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妊娠後期や臨月のおりものはどう変化する?注意が必要なときについても説明

2024.05.15

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「おりものがドロっとしている」
「なんだかクリーム色に近い」

妊娠後期にさしかかると、おりものの変化を感じる方が多くおられます。
色や量だけでなく、人によっては臭いなどが気になる方もいるのではないでしょうか。

ここでは妊娠後期におりものの変化が気になる方に向けて、おりものが変化する原因や注意が必要なとき、おりものの変化と関連する病気、デリケートゾーンのケア方法などについて説明します。

妊娠後期のおりものの変化

妊娠後期はホルモンバランスの変化によっておりものに変化が起こります。例えば、おりものの量が多くなったり少なくなったり、粘り気を帯びたり、色がクリーム色のように濃くなったりすることがあります。

多少の変化であれば心配しすぎる必要はありませんが、おりものの量が急に増加したり、異常な色や臭いが感じたりする場合には注意が必要です。

感染症や切迫早産 が理由でおりものに変化が起こっている場合もあるため、気にしすぎずとも、観察はしておいた方がよい良いでしょう。

出産に関係することとしては、水っぽいおりものが出た場合は破水の可能性があり、臨月の時期に少量の血液が混じったおりものにはおしるしの場合があります。破水の場合はすぐに、おしるしの場合には陣痛などを伴うときに、かかりつけ医に相談する必要があります。

臨月は「おしるし」と「破水」に注意

妊娠後期におりものが変化することはよくあることですが、体や出産の状態を把握するためにも、観察しておくことは大切です。

ここでは、おしるしや破水について説明します。

おしるし

お産前の準備に伴って起こる出血が混ざった粘液を「おしるし」といいます。おりものに赤色やピンク色、茶色が混ざっている場合は、おしるしかもしれません。この出血は、お産が近づくと子宮の下部が開いてくるのに伴って、子宮壁に貼りついていた卵膜が剥がれることで起こるものです。

また、出血量は通常の生理のときと近く、おしるしがあった数日後に陣痛が起こることもあります。

破水

赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて、羊水が漏れ出てくることを破水といいます。羊水の役割は赤ちゃんを細菌などから守ることです。

破水後の羊水は産道から腟へと流れ出るため、赤ちゃんが産道を通りやすくして、潤滑剤のように出産のサポートの役割をします。一言で破水といっても、陣痛前の破水を意味する前期破水、陣痛後から子宮口全開大になる前のタイミングの破水を指す早期破水、子宮口全開大付近での破水を適時破水、妊娠37週未満の破水を示す早期前期破水など、いくつか呼び方が異なります。

卵膜が破れる場所によって、子宮口から離れた部位で卵膜が破れて破水することを高位破水、子宮口付近の卵膜が破れて起こる破水は完全破水と呼びます。

妊娠後期におりものが変化する原因

妊娠後期におりものが変化する原因は、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量の増加です。

外界からの細菌感染を防ぐ役割を持つおりものですが、これらのホルモンの働きによって量や色味に変化が起こります。具体的に、エストロゲンにはおりものを増加させる作用があり、子宮を大きくする作用や、授乳に備えて乳房を大きくする働きもあります。

また、プロゲステロンによって、おりものの色が透明から黄色や茶色などに変化することがわかっています。個人差がありますが、生臭さや甘酸っぱさなど、臭いが強くなることもあります。

女性ホルモンの増加は妊娠の継続と出産準備のために必要なことであるため、おりものが変化することは自然なことだと認識しておきましょう。

注意が必要なおりものの変化

妊娠後期におりものの状態が変化することは自然なことですが、なかには注意が必要な変化もあります。

ここでは、膿、白い塊、緑や黄色など白や透明以外の色を帯びている、水っぽい、生臭い、かゆみを伴うなどの状態に着目して説明します。

膿が出る

膿のようなおりものが出る場合は、腟トリコモナス症 の恐れがあります。腟トリコモナス症の場合は泡状のおりもの、黄色や緑色のおりものが出ることもあるため、併せておりものの状態を確認しておきましょう。

