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妊娠後期はいつから?症状・過ごし方・注意が必要なときについて説明

2024.05.08

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「妊娠後期っていつからだっけ?」
「どんな不調が現れるの?」
「妊娠後期にさしかかってから貧血気味でだるい 」

妊娠後期といってもいつ頃に出産があるのか、どのように過ごしておけば良いのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

ここではそのような方に向けて妊娠後期とはどのような時期か、見られやすい症状や過ごし方、注意が必要なときについて説明します。

妊娠後期とは

妊娠は妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期と大きく3つの期間に分かれています。妊娠後期とは一般的に28週目以降の期間を指します。

ここでは、妊娠予定日や陣痛のサインについても併せて確認していきましょう。

妊娠後期は28週から40週

妊娠後期は妊娠28週以降のことを指し、妊娠8カ月から10カ月の期間です。この期間になると、赤ちゃんが大きくなり、髪の毛や爪までも伸びてくるほどに成長します。

4週ごとに分けて説明すると、28週から31週は胎動を感じやすい時期で、赤ちゃんの腸内でうんち(胎便)が作られる時期です。赤ちゃんの頭の位置が下に向いたり、体つきが良くなってお腹を蹴る回数も増えたりするでしょう。お母さんはお腹が大きくなり、水分が体内に溜まりやすくなっていることから浮腫に悩まされる場合もあります。

32週から35週では、赤ちゃんの五感や肺の機能(34週以降)が育ってきます。一方で、お腹の中が窮屈になってきていることから、胎動が少し鈍く感じることがあるかもしれません。

お母さんは大きくなった子宮で臓器が圧迫されるようになります。例えば、横隔膜の運動を制限されるため、息苦しさや動悸を感じ、膀胱を圧迫されることで尿漏れなどが起こりやすくなるでしょう。

36週から40週は、心肺機能などや体温調節機能が整い、いよいよ出産の時期になります。エコーでへその緒が見えやすくなるでしょう。赤ちゃんが下りてくることで、恥骨周辺が痛む方もおられます。出産が近いサインであるおしるし(産徴;さんちょう)や前駆陣痛などに注意して過ごしましょう。

出産予定日とは

一般的には妊娠40週の0日目が出産予定日ですが、予定日通りに出産が起こることは数%しかないといわれています。

妊娠37週から41週が正産期と呼ばれており、この期間の出産が母子ともにリスクが少ない時期で、多くの出産が正産期となっている傾向です。

また、妊娠42週以降は過期産と呼ばれる時期です。羊水が濁るなど母子にリスクが現れるため、41週目に人工的に陣痛を誘発し、分娩を進めていきます。

出産のサイン

出産が近いときのサインとしては、水っぽいおりものが出ること、おしるしが出ること、不規則に子宮が収縮してお腹が張ることなどが挙げられます。

水っぽいおりものは、破水によって漏れ出してきた羊水かもしれません。しかし、尿漏れである可能性もあるため、破水か尿漏れか判断が難しい場合は医師の診察を受けるようにしましょう。

また、おしるしは卵膜が子宮壁から剥がれた際に起こる出血です。
おりものに血が混じって、赤色やピンク色、茶色っぽくなることがあるでしょう。

不規則に子宮が収縮するときは前駆陣痛の可能性があります。
陣痛が近い可能性があるため、いつでもかかりつけ医に連絡できるように備えておきましょう。

妊娠後期に起こりやすい症状

妊娠後期には、ホルモンバランスの変化、お腹が大きくなってくることなどの理由からさまざまな不調が現れます。主に以下のような不調が現れるでしょう。

・むくみ(浮腫)
・不眠や寝不足
・動悸や息切れ
・めまい
・立ちくらみ
・頻尿
・便秘
・体毛の変化
・貧血
・胸焼け
・消化不良
・肌のかゆみ
・お腹の張り
・体重増加
・吐き気
・腰痛
・恥骨痛
・食欲の増加

ホルモンバランスの変化は、女性ホルモンの分泌量の変化だけではありません。

アルドステロンやコルチゾールなどのホルモン量も変化するため、体に水分が溜め込まれやすくなって、むくみなどが生じる場合があります。
血流量の増加から、立ちくらみが起こることもあるでしょう。

