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【妊娠中期】注意が必要な姿勢は?寝方や姿勢について説明
2024.04.03
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
妊娠中期になると前かがみの姿勢が苦しいと感じたり、つい反り腰になってしまったりと、姿勢が気になり始める方が多いのではないでしょうか。
姿勢によっては予期せぬトラブルにつながるのではと心配される方もいるかもしれません。
ここでは妊娠中期の姿勢が気になる方に向けて、やってはいけない姿勢や注意が必要な姿勢、姿勢が原因で起こること、おすすめの姿勢や寝方について説明します。
妊娠中期にやってはいけない姿勢や注意が必要な姿勢
妊娠中期はお腹が大きくなってくる時期。
体の負担になる姿勢や、お腹に負担になる姿勢は控えておきたいところです。
ここでは、妊娠中期にやってはいけない、または注意が必要な姿勢と予期せぬ事故が想定される動作について紹介します。
腰で上半身を支える・反り腰
お腹が大きくなってくると反り腰になる方が多くいます。
反り腰は腰に負担がかかりやすく腰痛の原因となりやすいため、避けておいた方がよいでしょう。
お腹が大きくなってくることや、起き上がるときにあまり腹筋を使わなくなることから、妊娠中に反り腰になる方は増える傾向にあります。
座って前のめりになる姿勢
あぐらなどの座った状態で前のめりのような姿勢になると、お腹が圧迫されて苦しく感じやすくなります。楽に感じる範囲であれば問題ありませんが、お腹が苦しいと感じるようなら背筋を伸ばす、座り方を変えるなどしましょう。
うつ伏せや仰向けで寝ること
うつ伏せになるのは、大きくなってきた子宮が圧迫されてお腹の赤ちゃんにもストレスになるおそれがあるため避けましょう。
一方、妊婦さんが仰向けに寝ると、下大静脈という太い血管が大きくなった子宮に圧迫されるために血圧が下がり、気分が悪くなりやすいです。仰向けの状態から少しだけ左側に傾いた状態で寝ると、気分が悪くなるのを予防することができます。
かがむ・猫背・しゃがむこと
お腹が大きくなったり重くなったりすることで、前かがみの姿勢や猫背気味になる場合があります。
猫背は腰への負担が大きく、首や肩などにも負荷がかかりやすくなるものです。
内臓やお腹を圧迫するなどの影響もあるため、お腹が大きくなってからは、なるべくお腹を圧迫しないようにしゃがむとよいでしょう。
重い荷物を持つこと
重い荷物を持つことは妊娠初期から避けておいた方がよいことであり、妊娠中期も同様です。理由は重いものを持つと腰やお腹に負荷がかかりやすく、腰痛やお腹の張りの原因となる場合があるからです。
上のお子さんがいる場合も、同じ理由からお母さんが立った状態でのおんぶや抱っこはできるだけ避けておいた方がよいでしょう。上の子とコミュニケーションを取るときは、楽な姿勢でできることやハグ、座って抱っこをするなどがおすすめです。
自転車や車の運転
可能であれば避けておきたいことですが、自転車や車の運転をする場合は十分に注意をしましょう。
妊娠中の運転は、体調の変化や注意力の低下により、交通事故を起こす確率が高くなることが統計上わかっています。
車であれば予期せぬ事故や急ブレーキ、自転車に乗っているときは子どもなどが飛び出してくることがあり、突然の衝撃がお腹に加わる可能性があります。シートベルトは子宮の位置を避けて装着することも非常に大切です。
激しい運動や球技
球技は運動量が多くてボールがお腹に強く当たることや、一緒にプレーをしている人とぶつかることなど、予期しないことが多く想定されます。
転倒してうつ伏せで倒れることによってお腹に衝撃が加わることもあるでしょう。
テニスやバレーボールなどの球技や、人とぶつかる可能性のあるスポーツは避けておくことをおすすめします。
同じ姿勢を取り続けること
同じ姿勢を取り続けると、体の特定の部分だけに負担がかかったり血流が滞ったりします。特に、長時間同じ姿勢で座っていると気分が悪くなりやすいです。
妊婦さんにおすすめの姿勢や最初は楽だと感じる姿勢を取っていても、ずっと同じ姿勢だと気分が悪くなる可能性が高くなります。
定期的に立ち上がることや、姿勢を変えること、軽くストレッチをすることをおすすめします。
薬の使用
妊娠中は薬の使用にも注意が必要です。飲み薬の使用は自己判断でしてはいけないと認識されている方も多いですが、塗り薬や貼り薬の使用にも注意しておきましょう。
塗り薬や貼り薬は皮膚から薬効成分が吸収され、薬の成分が体内に入ることに変わりはありません。妊娠中でも使用できる薬があるため、気になる症状があるときは一度医師に相談しましょう。
妊娠中期に姿勢が原因で起こること
姿勢が原因で起こることには、腰痛や肩こり、低血圧などが挙げられます。
腰痛・肩こり
妊娠中期はお腹が大きくなってくるため、お腹を出して腰で支えるような姿勢(反り腰)になりがちです。
