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【妊娠中期】体重増加の管理方法は?適切な増え方を知りたい!

2024.04.18

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「つわりが明けてたくさん食べられるようになった」
「食べつわりが続いてつい食べすぎてしまう」

お腹が大きくなり始める妊娠中期、つわりの関係で食べすぎてしまう方もおられますが、妊娠の関係で体重が増加するのは仕方のないことです。

妊娠中は体重を増やさない方法 を知ることよりも、大切なのは体重の増加量を適切に管理することだといえるでしょう。

ここでは、妊娠中期の体重増加が気になる方に向けて、体重管理の方法や体重が増えすぎた場合のこと、体重増加の対策や体重増加と関連のある病気について説明します。

妊娠中期の体重は増加量の管理がカギ

妊娠中期は体重の増加量を管理することが大切です。
ここでは体重管理の目安やBMI、なぜそもそも体重が増加するのかについて、説明します。

体重管理の目安

体重の増加量は妊娠前の体格を元に目安が設定されています。

厚生労働省の『妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針』によると、妊娠前の体格が痩せ気味の方は12kgから15kg、普通体型の方は10kgから13kg、肥満の方は7kgから10kg、さらに肥満の方は個別対応とされていますが上限5kgまでの増加が目安です。

妊娠期間の体重増加は、最終的な増加量が適切であれば良いというものではなく、妊娠の週数に伴って増加していくのが良いと考えられています。
例えば、妊娠の前半で大きく体重増加したのを気にして、妊娠後半は増加量をセーブする、というのはおすすめできません。

実際に、妊娠中期以降の増加量が多いと妊娠高血圧症候群になるリスクがあります。
妊娠時期ごとの増加量の目安を意識することが大切だと覚えておきましょう。

BMI

BMI(Body Mass Index:ボディマス指数)は身長と体重から算出される体格指数です。

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)によりBMIを計算することができます。
例えば、身長が160cm(1.6m)で体重が50kgの方であれば、BMIは19.53です。

BMIの範囲によって、18.5未満だとやせ痩せ気味、18.5〜から25が普通、25以上は肥満 と体型が分類されます。
一般的には22が標準値とされ、22に近いほど病気にかかるリスクが小さい と考えられています。

なぜ体重が増加するのか

妊娠中は赤ちゃんの成長や、出産や育児の準備に伴って体が変化することにより、体重が増えるものです。

体の部位ごとで説明すると、妊娠が進むに連れて胸・胎盤・血液・羊水・脂肪などの重さが増していきます。

赤ちゃんの重さも含めると、その増加量は最終的に8kg 近く。
赤ちゃんの重さで約3.0kg、胎盤と羊水でそれぞれ約0.5kg、血液・乳房・子宮などで合計約4.0kgほど増加する計算です。

妊娠中期は1週間につき少なくとも0.2kg〜から0.4kgずつ、多くて1.2kgずつ体重の増加が見られると考えられています。

妊娠中期に体重が増えすぎるとどうなる?

もし妊娠中に体重が増えすぎるとどのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは、体重が増えすぎた場合と、反対に体重が増えなかった場合について説明します。

いずれもお母さん自身が健康であれば大きな問題に繋がることは多くありません。
心配しすぎる必要はないため、一つの目安として確認しておきましょう。

増えすぎた場合

妊娠後半においてお母さんの体重の増加量が多いと、巨大児の生まれるリスクが上昇していたという結果があります。

また、お母さんの体においては、妊娠中の体重増加によって病気を発症しやすくなる場合もあります。
例えば、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などを起こしやすくなることがあるでしょう。

あまり増やせなかった場合

お母さんの体重増加が少なかった場合には低体重の赤ちゃんが生まれる場合があります。
また、早産であったり、発育不全であったりするケースもあるでしょう。ただし、体重をうまく増やせていないからといって無理に食事量を増やす必要はありません。

栄養不足でふらつくなど具体的な症状が現れているならかかりつけ医に相談して、適切な対処法を取る必要がありますが、無理な体重増加よりもお母さんの健康を優先することが一般的です。

妊娠中期の体重増加の対策

体重増加のためにできる対策について説明します。
食べ方を工夫することや、適度に運動すること、体重が増えやすいタイミングを意識することが大切です。

食べ方の工夫

食事内容や食べる時間帯、食習慣を工夫するとよいでしょう。

妊娠によって味覚や嗅覚が変わったり、日によって食べられるものが違ったりするかもしれませんが、食事の栄養バランスを意識していくことが大切です。

炭水化物・タンパク質・野菜など、できるだけ偏りを無くすように心がけましょう。
タンパク質の場合は肉と魚からバランス良く動物性タンパクを摂り、大豆製品から植物性タンパクも摂るとよいでしょう。

