにつながることがあるでしょう。

足の付け根には全身を循環してきた血液が通る大静脈という血管があり、仰向けで寝ていると子宮が大静脈を圧迫することになります。血液が心臓に戻ることができなくなり、これが原因で足がむくむことも考えられます。

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤は、足の静脈の血流が悪くなり、静脈血管自体が拡張し、瘤(コブ)のように盛り上がった状態になることです。この下肢静脈瘤の自覚症状のひとつにむくみが挙げられます。

通常であれば、ふくらはぎのポンプ機能によって静脈の血液は心臓へと押し上げられています。しかし、このポンプ機能や血液の逆流を抑える弁の働きが弱くなると、静脈中に血液がたまり、静脈の壁が変形して瘤状になってしまうのです。

妊娠中の方の場合、腹圧が上がると静脈にも圧がかかってしまうため、妊娠していない方よりも静脈の壁がもろくなり、弁の機能に影響が出やすい状態です。これによって下肢静脈瘤が起こりやすく、むくみやすくもなることが考えられます。場合により痛みを感じる方もおります。

妊娠中のむくみの対処法

今起こっているむくみを何とかしたいという方に向けて、まずは対処法についてお伝えします。

マッサージ、漢方、足の位置を高くする、ストッキングやソックスなどのグッズを使う、姿勢を定期的に変えることについて紹介します。

マッサージやケアをする

足にむくみを感じる場合は、ふくらはぎや足首などをさすりあげるようにして、リンパマッサージをすると良いでしょう。足を伸ばして座って、つま先を天井に向けたり、つま先を前に伸ばしたりするのも効果的です。

足以外にむくみを感じる場合は、体の外側から心臓に向かってマッサージをしてみましょう。

そして、腕や手にむくみがあるときは、腕を上げて心臓より高い位置にしたり、グーとパーを繰り返ししたりしてみましょう。

医師に相談して漢方を飲む

漢方の中には、利水作用のあるものがあります。

・柴苓湯(サイレイトウ)
・五苓散(ゴレイサン)
・当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
・防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)

いずれもむくみだけでなく、血行改善や貧血、頭痛、めまい対策など、他の目的 にも使用されることがあります。

ただし、防已黄耆湯のように、使用による危険よりも有益性が勝ると判断されたときにのみ使用される 漢方もあります。漢方の使用が気になる場合は、必ず医師に相談したうえで使用をしましょう。

足を高くする

足にむくみがあるときは、足の位置を高くしたり、横になったときに足の下にクッションや抱き枕などを挟んだりすると良いでしょう。足が高くなると心臓に血液が戻りやすくなって、むくみの改善が期待できます。

弾性ストッキングや着圧ソックスを着用する

弾性ストッキングや着圧ソックスなどむくみの解消グッズ を使って、むくみのケアをすることも可能です。

ただし、締めつけが強いものを使うと血流が悪くなってしまう場合があるため、ご自身の足に合ったサイズのものを正しい方法で使用することが大切です。漢方と同様、自己判断ではなく医師に相談したうえで使用しましょう。

姿勢を変える

血流の悪化が原因でむくみが起こることもあるため、同じ姿勢を続けるのは避けましょう。座っているときや横になっているときは血流が滞りやすくなるため、定期的に姿勢を変えることが大切です。

横になっているときには、仰向けだと静脈を圧迫する恐れがあるため、お腹の側面を床につけるシムス位という姿勢がおすすめです。

また、長く立ちっぱなしになっているときは、足に血液が止まりやすくなるだけでなくお腹の張りを促し、場合によっては流産につながることもあるため、避けておきましょう。

妊娠中のむくみの対策・予防

ここからは普段の生活の中でむくみの対策や予防を意識したことを紹介します。食生活や運動、普段着などの面から、むくみをケアすることが可能です。

塩分を控える

塩分を取りすぎると、体が塩分濃度を一定に保とうとして水分をためこむ方向に働きます。

塩辛い食事やインスタント食品などには塩分が多く含まれているため、基本的に避けておきましょう。

塩分の摂取量の目安は、1日あたり約6.5g といわれています。
多くのカップ麺のスープや麺には一杯で5gから6gの食塩が、多ければ7gの食塩 が含まれているものもあります。

普段からよく口にする食べ物がある方は、食塩の含有量を把握しておくと良いでしょう。

カリウムを摂取する

カリウムは塩分を体外に排出するのに役立つ栄養素です。

妊娠の有無にかかわらず、女性は1日あたり2,000mg のカリウム摂取を目安にすると良いでしょう。
カリウムは昆布・ひじき・アボカド・ブドウ・キウイフルーツ・バナナなどに含まれています。

含有量の例としては、アボカド1個に約590mg、バナナ1本に約360mg、キウイフルーツ1個に約300mgのカリウムが含まれています。

腎機能に異常がある方は過剰摂取により高カリウム血症となる場合もある ため、取りすぎには少し注意が必要です。

軽い運動をする

ウォーキングやストレッチなど、軽い運動をすることでむくみの対策になります。

血行や体内の水分が滞ることによってむくみが発生するため、こまめにストレッチや、少し体を動かすだけでも、よい効果が期待できるでしょう。

妊娠中なので、激しい運動や転倒の危険がある運動は控えておくことをおすすめします。

水分はこまめに取る

水分は1日に1.5Lから2L を目安に飲んでおきましょう。

むくみの原因が水分だとわかると「水分を取らない方がよいのでは?」と思う方もおられるかと思いますが、水分が不足すると血液の循環がうまくできなくなるというデメリットがあります。

