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妊娠初期症状はいつから?生理前との違いやチェック方法を説明
2024.03.19
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
「今起こっている症状は妊娠の初期症状?」
「生理前の症状との違いはなに?」
妊娠の初期症状と呼ばれるものをいくつか感じるものの、本当に妊娠しているのかどうかわからないという方は多いかと思います。
ここでは妊娠初期症状の特徴について、どのようなメカニズムでいつ頃から起こるのか、またどのような症状が現れるのか、生理前との違いについて説明します。
妊娠初期症状の特徴
まずは、妊娠の初期症状の特徴について説明します。
生理前との違いや妊娠の期間、想像妊娠について一緒に確認していきましょう。
生理前との違い
妊娠初期症状と生理前の症状の違いは基礎体温が高くなることと、生理が来なくなることです。どちらも似た症状が現れますが、妊娠していれば生理予定日を過ぎても高温期が続きます。3週間以上にわたって高温期が続く場合は妊娠している可能性が高いと考えられるでしょう。
一方で、妊娠しておらず生理前の症状が起こっている場合であれば、生理予定日に低温期に入ります。
これらの判断をするために、普段から基礎体温を記録しておくことが大切です。妊娠が成立していると、高温期が続くことに加えて、生理が来なくなります。この2つをもとに生理前か妊娠初期なのかを見分けることが可能です。
妊娠期間・初期症状が出る時期
妊娠の期間は大きくわけると、以下の3つの期間となります。
・妊娠初期(妊娠15週6日まで)
・妊娠中期(妊娠16週0日から27週6日)
・妊娠後期(妊娠28週から)
医学的な言葉ではありませんが、妊娠超初期(妊娠0週から3週頃)という考え方もあります。
また、これらの妊娠週数は最終月経日を0週0日として数えます。
妊娠週数の計算方法には、排卵日を妊娠2週0日として数える方法、月経初日を妊娠0週0日と数える方法、エコー検査(超音波検査)から推定する方法の3つがあります。
妊娠初期症状を感じるのは妊娠3週から4週頃である場合が多いようです。
想像妊娠
想像妊娠とは、実際は妊娠していないのに、妊娠したと思い込むことによって体が妊娠した似た状態です。
体温が高く顔がほてったり、性器から少量の出血があったり、吐き気や食欲がない状態を経験したりすることによって、妊娠したと思ってしまう場合があります。
想像妊娠をしやすい方の傾向としては、強く妊娠を望んでいる場合や妊娠したくないと強く願っている場合など、妊娠を強く意識している状態にあることが挙げられます。
妊娠初期症状が起こる原因
妊娠によって女性ホルモンなどの分泌量が多くなります。このことが理由で、他のホルモンに影響したり、ホルモンバランスが変化したりする妊娠初期症状が起こります。
分泌量が増加するホルモンは、主に以下の3つです。
・エストロゲン(卵胞ホルモン)
卵巣内の卵胞から出る、女性らしい体をつくるホルモンであり、子宮内膜を厚くすることや精子を通りやすくする作用があります。
・プロゲステロン(黄体ホルモン)
排卵後の卵巣内に形成された黄体から出る、受精卵の着床や妊娠の継続を助けるホルモンであり、基礎体温の上昇や食欲の増加などの働きを持ちます。
・ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCGホルモン)
受精卵が着床し、妊娠が成立した際に形成される絨毛から出る、妊娠の維持や赤ちゃんを育てるために必要なホルモンで、妊娠検査薬により検出されます。
妊娠初期に見られやすい症状21個
妊娠初期に見られる症状にはさまざまなものがありますので、ここでは21個紹介します。
着床出血
生理のときよりも少量の出血があります。これは受精卵が子宮内膜に着床した際に起こるものです。高温期に入って1週間後くらいに起こり、数日間にわたって続くでしょう。中には着床出血を経験しない方もいます。
胸の張り
妊娠に伴って乳腺の発達が始まります。原因は生理前と同じで、ホルモン分泌が増加することによるものです。個人差もありますが、胸がチクチクし、バストサイズが1カップから2カップほ ど大きくなる方が多いでしょう。
微熱が続く
妊娠によってホルモンの分泌量が増加すると体温が上昇します。個人差はありますが37℃前後で体温が保たれる方が多いようです。熱っぽさやほてり、汗をかきやすくなるなどの状態になるでしょう。
お腹の張り・下腹部痛
