【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介
妊娠初期に見られる「腰痛」の特徴や原因!対策アイテムもご紹介
2023.04.24
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
妊娠初期でも腰痛が起こるのを知っていますか。妊娠中期以降のおなかが大きくなる頃は腰に負担がかかるのは当然ですが、妊娠初期も腰痛に悩まされる方もいるようです。ここでは妊娠初期のつらい腰痛を何とかしたい方や、もし腰痛があったときの対策を知りたい方に向けて、初期に診られる腰痛の特徴や原因、対処法や使えるアイテムについて詳しく説明していきます。
妊娠初期に起こる腰痛の特徴
妊娠初期は、腰痛に悩まされる方も多いようです。妊娠初期の腰痛がどのような症状なのかをチェックしてみましょう。ここでは腰痛の程度やその特徴、発症しやすい時期について説明します。
①痛みの程度や痛み方の特徴
妊娠初期に腰痛を感じる方は多くいますが、その痛み方や程度については人それぞれです。
キリキリした痛みや張っているような痛みを感じる方もいますが、その中の多くはだるさを伴う腰痛が見られます。痛みを感じる部位については、腰全体や腰の片側、腰から背中にかけてなど、こちらも人によって痛みの感じ方が異なるかもしれません。
②腰痛が出始める時期
腰痛を感じ始める時期としては受精後の妊娠初期や、おなかが大きくなってきた頃の中期以降です。ただし、人によって腰痛を感じるタイミングは異なり、中には腰痛を感じない方もいます。早ければ3週目ごろから、妊娠初期であれば4〜7週目くらいから腰痛を感じることがあるといわれています。
また、超妊娠初期とは受精から着床までの時期を指し、着床によって女性の体にホルモンバランスなどの変化が現れ始めます。
③妊娠中期~後期にかけて
妊娠14週目あたりからの中期以降はおなかが大きくなる時期です。体の重心が前の方にかかりやすくなり、腰への負担が増えることから腰痛を感じる方が増えることでしょう。出産準備のために恥骨の結合した部分が緩くなり、中には恥骨の痛みを感じる方もいます。妊娠28週目以降の妊娠後期になると、胎児が大きくなることから腰への負担がさらに増し、ホルモン分泌の関係からも腰痛が重くなりやすいので頭に入れておきましょう。
また、妊娠初期に立ち上がれないほどの激痛や発熱があるとき、腰痛とともに下半身にしびれの症状が出てくるときは注意が必要です。尿管結石や腰椎ヘルニアなど、ほかの疾患が隠れていることがありますので医師に相談しましょう。
妊娠初期に腰が痛くなる原因
まだおなかも大きくなっていない妊娠初期に、腰痛が出てしまうのはなぜでしょうか。その原因を探ってみましょう。ここではホルモンの影響、姿勢や運動不足、冷えについて説明します。
①ホルモンの影響
妊娠に伴う腰痛の理由には、リラキシンや女性ホルモンであるプロゲステロン、エストロゲンというホルモンが関係しています。これらのホルモンには産道を広げる働きがあり、出産に向けて腰回りの関節、靭帯などが緩められます。腰周辺の関節は恥骨ともつながっているため、腰痛に加えて恥骨痛を感じる場合もあるでしょう。
腰回りが重く感じることは、腰周辺の緩められた組織を支えるために近くの筋肉が緊張することによるものと考えられています。腰痛を発症する理由として、妊娠初期などのおなかが大きくなっていないうちに出産準備のために起こるホルモンバランスの変化といわれています。
②悪い姿勢や運動不足
妊娠初期においてはつわりなどによって日常生活が難しくなると、体を動かすのがおっくうになり、体に負担のかかる姿勢を取ってしまいます。妊娠により運動量と一緒に筋肉量が減って腰痛につながることもありますので、運動不足が間接的な原因で腰痛を感じる方もいるでしょう。
