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【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介

2024.09.06

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記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「妊娠中のお酒はなんで良くないの?」
「妊娠中に間違ってお酒を飲んでしまった…」

妊娠中は体に良くないものを全面的にストップするべきであり、お酒も例外ではありません。

ここでは妊娠中のアルコールについて、赤ちゃんへの影響や気づかずに飲んでしまった場合と、お酒以外に注意が必要な飲食物、お酒以外のリフレッシュ方法やどうしてもやめられない 場合について説明します。

妊娠中のアルコール摂取は少量であってもNG

以前、妊娠中の飲酒は少量であれば問題ないといわれていましたが、現在は胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD) の発症リスクがあるため、妊娠中の禁酒が推奨されています。

妊娠中にお酒を飲むと、胎盤を通じて赤ちゃんにアルコールが運ばれて、赤ちゃんの発達に悪影響を及ぼします。赤ちゃんの肝臓はまだまだ未発達なため、アルコールの分解がまだ十分にできません。同じ理由で、授乳中も飲酒を控えるべきとされています。

また、妊娠前においても、アルコールが卵子や精子を傷つけることがあると考えられています。

妊娠中の飲酒による赤ちゃんへの影響

ここからは、具体的にどのような影響が赤ちゃんにあるのかを説明します。

胎児性アルコール症候群(FAS)、胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)、先天性異常、早産・流産に焦点を当てていきます。

胎児性アルコール症候群(FAS)

胎児性アルコール症候群(FAS:Fetal Alcohol Syndrome )が起こると、アルコールの影響により赤ちゃんの体や認知機能に影響が出ます。

具体的には以下の3つがFASの診断項目とされています。

・特徴的な顔貌:小さい目や上唇が薄いといった平らな顔貌となる
・発達遅延:低体重や体重増加が遅い
・中枢神経系の障害:生まれたときの頭蓋が小さい、脳の形態異常、協調運動障害などが起こる

上記以外では、発達障害や精神障害、 学習障害、コミュニケーションの障害、視覚・聴覚障害などが起こることがわかっています。

低体重や顔貌などのように成長によって目立ちにくくなる症状もあれば、ADHD(注意欠如・多動症) やうつなど成長後に目立ちやすくなる症状もあります。

胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)

胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD:Fetal Alcohol Spectrum Disorders)は低体重や顔面の形態異常、脳障害などを起こす症状の総称です。

先に説明した胎児性アルコール症候群(FAS)と似ていますが、FASはFASDに含まれます。

FAS以外には、以下の症状を捉える概念としてFASDという言葉が使われています。
・胎児性アルコール作用(FAE:Fetal Alcohol Effect)
・部分FAS(Partial FAS)
・アルコール関連神経発達障害(ARND:Alcohol-Related Neurodevelopmental Disorder)
・アルコール関連先天性障害(ARBD:Alcohol-Related Birth Defects)

先天性異常(奇形など)

体内に吸収されたアルコールが肝臓で酸化されると、アセトアルデヒドと呼ばれるものができます。 このアセトアルデヒドには催奇形性という、奇形を起こす作用 があり、顔だけでなく心臓や関節、脳の構造などにも奇形が生じる場合があるといわれているのです。

脳の中でも、左脳と右脳をつなぐ脳梁(のうりょう)や運動や集中力などに関係する小脳、計画性や実行力に大切な大脳基底核に影響が出やすいと考えられています。

早産・流産

妊娠中の飲酒は早産・流産など分娩異常のリスクとも関連しており、飲酒量が増えるほど早産の確率も増加 すると考えられています。妊娠22週未満の出産は流産に、妊娠22週から妊娠36週6日までの出産は早産 に該当します。

妊娠中に飲んでしまった場合

実際に妊娠中に飲酒してしまうとどのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは、誤って妊娠中にお酒を飲んでしまったときのことについて、妊娠初期と妊娠中期以降にわけて説明します。

