【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介
【妊娠中のストレス】胎児への影響は?イライラの対処法なども説明
2024.12.13
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
「ストレスが原因で赤ちゃんに障害が起こるの?」
「情緒不安定で大泣きしてしまった」
「旦那が何もしてくれない…」
妊娠中のストレスで悩まされる方にはこのような疑問や不満を感じている方が多いのではないでしょうか。
ストレス自体は生きる上で活力になるものですが、過度な場合には注意が必要です。
ここでは妊娠中のストレスが赤ちゃんに与える影響から、ストレスの原因や対策、パートナーの方が心がけておきたいことについて説明します。
妊娠中のストレスが赤ちゃんに与える影響
ストレスによる赤ちゃんへの影響度合いには個人差があり、まだ未解明な部分も残っています。最近では、妊娠中のストレスが理由で、生まれてくる赤ちゃんの社交性が低下するなどの話題も注目されているほどです。ここでは、発育不全や発達障害のリスクに焦点を当てて説明します。
酸欠・栄養不足による発育不全のリスク
妊娠中にストレスを感じると自律神経のうち交感神経が優位になり、血管収縮により血液が心臓に集まって、胎盤や子宮への血流は少なくなります。
酸素や栄養が赤ちゃんに運ばれにくくなり低栄養や低酸素状態になることから、この状態が続くと体の成長が遅れる発育不全となるリスクが増加します。また、この状況は血圧上昇(妊娠高血圧症候群)につながる可能性もあり、注意が必要です。
発達障害のリスク
人がストレスにさらされたときに分泌されるホルモンに、コルチゾール(ストレスホルモンとも呼ばれます)があるのですが、コルチゾールは赤ちゃんの神経系の発達に影響を与えることがわかっています。
具体的には、お母さんが強いストレスにさらされ続けると将来的に子どもがADHD(注意欠如・多動症)やうつになる可能性が上がるといわれています。
基本的には、胎盤の働きによって赤ちゃんにコルチゾールは運ばれないのですが、妊娠の早期で胎盤が未熟だったり、何らかの理由で胎盤の機能が働かなかったりすると、赤ちゃんにコルチゾールが伝わることがあるようです。コルチゾールは一般的な分泌量であれば問題ないのですが、過剰なストレスによって慢性的に分泌されると問題になることがあります。
妊娠中はストレスを感じやすい時期
仕事を継続している方がいたり、ホルモンバランスの変化による影響で交感神経が優位になったりすることから、妊娠中でもストレスを感じる方が多いです。赤ちゃんへの影響も気になるところですが、過度なストレスはお母さんにも良くありません。
ストレスによるお母さんへの影響
ストレスによって頭痛・便秘・下痢・動悸・めまい・立ちくらみ・腹痛・吐き気・倦怠感・肩こり・不眠などが現れるでしょう。
ストレスが自律神経のバランスを崩すことから、さまざまな不調が起こります。これらの症状には妊娠に伴って自然に起こる不調も含まれています。いずれもしばらく放っておいて治るのであれば心配しすぎる必要はありませんが、心配な場合はかかりつけ医に相談しましょう。
妊娠中のストレスの原因
ここからは、妊娠中はどのようなことがストレスに感じるのかについて、説明します。意外と気づかなかったストレスの源(ストレッサー)もあるかもしれませんので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
妊娠による体調の変化
妊娠によってホルモンバランスの変化が起こり、生理前と似た不調を感じやすくなります。妊娠中期や後期などでお腹が大きくなってくると、動きにくさや体重管理などの面でストレスを感じることがあるでしょう。
家族や職場の人間関係
妊娠に伴って気を遣う場面が多くなることから人間関係でストレスを感じることがあるでしょう。妊娠するとひとりの女性から母親となり、家族や親戚への挨拶、働いている方の場合には職場への報告や業務の調整など、多くの変化が起こります。
もしかするとパートナーの方に対して不満を持ってしまう場面があったり、上の子が赤ちゃん返りしてしまったりと、あまり予想していなかったストレスもあるかもしれません。