これによって腰に負担がかかり、腰痛や肩こりになる場合があるでしょう。
お腹が大きくなると重心が体の前に寄ります。
背中から腰にかけての負担が大きくなるために、腰痛になってしまうおそれがあります。
意外かもしれませんが、反り腰により姿勢が悪くなると肩こりにもつながると考えられています。
仰臥位低血圧症候群
仰向けに寝る姿勢を仰臥位(ぎょうがい)といいます。
そして、妊娠中に仰臥位が続くことによって低血圧となることを、仰臥位低血圧症候群といいます。
仰臥位低血圧症候群になると、血圧の低下に加えて、動悸・悪心・嘔吐・顔面蒼白・冷汗・意識が遠のくなどの症状が現れることもあるでしょう。
これらの症状は、仰臥位によって、大きくなった子宮が体内の大きな血管である下大静脈を圧迫することが原因で起こります。
また、歯医者さんの診察時に仰臥位低血圧症候群となる場合もあるのですが、その場合は少し左側に傾いた状態で仰臥位を取ることで対処がなされるでしょう。
切迫流産
長時間にわたって立ちっぱなしでいたり、重い荷物を持っていたり、体に大きな負荷がかかったりするような仕事をすると、切迫流産や切迫早産となるリスクがあります。
立ちっぱなしや重い荷物を持つことでストレスがかかり、それに伴って子宮収縮が起こりやすくなり、切迫流産や切迫早産となる可能性が出てくるのです。妊娠中にお腹の張りが気になる場合は、職場と相談して負荷の少ない仕事への変更なども検討してもらいましょう。また、必要に応じてかかりつけ医で母性健康管理指導事項連絡カードを記載してもらい、職場に提出するのもよいでしょう。
妊娠中期におすすめの姿勢や対処法
最後におすすめの姿勢や対処法について説明します。
シムス位や骨盤を立てて座るなど、自分に合った姿勢で体の負担にならないことを心がけて過ごしましょう。
シムス位
シムス位は、仰向けの状態から体の左側面を下にした寝方のことです。
仰向けのように大きくなった子宮が太い血管を圧迫することがなく、息苦しさも感じにくい体勢となります。
シムス位はお腹や腰の負担を和らげるためリラックスしやすい方が多く、仰臥位低血圧症候群の予防にもなります。
妊娠初期から後期まで長く使える姿勢なので覚えておくとよいでしょう。
座るときは骨盤を立てるイメージで座る
椅子や床にあぐらをかいて座るときは、骨盤を立てるように座ると背筋が伸びて猫背になりにくくなります。
骨盤を立てる感覚がつかめない場合は、椅子に深く座り、背中を背もたれに軽く沿わせるようにすると、骨盤を立てる感覚がつかみやすいでしょう。
リラックスできる姿勢を取る
妊娠中におすすめの姿勢はあるものの、それらを意識することでかえって窮屈な思いをすることもあるかもしれません。
一般的におすすめされている姿勢であっても、人によっては苦しく感じてしまう場合もあります。苦しいと感じる場合は、違う姿勢に変えましょう。
ネットなどで紹介されていない姿勢であっても、楽に感じるものであれば体に負担がかかっていないサインでもあります。
自分で楽だと感じる姿勢があれば、様子を見ながらその体勢を取るとよいでしょう。
クッションを活用する
座るときも寝るときもクッションを活用するとよいです。
骨盤を立てて座るときはタオルや座布団などを敷いて座ったり、腰の後ろや背もたれにクッションを置いて座ったりすると、姿勢を保つのが少し楽になるでしょう。
また、ポイントとしてはふかふかしたクッションよりも、低反発で体を支えてくれやすい機能性が意識されたクッションを選ぶのがおすすめです。
腰痛対策をする
反り腰や前かがみな姿勢を避けたり、腰を温めて血行をよくしたりすることなどを意識すると、腰痛予防によいでしょう。
無理のない範囲で軽い運動やストレッチなどを取り入れるのもおすすめです。
また、外出するときは、ローヒールの靴を履くのもよいでしょう。
ヒールが高いなどの安定しない靴を履くと筋肉に余計な負担をかけたり、腰の負担になったりすることが考えられます。ヒールの靴は転倒し、お腹をぶつけるおそれもあるため、妊娠中は履かない方がよいでしょう。
まとめ
妊娠中はお腹の負担になる姿勢や、腰痛・肩こりなどにつながる姿勢に注意が必要です。
普段の生活では、お腹を圧迫するような姿勢や、反り腰、猫背などには注意しておきましょう。
重い荷物を持ち続けたり、立ちっぱなしでいたりすると、体に負担がかかって切迫流産や切迫早産につながることもあります。お腹の張りが気になるときは、かかりつけ医へご相談ください。
仰向けの状態が続くことによって仰臥位低血圧症候群となる場合もありますので、今回紹介した姿勢を参考に、楽に過ごすことを心がけてみてくださいね。
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
プロフィール
平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。