妊娠超初期や妊娠初期に気づかず飲んでしまった場合

妊婦さんの中には、妊娠していることに気づかず飲酒してしまった方や、飲酒の直後に妊娠した方などもおられるかと思います。妊娠に気づいた時点で禁酒して過ごしましょう。

妊娠0週〜15週 の妊娠初期は赤ちゃんの体や器官が作られる時期であるため、この時期に飲酒すると奇形などのリスク があります。

ただし、少量であれば大きな問題につながらない場合があり、胎盤ができていない妊娠0週〜4週の超妊娠初期と呼ばれる時期 ならアルコールの影響もより小さいと考えられており、大きな心配はないとされています。かかりつけ医に状況を相談し、心配しすぎずに過ごすのが良いでしょう。

妊娠中期や妊娠後期に飲酒してしまった場合

妊娠中期や妊娠後期の飲酒は、発育不全や中枢神経系の異常などといったリスクを上げることになります。 妊娠中のストレスがひどく、つい飲酒してしまう方もいるかもしれませんが、趣味に触れたり身近な人に悩みを話したりするなど、ストレスをケアしましょう。

お酒以外に注意が必要な飲食物

ここからはお酒以外で注意が必要な食品や飲み物について説明します。

お漬物

奈良漬や粕漬けなどのように、お酒が使われたお漬物には注意が必要です。一般的にはパッケージ・包装部分にアルコール分の有無が記載されていますが、デザインの関係で文字が小さい場合などがあります。

奈良漬や粕漬け以外であっても、お漬物の場合は注意深く確認するか、妊娠期間中は食べないようにすると良いでしょう。しかし気づかずに少量食べたとしても、大きな問題にはならないとされます。

アルコール入りのチョコレートなど

チョコレートやお菓子などには、お酒入りのものがあります。チョコレート以外では、バターサンドやプリン、チーズケーキ、ラムレーズンなど にアルコールが含まれている商品もあるようです。

こちらも注意深くパッケージの食材や成分リストを確認するか、妊娠中は食べないようにしておくと安心でしょう。こちらもうっかり食べてしまった、ということもあるかもしれませんが、その場合も少量であれば心配はないとされています。

薬膳のお酒

昔、「酒は百薬の長」 といわれるほど、適量であれば健康に良いものとして考えられてきました。そのため、体に良いものとして知られる薬膳のお酒は、薬草が使われているとはいえアルコールを含む飲み物です。妊娠中は薬膳のお酒にも注意しておきましょう。

カフェインを含むもの

妊娠中であっても、1日あたり200mgほどのカフェインであれば摂取は可能です。WHO(世界保健機関) やFDA(米国食品医薬品局) から、妊娠中のカフェイン摂取量に関する発表がされていますが、これらによると200mg〜300mgであれば大きな問題はないと考えられています。

紅茶や緑茶、コーヒーなどを飲みたいと思ったら、過剰摂取にならない範囲で調整して飲むと良いでしょう。目安としては、150ml〜200mlのマグカップの場合、コーヒーなら1杯〜2杯、紅茶なら3杯〜4杯、玉露だと1杯で200mg以下か300mg以下の範囲になるでしょう。

また、妊娠中にカフェインを過剰に摂取すると、流産や早産、低体重出産などのリスクが増加します。エナジードリンクやコーラ、チョコレートなどにもカフェインが含まれているため、注意しましょう。 妊娠中のカフェインの摂取量で気になる気になる方はルイボスティーや麦茶、カフェインレスのコーヒーや紅茶などがおすすめです。

タバコ

タバコも妊娠中はお酒と同様に必ず避けておきたいものです。タバコにはニコチン・一酸化炭素・タールと いった代表的な有害物質が含まれており、早産や流産、死産、常位胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群、低出生体重、発育不全、奇形など胎児への影響も大きいともいわれています。

副流煙には主流煙よりも多くの有害な化学物質 が含まれているため、外出時には喫煙所や喫煙スペースを避けることも大切です。

アルコール分を含む甘酒と調味料

甘酒には米麹から作られたものと、酒粕から作られたものがあります。米麹から作られた甘酒でアルコール度数が0%であれば飲むことは可能ですが、酒粕から作られたものはアルコール分を含むため、避けておきましょう。

また、みりんや日本酒などのアルコール分を含む調味料を使った料理にも注意が必要 です。しっかりと加熱する料理であれば、アルコールは蒸発するので、心配しすぎる必要はありませんが、非加熱のみりんや日本酒が使われた料理は避けましょう。