とはいってもいきなり栄養バランスを完璧にするのではなく、今の食習慣から少しずつ改善すること良くしていくことが大切です。

食べ方についてはよく噛むことを意識して、遅い時間帯や寝る3時間前などには食べないように意識しましょう。

体に良いものを食べても、寝る前に食べると睡眠中に胃に残ってしまって逆効果となります。

適度な運動

できる範囲から適度な運動やストレッチを取り入れてみるとよいでしょう。

過度な運動や負荷の高い動きでカロリー消費をする必要はなく、医師の許可がおりる範囲の運動量でかまい構いませんません。

マタニティスポーツの例としては、マタニティビクス・スイミング・ピラティス・ヨガ などがおすすめです。
運動をすることによって肩こりや便秘など、体重増加以外の悩みを解消することができる場合もあります。るでしょう。

ただし、運動のしすぎによって子宮収縮が誘発されると、切迫流産・切迫早産となる危険性があります。
運動によって筋肉に血流が集中すると、子宮への血流量が減少して赤ちゃんが低酸素状態となるため注意が必要です。

あまり運動に慣れていない方は家事や散歩を取り入れつつ、決まった時間に体重計に乗るなどの習慣を続けると良よいでしょう。

体重が増えやすいタイミングを意識する

妊娠中に体重が増えやすいタイミングを認識しておくことが大切です。

例えば、つわり明け、誕生日やお正月などのイベント時、産休の直後や里帰りをした時場合などは注意が必要です。

つわり明けはそれまで感じていた気持ち悪さから解放されたり、イベントや里帰りでは美味しい食べ物が食卓に並んだり、いずれも食事を取りやすい時期だといえるでしょう。

また、医師から安静が必要と言われた時はとき、やることがなくてつい口にものを運んでしまう方がおられるかと思います。
ストレスにならない程度に、こちらも気を引き締めておくことが大切だといえるでしょう。

妊娠中期の方にとっては先のお話ですが、臨月になったときに気が緩んでしまう方もおられます。

妊娠中期の体重増加と関連のある病気

妊娠中期の体重増加と関連のある病気として、ここでは妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を説明します。
どちらも自覚症状が少ない病気ですが、合併症には注意が必要なものがあります。

体重増加以外の症状も見られる傾向にあるため、ご自身の健康状態をできるだけ詳細に観察しておくことが大切です。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、妊娠中(多くは妊娠20週以降)に高血圧を発症することをいいます。
高血圧以外に、蛋白尿やむくみなどの症状が発生する場合もあるでしょう。

妊娠高血圧症候群では、重篤な合併症として、子癇発作・肝機能障害・腎機能障害・常位胎盤早期剥離・胎児発育不全などが挙げられます。

妊娠高血圧症候群によって体重が増加することもあるため、同時に高血圧やむくみなどの症状も起こっていないか把握しておくことをおすすめします。

気になる症状がある場合は、かかりつけ医に相談しておくことが大切です。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて起こる糖代謝異常は、妊娠糖尿病 と呼ばれています。
自覚症状がない場合が多いものの、合併症には注意が必要なものが多くあります。

合併症には羊水過多・膀胱炎・腎盂腎炎腎盂炎(じんうじんえん)・血管障害・妊娠高血圧症候群・流産・早産 などが挙げられます。

妊娠糖尿病になりやすい方の特徴としては、妊娠してから急に体重が増えた方、妊娠前から肥満体型である方、血縁の方に糖尿病の方がいる方などです。

体重の増加以外に心当たりがある場合は、かかりつけ医に一度相談しておくことをおすす勧めします。

まとめ

赤ちゃんの成長や出産の準備のために体は脂肪や水分を蓄えていくため、妊娠中期の体重の増加が起こるのは仕方のないことです。

大切なのは体重の増加量を管理していくことです。。
妊娠の各タイミングで増えすぎたり、セーブしすぎたりすることなく、順調に増加させることができるように可能な範囲で意識してみてくださいね。

目安には国立成育医療研究センターから発表されている「妊娠中の体重増加曲線」を参考にしてみてください。

ただし、妊娠時の体の変化には個人差があるため、必ずしもこの曲線の通りに体重増加ができなければならないというものでもありません。
気楽に、医師と相談しながら体重管理に取り組むと良いでしょう。

参照:国立成育医療研究センター「妊娠中の体重増加曲線」

かかりつけ医に相談しながら、ご自身と赤ちゃんのペースにあった体重増加を意識してみてくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。