経済面や産後の心配
子どもを育てるにあたって、お金に関する考えごとは多くなりがちです。働いているお母さんの場合、今の職場をやめるのか続けるのか、産休はいつから入るのか、育児手当(育児休業給付金)の計算方法や、他に受けられる支援がないか調べるなど、考えることや知っておきたいことが多くあるかと思います。
子どもが大きくなったときのことも今までよりもリアルに感じることから、数十年後までのシミュレーションをして心配が勝ってしまい、ストレスに感じてしまう方もいるでしょう。
気温・騒音・痛みなど
寒い、暑い、うるさい、痛い、疲れた、栄養が不足しているなどもストレスの一種です。ストレスというと精神的なことを指すことが多いため、身体的・物理的なストレスについては気づかない方もいるかもしれません。
仕事内容
妊娠前には普通だった業務内容も、妊娠後には大変に感じることがあります。重いものを持つなどの危険な作業を伴う肉体労働、外回りの営業など、妊娠中には厳しい業務をすることになるとストレスに感じるでしょう。
また、通勤ラッシュ時の移動は車内で体を圧迫されたり、押されて転倒したりすることもあるため、不安やストレスを感じる源になるでしょう。
サポートを頼める人がいない
パートナー以外に家族が自宅の付近にいなかったり、パートナーが忙しかったり子育てに非協力的であったりすると身体的なストレスに加え、精神的なストレスも感じることになるでしょう。
また、どうしてもつらいときや大変なときにサポートを相談できる人がいないと、ひとりで抱え込むことになり、どうしようもない不安を感じる場合があると思います。
妊娠中のストレスの対策・対処法
ここからは、どのように妊娠中のストレスに対処していけば良いのかを説明します。運動や食事など、実際の行動面から対策や対処法を取り入れていきましょう。
軽い運動をする
軽く散歩をする、マタニティヨガやマインドフルネスをしてみるなど、妊娠中でもできる運動によってストレス解消をすることができます。
天気の良い日に外に出ると、日光の効果でセロトニンという心の安定に必要な神経伝達物質が分泌されます。
声を出す・喋る
大きな声を出したり、歌ったり、笑ったりすることでストレスの発散になります。何か問題があったときにはひとりで抱え込みすぎるとつらくなってしまうため、仲の良い友達や母親などの家族に相談したり、何でもないことを喋ったりするのもおすすめです。
感動で涙を流す
感情を外に出すことや泣くことでストレス解消やリラックス効果、疲労回復の効果が期待できます。泣ける映画を観たり、これまでの人生でとても印象的だったことを振り返ってみたりしてはいかがでしょうか。
また、現実に人とのコミュニケーションで涙が出そうになるときは素直に泣いてしまっても良いかもしれません。人間関係で悩んだときやうれしい出来事があったときなど、人前で涙を見せるのは戸惑うかもしれませんが、泣いてしまった方が円満に進む場合もあるでしょう。
好きなものに触れ、ゆっくりする
好きな音楽を聴いたり、読書、ドラマ、趣味などに没頭したりするといやなことを忘れられるときがありますよね。まだ外出しやすい時期であれば、カフェやショッピングなどを楽しむのもリフレッシュとして良いでしょう。
トリプトファンが含まれた食事を意識する
先ほど少し登場した心の安定に役立つ神経伝達物質のセロトニンは、食事からしか摂取できないトリプトファンという必須アミノ酸から作られています。トリプトファンは牛乳・チーズ・納豆・豆腐・卵・豆に含まれているため、摂取を心がけてみるとよいでしょう。
また、トリプトファンからセロトニンを合成するときに必要なビタミンB6の摂取も大切です。
ビタミンB6は大豆製品・バナナ・アボカド・鶏ささみ・ブロッコリーなどに含まれています。
ただし、必ずしもトリプトファンさえ摂っていれば問題ないわけではありません。栄養バランスの良い食事が基本であることは覚えておきましょう。
睡眠を取る
睡眠には疲労回復の効果や、ストレスの影響を受けやすい自律神経を休める働きが期待できます。妊娠の影響で十分な睡眠を取りにくくなる方が多いですが、夜に眠れない方は少しでも昼寝や横になって休むなどをすると良いでしょう。睡眠の質を上げるために、就寝の90分から120分前にぬるめのお風呂に入ったり、リラックスできる音楽を聴いたり、温かい飲み物を飲んだりしておくこともおすすめです。