栄養ドリンク

栄養ドリンクにもアルコール分が含まれている場合があるため、控えておいた方が無難です。基本的に栄養ドリンクは妊娠中にはあまり飲まない方が良いでしょう。

アルコール分が含まれていなくても、カフェインが含まれた栄養ドリンクは多いため、コーヒーや紅茶を飲んだ日などにはカフェインの摂取量が多くならないよう注意が必要です。

妊娠中に飲んでも良いもの

ここからは妊娠中に飲んでも問題ないものについて説明します。ノンアルコール飲料、アルコール分を含まないタイプの甘酒、清涼飲料水について触れていきます。

ノンアルコール飲料

アルコール分が「0%」という表記 が入っていれば、一般の炭酸飲料と見なされるので、妊娠中に飲んでも問題はありません。

ただし、最近では「0.5%」や「0.7%」など、微量にアルコール分が含まれた飲料も「お酒の風味を意識した」ものをコンセプトとしているため、注意が必要です。商品パッケージなどに記載されているアルコール度数を確認したうえで楽しむことをおすすめします。

アルコール分を含まない甘酒

米麹由来の甘酒にはアルコール分を含まないものがあるため、その場合は飲むことが可能です。ただし、米麹由来だからといって必ずしもアルコール度数が0%というわけでありません。飲む場合はパッケージの成分表を注意深く確認しておきましょう。

清涼飲料水

一般的な清涼飲料水であればアルコール分を含まないため、妊娠中でも飲むことができます。フルーツジュースなどの場合はビタミンなどの栄養素も同時に摂れますが、一方で糖分過多となって体重の増加や妊娠糖尿病につながる恐れもあります。適量の範囲となるよう、飲み過ぎには注意しましょう。

妊娠中におすすめの飲み物

妊娠中におすすめの飲み物は以下の通りです。

・水
・麦茶
・カフェインレスのコーヒーや紅茶
・無糖の炭酸水
・適量のフルーツジュースや野菜ジュース

妊娠中はアルコール分だけでなく、糖分の摂りすぎにも注意しましょう。

麦茶はミネラル類、フルーツジュースや野菜ジュースはビタミン類なども含んでいるため、水分と一緒に栄養も摂取できますね。つわりで口の中が気持ち悪いときには、無糖の炭酸水でスッキリすることもできるでしょう。炭酸水も飲みすぎるとお腹が膨れてしまって気持ち悪くなる場合がありますので、適量を考えて飲むことをおすすめします。

妊娠中のリフレッシュ方法

ウォーキングやヨガをする、軽い運動をする、映画を観たり、本を読んだり、友達や家族とおしゃべりをするなど、お酒以外のリフレッシュ方法を取り入れてみると良いでしょう。

妊娠中は睡眠が取りづらくて、睡眠不足が理由でストレスが溜まりやすくなることも考えられます。昼寝をしてみたり、寝られなくても横になって休んだり、睡眠の質を上げるために就寝前の90分〜120分前にゆるめの湯船に浸かるのもおすすめです。

どうしてもお酒が気になる場合

妊娠中にお酒を飲んではいけないのはわかっていても、どうしても飲みたくなる場合や、ストレス発散をしても飲みたい気持ちが変わらない場合は、アルコール依存症の可能性があります。この場合、自分でお酒の飲み方をコントロールできなくなるので、医師に相談して治療に取り組みましょう。

まとめ

妊娠中にお酒を飲むと、流産や早産の可能性が高くなるだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの顔貌が変わったり、神経系の異常や奇形が現れたりと、今後の発育に大きく影響します。

妊娠に気づかず妊娠初期に少量を飲んだくらいであれば大きな心配はないといわれていますが、気になることはかかりつけ医に相談して、なるべく飲まないように努めましょう。

また、お酒以外ではお漬物やお酒入りのお菓子、薬膳のお酒などに注意が必要です。お酒について自分でコントロールできない場合はアルコール依存症の恐れがあるため、かかりつけ医に相談しましょう。

妊娠中の体に有害なものはしっかりと避けて、元気な赤ちゃんを産んでくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。

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