水分を取ると血栓症の予防にもなるため、こまめに飲んでおきましょう。

また、水ではなくお茶を飲みたい方は、ルイボスティーや麦茶 、どくだみ茶などカフェインが含まれていないお茶がおすすめです。

ゆとりのある服を着る

体を締めつける衣服によって、むくみが生じる場合があります。

血行が悪くなる原因や、肌トラブル、冷えの原因になることもあるため、ゆったりとした服を選ぶと良いでしょう。

最近ではおしゃれにこだわった妊婦さん向けの服もあります。ご自身に合うものを探してみてはいかがでしょうか。

湯船に浸かる

湯船に浸かると、お湯の水圧や体が温まることによって血行が改善され、むくみの改善が期待されます。

体調などによってゆっくりと湯船に浸かることができないときもあるかと思いますが、可能な限り、シャワーよりも湯船に浸かることを意識してみると良いでしょう。温かいお風呂に入ってゆっくりすると、気分的にもよいリフレッシュになると思います。

体を温める

温かい飲み物や白湯を飲んだり、腹巻きやレッグウォーマーを着用してみたり、体を温める意識を持つとむくみの予防につながります。

体の冷えは血行が悪くなる原因や体内の水分が滞る原因になってしまいます。

夏場などは冷たいものを取りたくなるかと思いますが、冷たいものの取りすぎやクーラーの効きすぎなどにも注意しておきましょう。

妊娠中のむくみで危険なもの

妊娠中に起こりやすいむくみですが、中には危険な病気が潜んでいることもあります。あまり多くはないことですが、ここでは妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症を含む)や子癇発作、蜂窩織炎、深部静脈血栓症、周産期心筋症について説明します。

妊娠高血圧症候群

妊娠20週以降から産後12週の間に初めて高血圧になることを妊娠高血圧症候群といいます。妊娠高血圧症候群の症状は軽い頭痛や視界がチカチカするなど多岐にわたりますが、その中にむくみが含まれます。重症化すると意識障害や肝機能障害、常位胎盤早期剥離、発育不全などにも関連するため、注意が必要です。

妊婦健診の結果などからご自身の状態を把握しておいて、かかりつけ医から指示がある場合は守って過ごしましょう。

妊娠高血圧腎症・子癇

妊娠高血圧症候群が悪化して異常な尿タンパクを伴う場合は、妊娠高血圧腎症と呼ばれます。
妊娠高血圧腎症になると手指や足にむくみが現れたり、胎盤の剥離や早産のリスクが高まったりすることがわかっています。
重症の妊娠高血圧腎症では子癇というけいれん発作を起こす場合もあるため、注意が必要です。適切に対応しなければ子癇によって致命的な状態に陥ることもあります。
子癇の対策や予防の方法もあるため、もし妊娠高血圧腎症となった場合は、医師からの指示をよく聞いておくことが大切です。入院管理の可能性もあるので、注意が必要です。

蜂窩織炎

蜂窩織炎(ほうかしきえん)は細菌感染によって起こるもので、皮膚に腫れが生じることからむくみと似たような状態になることがあります。むくみだけでなく赤みを帯びた腫れや痛みを伴うとき、発熱や悪寒を感じるときなどは蜂窩織炎の恐れがあります。

蜂窩織炎は、皮膚表面の傷からレンサ球菌やブドウ球菌などが感染することにより起こります。

むくみがある部分の傷からは特に発症しやすく、また妊娠中は抵抗力も低下しているため、普段から傷口には注意しておきましょう。

深部静脈血栓症

深部静脈という足の筋肉の間や中にある静脈に、血栓という血の塊ができることを深部静脈血栓症といいます。下肢静脈瘤と似た印象を持つ方もおられるかと思いますが、下肢静脈瘤は表面の静脈に血管の変形が起こるもので、深部静脈に起こるものではありません。

深部静脈血栓症で恐いことは、深部静脈にできた血栓が血流に乗って肺に辿り着き、肺の血管をふさぐことです。これを肺血栓・塞栓症と呼び、緊急性が非常に高くなります。血栓が大きく、ふさがれた肺の血管が太いものだと死に至る恐れもあります。治療では、血液が固まるのを防ぐ抗凝固薬などが使用されます。

周産期心筋症

心疾患の既往のなかった女性が、妊娠後期や産後に心臓の壁に異常が生じることがあり、これを周産期心筋症といいます。

周産期心筋症の原因はまだわかっていませんが、妊娠や出産がきっかけで心機能の低下が起こり、全身に血液を送る心臓の機能が低下して酸欠のような状態になります。症状としては疲労感や息切れ、咳、倦怠感があることや、さまざまな場所に水がたまってむくみを生じることがあるでしょう。

何度か妊娠をしている方や妊娠高血圧腎症の方、30歳以上の方、多胎妊娠の方に周産期心筋症が起こりやすい傾向にあります。治療は心不全と同様に、投薬による治療が行われます。また、状態や症状が改善したとしても、その後の妊娠については困難なこともあるとされます。

まとめ

妊娠中のむくみはホルモンバランスの変化や血管が圧迫されることなど、何らかの理由によって、体内の水分が滞ることにあります。

マッサージをすることや、食生活や運動などを改善することによって対策が可能なので、できる範囲から試してみてはいかがでしょうか。

病気によりむくみが起こることもありますので、心配なときは今回紹介した内容を確認しながら、かかりつけ医に相談してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。

時期から探す

産後