妊娠中期以降では、胎児の成長度合いによっては普段の姿勢が悪くなることも腰痛の原因になります。中期以降は多くの方が腰を反るような姿勢になり、妊娠初期の方では無意識におなかを守る姿勢になる方もいるでしょう。
姿勢の変化は腰周辺の筋肉・関節・靭帯に負荷がかかるため腰痛につながりやすくなっています。姿勢を支えるのに必要な背中や太もも、お尻などに痛みを感じることもあるかもしれません。
③体の冷え
骨盤周りの冷えも腰痛の原因になります。心理的なストレスで胃腸に影響が出ている方やホルモンバランスの変化により自律神経が乱れた方、運動不足や筋力不足の方は体が冷えやすくなります。
妊娠後期の方であれば、大きくなった子宮がおなかや骨盤の血管を圧迫することで血行不良となり、これが原因で体が冷えやすくなることも考えられるでしょう。このように何らかの原因で起こった冷えが腰痛の原因となるわけです。
また、もともと1日の運動量が少ない方では、筋肉量が少なく腰痛を発症しやすくなります。日頃、重い物を持つ仕事をしている方や、長時間座りっぱなしのデスクワークの方も、妊娠をきっかけに腰痛を発症することがあるため注意しておきましょう。
妊娠初期の腰痛対策
妊娠初期は、個人差がありますが妊娠前と変わらない生活や活動ができる時期です。妊娠中期~後期も見据えて、今からできる腰痛対策を始めておきましょう。ここでは妊娠初期の7つの腰痛対策をご紹介します。
①正しい姿勢を意識する
妊娠初期から正しい姿勢を意識することが大切です。初期では無意識におなかを守る姿勢になっていないか注意しておきましょう。中期以降のことも考えると反り腰が腰への負担になるため、頭頂部から糸で吊られているような感覚で背中を真っすぐに伸ばすことを意識します。
デスクワークをする方は長時間同じ姿勢で仕事をすることがあるかもしれません。筋肉や関節が固まって腰痛が起こりやすくなるため、定期的に立ち上がったり、体をほぐしたりします。足を組んだり、いつも同じ方向に重心を乗せたりすることは避けましょう。
座るときは仙骨を立てるようにすることで腰への負担が少なくなります。床に座るときはあぐらや正座が仙骨を意識しやすいでしょう。寝るときは横向きになって上側の手足を軽く曲げ、横向きから少しうつ伏せをすると腰の負担が軽減されます。
②ゆっくり動く
歩き始めなどの動くときや立ち上がるときはゆっくりと動きましょう。急に動くと腰に負担がかかることがあります。朝起きたときなどは一度横向きになってから両手を使って起き上がるのがポイントです。仰向けの状態から起き上がるとおなかや腰へ直接負担がかかってしまうので、注意が必要です。床にある物を手に取るときや子どもを抱っこするときは、一度膝をついてからにゆっくり動きましょう。
③適度な運動やストレッチ
体を動かすことで腰回りの血行が良くなり、ストレス発散や気分転換、体力維持として良い影響があります。日常生活にウォーキングやストレッチ、椅子を使う運動や、寝転んだままできる運動などを取り入れましょう。
妊婦の方向けにマタニティヨガやマタニティビクス、マタニティスイミングができる場所もありますので、医師と相談の上、通ってみるのもよいでしょう。体を動かした後は、冷えないようケアしておくことも大切です。
④体と腰を温める
お風呂に入ったり、カイロを使ったり、温かい物を飲むことで血流が良くなります。意識的に腰や体を温めることが腰痛対策につながるでしょう。冬場はもちろん、夏場も室内は冷えてしまいがちなので、クーラーが効き過ぎないように靴下や腹巻を身につけ、冷たい物は摂り過ぎないように気をつけましょう。腰痛の症状がある方はシャワーだけで済ませず湯船にゆっくりつかることが大切です。入浴剤を入れてお風呂でリラックスしましょう。
⑤マタニティ整体に通う
マタニティ整体は、緩んだ骨盤周囲の組織や硬い筋肉の凝りなど腰痛の原因に対してゆっくりと施術が行なわれるものです。胎児に影響が出ないように、妊婦の体について知識がある整体師が施術します。