また、お腹が大きくなることから、お腹の張りや腰痛など物理的なつらさを感じやすくなります。子宮が他の内臓を圧迫して、消化や食欲、便通に影響するでしょう。

赤ちゃんが下りてくることによって内臓の圧迫が穏やかになり、食欲が増加したと感じることもあるかもしれません。

妊娠後期に避けた方が良いこと

続いて、妊娠後期には避けておいた方が良いことについて説明します。基本的に、赤ちゃんやお母さんの体にとって負担となることや、急な出産の兆候が出現したときにすぐに対応できないような状況は、避けておいた方が良いでしょう。

お腹に負担がかかる行動や姿勢

重いものを持つなどのお腹に負担がかかる動作は、切迫早産や腰痛の原因となるため、控えておきましょう。

寝るときは、仰向けだと体の負担や仰臥位低血圧症候群のリスクになるため、体の左側を下にして右足の膝を前に出すシムス位と呼ばれる体勢がおすすめです。シムス位では、バスタオルをお腹と床の間に挟んで高さを調節すると、より負担を減らすことができます。

日常では体を冷やすこと、車の運転をすること、ヒールのある靴を履くことなども体には負担となります。

遠出や旅行

外出中に破水や陣痛が始まることが考えられるため、遠出や旅行は控えておきましょう。
近所であっても、外出中に受診が必要となるケースも考えられます。

母子手帳やナプキンなどは常に携帯し、かかりつけ医とすぐに連絡が取れるようにしておきましょう。

生食

生肉や生魚など、体調を崩す恐れのあるものは、引き続き控えて過ごしましょう。妊娠中は免疫力が低下しています。妊娠していないときよりも感染症にかかりやすい状態であることを考えると、生の食品は控えておいた方が無難です。

生魚は、大型の魚ほど体内に水銀が含まれていることが想定されます。お魚に含まれる栄養は体に良いものが多いですが、食べ過ぎには注意が必要でしょう。

カラーやパーマ

ホルモンバランスの変化によって肌が敏感になる方もおられます。
頭皮も同様なので、カラーやパーマは控えておきましょう。

美容院では仰向けで寝る姿勢になることもあります。

妊娠後期のようにお腹が大きい状態で仰向けになると、大きくなった子宮によって下大静脈という大きな血管が圧迫されて仰臥位低血圧症候群となり、気持ち悪さを感じることがあります。

妊娠後期にしておいた方が良いこと

続いて、妊娠後期にしておいた方が良いことについて説明します。お産入院の準備や、お母さん自身の体を労わることが大切です。

お産入院の準備

出産時の入院のために、準備しておくアイテムを確認しておくと良いでしょう。お産に必要なもの、産後に必要なもの、赤ちゃんに使うものなど確認して、すぐに持ち出せるようにしておくことが大切です。

また、「バースプラン」という、妊婦さん自身の出産で希望や要望を伝えられる機会があります。あくまで優先されるのはお母さんと赤ちゃんの安全ですが、希望があれば伝えておきましょう。

産前と産後の計画を確認

出生届や児童手当の申請期限などを確認しておきましょう。出生届は生まれた日を含めて14日以内の届け出が必要です。産後に慌ただしくならないよう、事前に確認しておきましょう。

妊娠線のケア

妊娠後期は体重が増加しやすく、妊娠線もできやすくなります。保湿をして妊娠線のケアをしておくと良いでしょう。

ビタミンやミネラルなどの栄養摂取

貧血対策としてビタミンB6やビタミンB12、鉄の吸収を助けるビタミンCを摂っておきましょう。貧血の症状が良くならない場合は病院で鉄剤を処方される場合がありますが、便秘や気分不快になりやすくなるという副作用もありますので、食事からの摂取もおすすめです。無理のない範囲で運動をしたり、食物繊維を摂取したりと心がけましょう。

できる範囲の運動・正しい姿勢

少しであっても軽い散歩やストレッチなどをしておくと、血行促進や便秘改善などに効果が期待できます。ただし、転倒のリスクがある動きは避けましょう。

お腹が大きくなって反り腰になる方も多いですが、腰痛の原因になるため、背筋を意識して正しい姿勢をとるようにしましょう。

休息や気分転換

妊娠後期で体調が優れない日々も多いかと思いますが、できる限り休むようにしてください
ね。ストレスから不眠が続き、気づけばうつ病になっていたという方もおられます。

趣味に触れるのも良いですし、落ち着いたクラシック音楽やアロマを炊いて香りから安らぐのもおすすめです。

アロマやハーブティーには妊娠中には向かないものがあるため、気になるものがあればかかりつけ医に相談してから使ってくださいね。

尿意を感じたらトイレを我慢しない

尿意を我慢すると膀胱炎になるリスクがあります。妊娠後期でお手洗いが近くなるものですが、こまめに行くようにしましょう。

乳房・乳頭のケア

産後の母乳育児のために、乳房や乳頭のマッサージをしておくこともおすすめです。母乳育児では、赤ちゃんの体の負担になりにくかったり、お母さんの子宮復古が促されたり、免疫物質が赤ちゃんに移行したりするなどのメリットがあります。かかりつけの産院でマッサージの方法などを確認して、実践してみると良いでしょう。