治療のためには、かかりつけ医で診てもらう必要があります。

白い塊が出る

白くてドロっとした塊のようなおりものが出る場合は、出産が近い可能性があります。念の為ために、近々おしるしが出てこないか、他に出産の兆候がないか確認しておくと良いでしょう。

また、カッテージチーズのような白いポロポロとした塊を伴う場合は、カンジダ腟炎のおそれがあります。

妊娠中は月経が起こらないため腟内の自浄作用が働きにくく免疫力も低下しており、カンジダのような腟内の常在菌であっても繁殖しやすい状態であることから、注意が必要です。

緑・黄・灰・赤褐色・ピンクなどの色味を帯びている

緑色や黄色の場合はトリコモナス腟炎や細菌性腟炎、発熱や下腹部の痛みを伴う場合には淋菌感染症の恐れがあります。灰色だと細菌性腟炎を起こしている場合があるかもしれません。細菌性腟炎はブドウ球菌や大腸菌、レンサ球菌など、普段は繁殖しない常在菌が繁殖することによって起こる腟炎です。

また、赤褐色やピンク色だとおしるしの可能性や、不正出血を伴っている場合が考えられます。萎縮性腟炎や子宮頸管ポリープによる出血である場合も考えられるでしょう。

おしるしだと出産が近い可能性があり、出血量が多いときや長く続くときには、前置胎盤や常位胎盤早期剥離などを起こしている場合があります。出血が少量でも、違和感を覚えるなど、気になることがある場合には、かかりつけ医に連絡することをおすすめします。

水っぽさがある

さらさらとした水っぽいおりものが出るときは破水を起こしている場合があります。安静にしていても流れ出てくるときや、無色透明に出血によるピンク色が少し混ざっているように見えるとき、生臭さや甘酸っぱい臭いがするときなどは、より破水の確率が高まります。

そのような場合には、すぐにかかりつけ医に連絡して、指示に従いましょう。また、破水すると、感染を起こしやすくなることから入浴は控えましょう。

生臭さを感じる

ホルモン分泌の影響でおりものに生臭さを感じるのは自然なことですが、かゆみや痛みなどと一緒に生臭さを感じる場合は注意が必要です。この場合は、感染症やカンジダ腟炎を起こしていることが考えられます。破水の特徴にも生臭さを感じることが挙げられるため、安静にしていても流れ出てくるかどうか、また、出血により少しピンク色を帯びているかどうかなどを確認しておきましょう。

かゆみがある

デリケートゾーンにかゆみを伴う場合はカンジダ腟炎を起こしている場合があります。かゆみやヒリヒリとした痛みなどと同時に、おりものが白や黄色でポロポロとしたチーズのような状態にあるときは、よりカンジダ腟炎である確率が高まります。

おりものの変化と関連のある病気

上述の通り、おりものの変化には病気が隠れているケースがあります。ここからは妊娠後期におりものの変化から気づける可能性のある病気について、細菌性腟炎・カンジダ腟炎・クラミジア・腟トリコモナス症 などの細菌感染、また子宮頸管ポリープについて説明します。

細菌性腟症

細菌性腟症は、ブドウ球菌やレンサ球菌など普段は繁殖しない常在菌が増えることで起こる、腟内の炎症のことです。細菌性腟炎と呼ばれることもあります。

発症すると、強い臭いを伴う灰色のおりものが出て、下腹部痛や発熱、外陰部の違和感などが起こります。他にも早産の確率が高くなったり、他の感染症にかかりやすくなったりすることもあるため、注意が必要です。

疑わしい場合はかかりつけ医に相談し、治療を受けましょう。治療では腟内の洗浄や腟錠の処方が行われます。

カンジダ腟炎

カンジダという細菌が腟内で繁殖することにより起こるのがカンジダ腟炎です。主な症状としては、外陰部に強いかゆみやヒリヒリする痛み、白や黄色のカッテージチーズ状、酒粕のようなおりものが挙げられます。

