【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介
妊娠初期の食べ物は何がおすすめ?妊娠中に避けたい食事も説明
2024.03.29
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
「妊娠がわかったけど、食生活は何を気にすればよいの?」
「何を食べたらよいの?食べない方がよいものは何?」
自分の食べたものが赤ちゃんの成長にも影響すると考えると、普段の食事の内容が気になり始めるお母さんが多いかと思います。
ここでは妊娠初期の食事内容について、栄養バランスや摂りたい栄養素、摂取量を気にすべき食品で避けるべきことについて説明します。
妊娠初期は栄養バランスが大切
まずは、妊娠初期と食事の栄養バランスについて説明します。
栄養バランスが大切な理由や、お母さんの食事が赤ちゃんに影響するのはいつからかなどについて触れていきます。
栄養バランスが大切な理由
栄養素にはいくつかの種類があり、それぞれが健康に欠かせない役割を担っています。例えば、炭水化物は活動のエネルギーに、たんぱく質は赤ちゃんの胎盤を作るために欠かせない栄養素です。
貧血や肌トラブルなど妊娠中に起こりやすい不調には、栄養バランスを正すことで予防につながるケースがあります。
しかし、ある栄養素が体によいからといって、そればかりを摂っていると栄養バランスが崩れたり、過剰摂取になって思わぬ体調不良につながったりしてしまう場合があるでしょう。
妊婦さんの中には、特定の食品を避けることで赤ちゃんのアレルギーを防ぐことを考える方もいますが、これによりアレルギーを防ぐことはできないと考えられています。
お母さんと赤ちゃんが健やかに過ごすために、栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。
赤ちゃんの成長に影響するのは5カ月から6カ月目あたり
赤ちゃんがお母さんから栄養をもらい始める時期は、妊娠5カ月目(妊娠16週)から6カ月目(妊娠20週)あたりです。
それまではお母さんが食べたものが赤ちゃんに大きく影響することは多くないと考えられています。
妊娠6カ月目頃までは、卵黄のうと呼ばれる場所から赤ちゃんは栄養を補給しています。そのため、妊娠初期にお母さんのつわりが激しくて食事をあまり取ることができなくても、赤ちゃんが栄養不足になることはないでしょう。
また、妊娠してから体重管理が気になって食事量を制限される方もいます。赤ちゃんを思うと気になることが増えますが、体重管理を厳しくし過ぎず、赤ちゃんのためにもしっかりと栄養を摂るようにしてくださいね。
バランスよく栄養を摂るコツ
バランスよく栄養を摂るには、主食・主菜・副菜・乳製品・小魚・果物などのバランスを意識しましょう。
主食はお米などの炭水化物のことであり、体を動かすときに必要なエネルギーとなります。主菜ではたんぱく質を補います。一般的には肉・魚・卵・豆腐などの植物性たんぱく質を使った食事が主菜です。
副菜からはビタミン・ミネラル・食物繊維などを摂ることが可能です。お味噌汁やサラダ、ほうれん草のおひたしや酢の物などの小鉢が副菜にあたります。
乳製品はヨーグルトや牛乳、チーズなどです。小魚も乳製品と同様にカルシウムを摂ることができます。
果物からはビタミンやカリウムなどを摂ることが可能です。みかん・りんご・いちご・ぶどう・すいかなどが挙げられます。
つわりのときの食べ方
妊娠するとつわりで食欲がないときや吐き気を感じるとき、胃腸が芳しくないときがあるかと思います。
つわりでつらいときは、無理をせずに食べられるものを、食べられるときに食べる、小分けにして食べることや、冷めた状態で匂いが気にならないようにして食べることなどが工夫として挙げられます。水分補給をこまめに行うこともよいでしょう。
また、つわりのときは脂っこいものを避け、食物繊維を摂りすぎないようにするなど、消化に時間がかかるものは避けておくのも有効です。
妊娠初期に摂りたい栄養素・食べ物
ここからは具体的にどのような栄養を摂ればよいのかについて説明します。
いずれも赤ちゃんの成長に必要、もしくはお母さんの健康維持に大切な栄養素です。
赤ちゃんの成長を助ける「葉酸」
葉酸はビタミンB群のひとつであり、細胞分裂やDNA合成などにおいて大切な役割を持っています。
妊娠初期においては、赤ちゃんの器官や神経系の発達、赤血球の形成に重要な栄養素です。
神経管閉鎖障害の予防やお母さんの貧血の予防に役立ちます。妊娠前から妊娠3カ月(妊娠8週)くらいの方には、1日あたり400μgの葉酸 の 摂取が推奨されています。
ブロッコリー・枝豆・いちご・バナナなどに含まれているため、食生活に取り入れてみてくださいね。
食品からの摂取が難しい場合は、医師に相談してから葉酸が含まれたサプリメントなどを活用するとよいでしょう。また、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の予防は、妊娠前からの葉酸摂取が重要とされます。