里帰りをする場合は32~35週までに

正産期が近づくと、いつ出産が始まるかわかりません。妊娠36週以降に飛行機に乗る場合、医師の診断書が必要 になるなど、移動に条件がつきます。里帰り出産を考えている方は、早めに移動をしておきましょう。

性生活はお母さんの体調優先で

体調が良ければ性生活も可能ですが、体の負担にならないことが大前提です。お腹を圧迫しないようにして浅くゆっくり、感染症予防や精子による子宮収縮を起こさないためにも、コンドームの使用は必須です。少しでも異変や不安を感じるようであれば、すぐに中断しましょう。

注意が必要なとき

色々と体調の変化が起こる妊娠後期ですが、出産の兆候や出産、別で病気の発症などが疑われる場合もあります。ここでは、注意が必要なときについて説明します。

お腹の張りや強い痛みがある

お腹の張り(子宮収縮)は、前駆陣痛や陣痛、早産(妊娠22週~37週未満の出産)である可能性があります。

痛みがあまり強くなく不規則なお腹の張りやチクチクと痛むときは前駆陣痛であることが、約10分おきで規則的に子宮収縮を感じるときや出血を伴う場合は、陣痛であることが多い傾向です。陣痛かもと思ったら、かかりつけ医に連絡しましょう。

嘔吐とお腹の張りがある

お腹の張りによって横隔膜が動くため、胃液が逆流して吐き気を感じる場合があります。出産が近づいてきているサインだといえるため、前駆陣痛や陣痛などが来ないか、確認しながら過ごしましょう。

性器出血がある

妊娠後期や正産期に近いときの性器出血は、おしるしかもしれません。ただし、おしるしがあった数日後や1週間後に陣痛を感じる方もいて、おしるしがなく出産を迎える方もいます。
ひとつの目安として認識しておきましょう。

一方で、性器出血と同時にお腹の張りや痛みがある場合や、性器出血が血の塊や大量の出血である場合は前置胎盤や常位胎盤早期剥離のおそれもあります。
異変を感じる場合はすぐにかかりつけ医に相談しましょう。

破水があった

破水とは卵膜が破れ、羊水が漏れ出すことです。おりものがさらさらとした水っぽいとき、安静にしていても漏れ出してくるときは、破水を起こしているかもしれません。状態によってはすぐに入院が必要となるため、先延ばしせずかかりつけ医に連絡しましょう。

破水後は細菌感染などを起こしやすい状態なので、診察を受けるまではお風呂(シャワーや入浴)に入るのは避けましょう。

浮腫がある

正常妊娠でもエストロゲンやプロゲステロンの女性ホルモンの影響で浮腫(むくみ)が出ることもあります。妊娠中に浮腫を感じる方は多くおられますが、妊娠高血圧症候群が原因で起こっている浮腫があることも覚えておきましょう。

浮腫だけでなく高血圧があるとき、片方の足の浮腫と発熱や圧痛を併発しているとき、急に浮腫が悪化したときなどはかかりつけ医に相談しておきましょう。

37.5℃以上の発熱がある

発熱と倦怠感や咳、鼻水、関節痛を伴う場合は風邪やインフルエンザなどに感染している場合があります。

中には虫垂炎や急性腎盂腎炎など、思わぬ病気が原因となっている場合もありますので、かかりつけ医に連絡した方が良いでしょう。

まとめ

妊娠後期は妊娠28週以降のことを指します。この時期に入ると、赤ちゃんの成長が進んでお腹が大きくなってくることから期待感もありますが、ホルモンバランスの変化など不調を感じることも多くなっていることかと思います。

この時期は今まで以上に体の負担になりそうなことは避けて、いつでも出産を迎えられるようにしておくことが大切です。

いつも通りの不調かと思ったら注意が必要なこともありますので、不安や異変を感じたらすぐにかかりつけ医に相談してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。