あまり聞き慣れない病名を聞くと驚かれる方は多いかと思いますが、カンジダはカビの一種であり、妊娠中の方の3割がカンジダ腟炎を経験するといわれています。カンジダが改善しないまま分娩となると、生まれた赤ちゃんに鵞口瘡(がこうそう)と呼ばれる感染症を来す可能性もあるため、治療が必要になります。

治療では抗真菌薬の腟錠や抗真菌薬のクリームが処方されます。
気になる症状がある場合はかかりつけ医に診てもらって、適切に治療に取り組みましょう。

クラミジア

無症状であることが多いですが、おりものが増加するときには、クラミジアという細菌に感染している場合があります。クラミジアは基本的に性的な接触で感染するものですが、感染経路が不明なこともある菌です。

感染してから1週間から3週間で子宮頸管に炎症を起こすことがあり、不正出血や下腹部痛を伴うことがあります。症状があまりひどくなく、クラミジアに感染していると気づかれないこともあるでしょう(不顕性感染と呼びます)。

ただし、クラミジアに感染すると流産や早産につながることがあり、感染したまま出産を迎えると産道感染で赤ちゃんに結膜炎や肺炎が起こる原因になるため、注意が必要です。治療では胎児への影響がほぼないとされているマクロライド系の抗生物質が使用されます。

腟トリコモナス症

おりものの色が黄色や緑色、性状が泡状、強い臭いを伴う場合、非常に稀ではありますが、 腟トリコモナス症であることが考えられます。

トリコモナスはゾウリムシのような0.1mmほどの原虫です。性器内に感染すると腟内に熱く感じるような痛みや、外陰部が赤くただれる、排尿痛などの症状が現れます。感染経路は性的な接触であることが多いですが、便器や浴槽、タオルなどを介して感染することもあります。

自覚症状がない場合もあり、感染しても妊娠や出産に大きな影響を与えることはないと考えられていますが、未熟な状態で赤ちゃんが生まれることにつながるという報告もあるようです。気になる症状がある場合はかかりつけ医に相談して治療に取り組みましょう。治療では内服薬や腟錠の処方がされます。

子宮頸管ポリープ

子宮頸管ポリープは、子宮入口にできる良性の小さな腫瘍で、妊娠後期にも見られることがあります。子宮頸管ポリープができる原因はまだ明確ではありませんが、女性ホルモンの分泌の変化や、慢性的な炎症、物理的な刺激が原因で発生すると考えられています。ほとんどのケースで無症状ですが、ポリープが大きくなったり刺激を受けたりすると、不正出血や性交時の出血が起こることがあります。

治療方法としては、痛みを伴わないごく短時間の手術によりポリープを取り除くことが可能です。手術といっても、外来の内診台で行うことができる小手術となっています。

ポリープが再発することもあるため、不正出血やおりものの増加などがある場合はかかりつけ医に診てもらうことをおすすめします。

デリケートゾーンのケア方法

デリケートゾーンや腟内を刺激の強い石鹸で洗ったり、ゴシゴシと強く洗ったりすることは控えましょう。皮膚や粘膜を刺激して状態が悪くなることがあります。

デリケートゾーンはまぶたの皮膚くらい薄い部位です。できるだけ皮膚の摩擦が少なくなるように、石鹸などもデリケートゾーン向けのものをたっぷりの泡でなでるように使用するとよい良いでしょう。

トイレでは温水洗浄便座の使用を控えることも大切です。腟炎などがある状態で使用すると悪化するとの報告があります。

普段の下着などに関しては、おりものシートなどを当てて過ごすと、蒸れて菌が繁殖しやすい環境に近づきます。下着は通気性の良いものを使用しておくとよい良いでしょう。

まとめ

女性ホルモンの分泌量が変わることから、妊娠後期のおりものの変化はごく自然な出来事です。

おりものの量が増えたり、臭いが強くなったり、色が白くなるなどの変化は起こりやすいものですが、それ以外の変化では感染症などが関係している場合もあります。

色が緑や黄色になっている、異臭がする、かゆみや発熱などの症状を伴っているという場合には、すぐにかかりつけ医に相談してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。