赤ちゃんの体のもとになる「たんぱく質」
たんぱく質は、血液や筋肉を作るために必要な栄養素です。赤ちゃんの体を構成するために必要なので、不足しないように摂りましょう。主に肉・魚・卵・大豆製品・乳製品から摂ることができます。
貧血予防に「鉄分」「ビタミンC」
妊娠中はより多くの血液が必要になるため、鉄の摂取が推奨 されます。妊娠中の貧血は、血液の水分にあたる血しょうは増えても、その中に含まれる赤血球の増加が追いつかない場合に起こります。
ビタミンCは鉄と一緒に摂ることによって、鉄の吸収率をアップさせる栄養素 です。鉄分はほうれん草・豆腐・牛肉・卵 、ビタミンCはレモン・緑黄色野菜 に含まれています。鉄だけでなく葉酸やビタミンB12も貧血予防 に役立ちます。
骨の形成のために「カルシウム」「ビタミンD」
カルシウムは骨の形成や体の機能維持、調子を整えるのに必要な成分です。赤ちゃんの骨や歯の形成に役立ちます。
カルシウムが不足すると、赤ちゃんがお母さんの体からカルシウムを吸収することになり、骨粗鬆症 や骨萎縮 (骨がスカスカの状態になるさま¥)となるリスクがあります。
カルシウム不足によってイライラしやすくなったり、こむら返り(足がつる)が起こりやすくなったりもするため、摂取を心がけましょう。
また、ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける 効果が期待されます。ビタミンDは食事による摂取以外でも、日光を浴びることによって体内で合成することが可能です。妊娠中のお散歩や日光浴もよいと思います。
便秘予防に「食物繊維」「乳酸菌」
便秘予防には食物繊維や乳酸菌の摂取がおすすめです。食物繊維は便の量を増やすことにより便通の改善が期待できます。乳酸菌は腸内で善玉菌を増やして悪玉菌を減らすことにより、お通じが改善に向かうでしょう。
ただし、つわりなどで胃腸の機能が下がっているときや食べるのがつらいときは、食物繊維の摂り過ぎに注意が必要です。食物繊維が多すぎると体内で消化されにくく、胃腸の負担となる場合があります。食生活で便秘が改善しない場合は、医師に相談し整腸剤や便秘薬などを検討してみてください。
細胞分裂や赤血球作りに「亜鉛」
亜鉛は体内では生成できないミネラルのひとつです。免疫機能のサポートやたんぱく質の合成など、さまざまな役割を持っており、不足すると味覚障害 などの不調が現れます。
妊娠期においても、細胞分裂や赤血球の合成に欠かせません。
赤身肉や魚、乳製品、卵などに含まれています。
エネルギー代謝に「ビタミンB群」
ビタミンB群は炭水化物やたんぱく質などの代謝に必要な栄養素です。
炭水化物やたんぱく質など、活動のもととなる栄養を摂取しても、ビタミンB群がないと体はうまく力を発揮できません。 特に、妊娠初期のつわり症状が強く出ている場合、このビタミンB群が不足すると、お母さんの脳神経に悪影響を及ぼす可能性がありますので、摂取が非常に重要になります。
ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ナイアシン・パントテン酸などがビタミンB群に該当します。
それぞれ、カツオ・ブリ・鮭・豚肉・鶏肉・納豆などに含まれています。食事からの摂取が難しい場合は、サプリメントからの摂取もよいでしょう。
妊娠初期は摂取量に注意が必要なもの
ここからは摂取量に注意が必要な栄養素について紹介します。
いずれも少量や推奨量以内であれば摂取は可能であり、過剰摂取に注意が必要です。
動物性ビタミンA(レチノール)
妊娠中はビタミンAの摂取に注意が必要です。ビタミンAは目・皮膚・粘膜などの健康維持に欠かせない栄養素ですが、動物性のビタミンA(レチノール)を摂りすぎると赤ちゃんに先天性異常が起こる場合 があります。
ただし、植物性のビタミンAであるβ-カロテンの摂取は問題がない と考えられています。妊婦さんのビタミンAの摂取推奨量は650μgから700μgRAE、耐用上限量は2,700μg RAEです。
RAEはレチノールだけでなく他のビタミンA前駆体も含めた量を示す値です。
動物性のビタミンAは鶏レバー(14,000μg/100g、生の状態)や豚レバー(13,000μg/100g、生の状態)、うなぎのかば焼き(1,500μgv/100g) などに豊富に含まれています。もし1日あたりの摂取上限を超えてしまっても、数日間から1週間の間で摂取量を調整すれば大きな問題につながることは少ないと考えられています。レバーは鉄分も含まれているため、貧血にもよいでしょう。
カフェイン
カフェインはコーヒーや紅茶、玉露などに含まれており、適度に摂れば眠気覚ましや集中力アップ、運動機能の上昇などが期待できます。ただし、神経を興奮させる作用があるため、摂りすぎると不眠・めまい・不安などの不調を感じることにつながります。