赤ちゃんとコミュニケーションを取る
お腹の中の赤ちゃんに話しかけてコミュニケーションを取ると、ストレスなんてすっかり忘れられるかもしれません。「一緒に頑張ろうね」や「たくさん食べたけど何が好きだった?」「生まれたらどこに行こうか?」など、自由に話しかけてみてはいかがでしょうか。お子さんが大きくなった頃には、お腹の中にいるときにどんな会話をしていたか話すことができるため、将来の楽しみにもつながると思います。
イライラしやすい状態であることを周囲に伝えておく
ストレスがたまると周囲とのコミュニケーションで問題を起こしてしまわないか、心配になる方もいますよね。このように気にされる方には、普段から周りに迷惑をかけないようにと頑張っている方々が多いかと思います。妊娠中くらいは「つわりでイライラしやすくなっているの、ごめんね…。」のように、正直に伝えておくと人間関係でもめてしまうことも減らせるでしょう。
余裕を持って行動する
妊娠中は急な不調で動けなかったり、それによってさらにストレスを感じたりすることがあるかと思います。いつも以上に時間や計画に余裕を持って行動しておくと良いでしょう。
自分じゃなくてもできることや、今しかできないことなど、優先順位を意識しておくのも一つの考え方です。
仕事内容について相談する
妊娠前は何ともなかった仕事でも、妊娠してからはつらく感じることがあります。事業主は妊娠中の方に配慮した環境を整えるべきだということを、労働基準法や男女雇用機会均等法などによって定められているので、思い切って相談するのも一つの手です。業務量を減らしてもらったり、業務内容を変更してもらったり、出勤ではなくリモートによる対応が可能かなど相談してみたりしてはいかがでしょうか。
支援制度を確認してみる
周りに頼れる人がいなくてストレスを感じている方は、地域の支援制度を確認してみると、助けになるかもしれません。
例えば、2024年4月時点、東京都なら出生届を出した方を対象に経済的支援を行っているようです。支援に関する公的なウェブサイトではコールセンターの電話番号が載っている場合もありますので、不明点や聞きたいことがあれば連絡してみるのも手段の一つでしょう。
家族・助産師・かかりつけ医に相談する
ストレスや、ストレスに関連する不調で困っているときには、相談しやすい家族や専門的な知識を持つ助産師、かかりつけ医に相談すると良いでしょう。
日常的なことであれば家族に相談したり、医療や身体的なことであれば医療機関で適切な対処法を教えてもらえたりするでしょう。
医療機関によっては、漢方療法を取り扱っているところもあります。
旦那さんが心がけておきたいこと
妊娠中にストレスを感じると、夫やパートナーに対してもイライラしてしまうという方もおられるかと思います。
・「手伝う」という感覚ではなく「自分事」として育児や妻に向き合う
・妻に感謝の気持ちを常に持つ
・今後の妊娠の経過や産後(準備など)のことを考える
・助成金や制度(育休)などを調べておく
・飲み会や旅行は妻と相談した上で行く
このようにパートナーとしてできることはたくさんあります。
パートナーの方もお仕事で疲れているかもしれませんが、今後の自分達のために、面と向かってお願いや相談をしたり、この画面を見せたりして、負担は半減、幸せは倍にして一緒に乗り越えてくださいね。
まとめ
妊娠による体や環境の変化で予期せぬ不調やストレスを感じやすいかと思います。過度なストレスは赤ちゃんの発育不全や発達障害につながるなど見過ごせないことが挙げられますが、気にしすぎるとストレスになってしまうため、心配を大きくしすぎないことも大切です。
今回はストレスの原因になりやすいことからその対処法まで、できるだけ多くを紹介させていただきました。ただ、この記事書いてあることを全てやらなくてはならないというわけではないので、ご自身のあったものから試してみてくださいね。
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
プロフィール
2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。