ただし、慢性的な腰痛持ち方の場合は整体よりもペインクリニックなど医療機関で診てもらった方がよい場合もあります。
⑥歩きやすい靴を選ぶ
普段からローヒールやスニーカーなどの歩きやすい靴を選ぶことも腰痛対策に役立ちます。
ハイヒールなどのバランスを取るのが難しい靴は腰への負担だけでなく、状況によっては転倒にもつながるため、おなかの赤ちゃんのことを考えると履かない方が無難かもしれません。
⑦腰痛対策アイテムを使う
骨盤に巻く妊娠用ベルトや骨盤ベルト、おなか周りをサポートしてくれるマタニティガードル、コルセットは骨盤回りの筋肉や関節を支えてくれるため、使い続けることで腰痛のケアができるといわれています。妊娠の状況によって身につける位置に工夫が必要だったり、間違った使用法だと無意味になったりするので、使用したいときは一度医師や看護師に相談しておくと安心です。
また、就寝時にはマタニティ抱き枕や少し硬いマットレスを使うとよいでしょう。抱き枕を使うと横向きに寝るときの腰への負担が軽減され、少し硬めのマットレスであれば体が沈み過ぎないといったメリットがあります。
椅子に座るときなどは背もたれとの間にクッションを置いて深く腰掛けると、背筋が伸ばしやすくなるでしょう。
便利な腰痛対策アイテム
ここからは、腰痛になりにくくなるアイテムや、妊娠中期~後期に使える便利なグッズをご紹介します。
①骨盤ベルト
骨盤ベルトは使用中に骨盤周りの緩みを矯正してくれるアイテムです。この矯正効果により腰回りの筋肉の負担をケアします。骨盤の中央部分である仙骨、骨盤の前方にある恥骨の結合部、太もも前方の張っている部分をカバーしてくれます。骨盤ベルトは出産後の体型が気になる方にも使えるため、長く使えるアイテムといえるでしょう。
②マタニティ腹巻
冷えによって腰痛が起こらないようにするため、普段からおなか周りを温めておくことが大切です。妊娠初期の方はあまり気にならないかもしれませんが、一般的な腹巻を買ってしまうとおなかが大きくなる中期以降に締めつけが強くて使えなくなることがあります。そのため、ある程度ゆとりがある物やマタニティ腹巻を選ぶことがポイントです。冬場だけでなく夏場に冷え過ぎないように、コンパクトで持ち運びできる物を持っておくとよいでしょう。
③マタニティ抱き枕
腰痛があるときは寝ていてもつらいため、同じ姿勢を続けないために抱き枕を使うのがおすすめです。おなかが大きくなり始めてからは横向きで寝るシムス位で寝ることが楽になりますので、妊娠初期のうちから購入しておくと後々役に立つでしょう。
マタニティ抱き枕にはさまざまなタイプがあり、腰に巻くタイプや、産後の授乳クッション、赤ちゃんが使うクッションとして活用できる物などがあります。
腰痛ベルトやマタニティコルセット、マタニティ腹巻、マタニティ抱き枕などを使う際には、胎児のいる腹部を必要以上に圧迫しないよう、正しい使い方を確認してください。中には、ベルトやコルセットを使用しても腰痛が改善しないこともあります。痛みが悪化してくる場合は、使用を中止して医師へ相談しましょう。
まとめ
妊娠中の腰痛は、おなかが大きくなってからではなく、妊娠初期でも経験する人が多くいます。主な原因は、妊娠に伴う女性ホルモンのバランスが変化することですが、日常の姿勢や運動不足による筋力低下が腰に負担をかけ腰痛につながることもあるため、正しい姿勢や可能な範囲での運動を意識しましょう。
自分に合った腰痛対策アイテムも上手に活用して、妊娠中の腰痛ケアにお役立てください。
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
プロフィール
平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。