妊婦の方がカフェインを過剰摂取することにより、胎児の発育不全や早産・流産と関連するかどうかは現在も研究がされています。
カフェインの摂取量は世界保健機関(WHO)や英国食品基準庁(FSA) などから発表されており、1日あたり200mgから300mg にしておくことが望ましいとされています。
マグカップ2杯ほどのコーヒーでカフェインの摂取量が200mg近くになるため、コーヒーを飲む習慣がある妊婦さんはその点を留意しておくとよいでしょう。
水銀
メチル水銀は胎児の先天性異常を起こす可能性や、赤ちゃんの中枢神経系に悪影響 を及ぼすことも考えられます。大型の魚類が小さな魚類を食べることにより、大型の魚類の体内には水銀が多く含まれています。
マグロ類・鮭・アジ・鯖・サンマ・鯛・ブリ・カツオなどに注意しておきましょう。しかし、たまに食べる程度であれば、妊娠中でもお寿司は問題ないとされます。
魚自体はEPAやDHAなど体のよい成分を含んでいる食品です。摂取量は1回あたり80gを週に1回 まで としておくとよいでしょう。
ヒ素
ヒ素はひじきに含まれる成分です。過剰に摂ることによって、赤ちゃんの奇形や脳障害が起こる場合があります。
このような健康被害を及ぼす可能性がありますが、小鉢に入るほどの量を週に1回から2回であれば問題はないと考えられています。乾燥ひじきなどをたくさん食べるようなことがなければ、過剰摂取になることはないでしょう。
ひじきには鉄・カルシウム・食物繊維など妊婦さんが摂りたい成分が含まれているため、食事に取り入れる方は過剰摂取にならないようにするとよいでしょう。
ヨウ素(ヨード)
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料 となる栄養素です。しかし、過剰摂取により胎児の甲状腺機能低下につながることがわかっています。昆布に多く含まれているため、出汁を取るときなどはカツオや煮干しの出汁などを選ぶとよいでしょう。
うがい薬にもヨウ素が含まれていることがあるため、使用は控えると安心です。
お菓子
スナック菓子やチョコレートなどのお菓子を多量に食べることは避けましょう。ジャンクフードなども同様ですが、塩分・糖分・脂質などを過剰に摂る可能性が高くなります。
食べる場合は食間の決まった時間にして、できるだけフルーツ・ゼリー・ヨーグルト・ナッツなどに代替するとよいでしょう。
中には食べづわりが原因で、お菓子なら食べられる方もいるかと思います。塩分の摂り過ぎなどにより妊娠高血圧症候群にも関連する場合も否めませんので、食べる場合は量などに注意しましょう。
妊娠初期は控えた方がよいもの
妊娠中は控えた方がよいものとして、アルコール・たばこ・食中毒を起こす可能性があるものが挙げられます。
アルコール・たばこ
お酒や喫煙は妊娠がわかったらすぐに中止したいものです。アルコールは胎児性アルコール症候群といって、赤ちゃんの脳や体の発育が阻害されることにつながります。
妊娠中の常用的なアルコール摂取は顔の形態異常、胎児発育遅延や中枢神経障害の原因となるため、注意が必要です。
また、喫煙によって先天性の異常や流産・死産のリスクが増加します。喫煙によって血管が収縮 し、お腹の中の赤ちゃんに栄養や酸素が届きにくくなることがわかっています。副流煙や喫煙所を避けるなどの工夫もしておくとよいでしょう。
妊娠判明の直前までアルコールを摂取したり、喫煙したりした方もいるかもしれません。このような場合、妊娠が判明してからしっかり禁酒や禁煙をすれば、影響はないとされています。
食中毒を起こす可能性があるもの
生肉・生魚・生卵など、生の食品は食中毒につながる可能性があります。肉や魚のパテ・スモークサーモン・生ハムなどの加熱が不十分なものも控えておきましょう。
妊娠中は免疫力の低下からリステリア菌に感染して食中毒 を起こす場合があります。リステリア菌が胎盤を通過して赤ちゃんに感染することも懸念されるため、生ものには注意して過ごしましょう。
ナチュラルチーズもリステリア菌を含むため 注意が必要です。リステリア菌の感染は国内では非常にまれな感染症 ですので、大きな心配はないと思いますが、注意しておくことに越したことはないでしょう。
まとめ
妊娠中は栄養バランスのよい食事に加えて、葉酸・鉄分・カルシウムなど妊娠期だからこそ摂っておきたい栄養素があります。
一方で、動物性のビタミンA・カフェイン・水銀など摂取量に注意が必要なもの、アルコール・たばこ・食中毒になる可能性があるものなど控えるべきものもあります。
今回紹介した内容を参考に、普段のレシピ などを検討してもらえると幸いです。元気な赤ちゃんに出会えるように、食べ物から健康的な生活を送ってくださいね。
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
プロフィール
2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。