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「噛みしめの影響について~妊娠中もその後も~」

2023.11.14

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記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

妊娠中は、生まれて来る赤ちゃんのことが楽しみですね。
でも、ご自身の身体がホルモン的にも大きな変化をしていますしお仕事をしていると、それとの両立や今後の生活に対すること等、身体だけでなくいろいろなことに期待や不安がいっぱいでてくることと思います。
私達は日々知らず知らずのうちに、こうしたストレスをためていることが多いです。
それが身体にいろいろな影響を及ぼして様々な症状として現れてくることがあります。

お口を開けたり閉じたりする時に、顎(耳の前あたり、こめかみの近く)がカクカク、ザリザリ音がしたり痛みを感じたり、お口が開けにくいといったことありませんか?
顎の関節と関節円板の状況で、そのような症状が出ることがあります。
それは顎関節症による症状で最近増加しています。

原因を一つに絞ることが難しくかみ合わせの悪さや、解剖学的な問題、精神的緊張、外傷によるもの、噛み癖や姿勢といった日常生活習慣など様々な因子が考えられます。

疾患として積極的に治療しないといけない場合もありますが、顎の動きに関係する筋肉が緊張しすぎてまたは、左右アンバランスになっていることが原因で顎関節症の症状を感じるものです。

寝ている時に歯ぎしりをしたり、音はしなくてもグッと噛みしめていたりして朝起きた時になんとなく違和感を感じたり、顎が重だるく感じたりしませんか?
食べる時に片側だけで噛んだりする癖や頬杖をつく癖があったり、携帯電話をいつも同じ側に押しつけて使う癖とかありませんか?

コロナ禍でリモートワークが増えたり、スマホをいつも使っていたりと頭部前方位姿勢(いわゆる猫背姿勢)になっている方が多くみられます。
肩こり、腰痛とも連動して顎関節症となっている場合もあるようです。
無意識にバランスを取ろうとして、奥歯で噛みしめていることが考えられます。
歯科健診や診療でこうした方がとても増えてきたなと感じています。

今このコラムもPCもしくはスマホで読んで下さっていることと思います。
これからの時代、デジタル機器なしでの生活は考えられなくなっていますので気を付けていただきたいと思います。

対策としては、長時間連続して使うのではなく30分に1回、少し視線を離して小休憩をとるとか、ストレッチをしたり軽く身体を動かすのが良いです。
座っている時間が長いと腰痛になるので欧米では腰に負担がないように会議も立ってする方が効率的であるとのことで、最近は会議の時に高さを調整できる仕様のデスクが日本でも取り入れられています。
また、なるべく下を見るような角度ではなく、ノートパソコンやタブレットの下に台を置いて視線をまっすぐな方向で使う工夫も行うと良いです。


一度、ご自身のお口を閉じてみて下さい。
唇は上下合わさって閉じてますか?
舌の先はどこにありますか?
両奥歯は上下触れていますか?

唇は閉じて口呼吸にならないように、鼻呼吸して下さい。
舌の先は上の前歯の硬口蓋のところ(スポット)にトンと当たっていますか?

触れていなかったり、下の前歯をさわっていたりという「低位舌」の方も多くなっています。
「低位舌」はお子様の口腔問題として増えてきていますので、また別のコラムで詳しくお話します。
赤ちゃんの授乳、離乳食の時からお口の生育が出来ているかどうかが影響しているのですよ。

そして、両奥歯が触れているようでしたら実は良くないことなのです。
口はぽかんと開けていなくて唇を閉じてる状態で、奥歯は2~3mm離れていて接触していないのが良いのです。
これは下顎安静位といってリラックス出来ている安静の状態です。
奥歯が触れているだけでも口を閉じる筋肉は緊張しています。

咀嚼は口の開閉運動ですが、奥歯がかみ合わさってもとても短い時間ですので食事の時はしっかりと噛みましょう。
起きている時はそれらのことを意識して出来ますが、寝ている時に歯ぎしりや噛みしめているようでしたら、歯科医院で就寝時に装着するバイトプレート(マウスピース)を相談してみて下さい。

自己判断ではなく歯科医院で精査してもらい、ご自身に合う対策をしてみて下さい。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。

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