妊娠することによって、徐々に子宮が大きくなります。子宮は収縮を繰り返して大きくなるため、下腹部痛やお腹の張り、生理前に似たお腹を絞るような痛みを伴います。また、子宮が大きくなる際に子宮周囲の靱帯が引き伸ばされることで、下腹部や鼠径部の違和感があったり、突っ張った感じを抱いたりする場合があるでしょう。
腰痛
受精が成立することにより腰痛を感じる場合があります。ホルモンバランスの変化や子宮内膜の状態が変わることにより、腰に痛みや違和感を抱く場合があるでしょう。生理のときの症状と似ているため、人によっては腰痛を感じない場合もあります。妊娠中期以降ではリラキシンと呼ばれるホルモンで骨盤が緩みやすくなり、腰痛が出る方もいます。
頭痛
頭痛も妊娠や受精による女性ホルモンの変化が理由で起こる症状のひとつです。痛みの感じ方には個人差があり、我慢できる程度のものから鎮痛剤が欲しくなる程度までさまざまです。
また、プロゲステロンには血管を拡張させる作用があるため、脳の血管が広がって神経に刺激されると頭痛が起こると考えられます。元々片頭痛をお持ちの方では、初期に症状が出やすいこともあります。
肌トラブル・口内炎
エストロゲンやプロゲステロンの分泌量が増加することで皮脂の分泌が増加します。
これによって吹き出物などの肌トラブルが起こるでしょう。
また、ホルモンバランスの変化は口腔環境にも影響を与えます。歯肉が赤くなりやすかったり、細菌が増えやすくなったりして、口内炎が起こることも増える場合があるでしょう。 また、虫歯ができた方もいます。
嗅覚の変化
妊娠後はhCGホルモンの働きによって、嗅覚が変化する方が多いようです。ご飯を炊いたときの匂いや香水、柔軟剤や芳香剤など、以前は問題なかったはずの匂いを受け付けられなくなる場合があります。これはつわり症状として出ることもあります。
唾液・鼻水の増加
ホルモン分泌の変化から自律神経も変化することで、唾液や鼻水の量が増えることもあります。風邪の初期症状と間違える方もいるため、他に妊娠初期に見られる症状がないかを考えてみるとよいでしょう。
尿や便の変化
ホルモン分泌の変化により、膀胱付近の筋肉に変化が現れて頻尿になる方がいます。ホルモン分泌により腸付近の筋肉に影響が出たり、腸管粘膜がむくむことで便秘になったりする方もいます。
妊娠中期以降は、子宮が大きくなることによって膀胱が圧迫されることによってもお手洗いが近くなるでしょう。
おりものの変化
着床によって腟内の環境が変わるため、エストロゲンの分泌量も変化することから、おりものの性質や量が変化するのです。具体的には、おりものがいつもよりもサラサラしていたり、ネバネバしていたり、量が増えたりするでしょう。
倦怠感・眠気
プロゲステロンの作用により、十分に睡眠を取っていても眠気を感じることがあります。慢性的に眠気を感じる場合は妊娠初期症状によるものかもしれません。これは赤ちゃんを育てるために、体がエネルギーを蓄えようとしている状態だといえるでしょう。
また、プロゲステロンの作用で意欲が下がったり、だるさや倦怠感を生じたりする場合もあります。
情緒不安定
ホルモンバランスの変化から情緒が不安定になる方も多くおられます。特に、理由はないのにイライラしたり不安を感じたり、気分が落ち込んだりなど、感情のコントロールが難しくなる場合があるでしょう。
胃の痛み・むかつき・ゲップの増加
プロゲステロンの作用で消化器系の筋肉が働きにくくなることによって、胃の痛みやむかつき、ゲップなどの症状が起こる場合があります。これは便秘にもつながることもあります。これらの症状はつわりの始まりに感じる方もいます。吐き気を感じることもあるでしょう。
基礎体温の上昇
基礎体温を記録している方は、基礎体温の上昇に気づく場合があります。この気づきは生理前の症状と妊娠初期症状を見分けるために役に立つことがあるでしょう。生理前と似たような症状が起こっている場合であっても、基礎体温が上昇していたら、妊娠初期症状によるものだと推定することが可能です。
食欲の変化
食欲が増減したり、同じものを食べたくなったり、食の好みが変化する場合があります。つわりの一種やホルモン分泌の変化として起こる症状ですが、どのように食欲や食の好みがどのように変化するかは個人差があります。
息切れをしやすくなる
プロゲステロンの影響により、体が血液中の二酸化炭素濃度を察知しやすくなります。呼吸をするようにと指令が出るため、息が切れやすくなります。妊娠中期以降では、子宮が大きくなることで横隔膜の運動が制限され、呼吸困難を起こしやすくやすくなります。
生理が始まらない
妊娠が成立していると、予定日を過ぎても生理が始まりません。ただし、生理の予定日から1週間を過ぎた時点であっても妊娠しているとは限らない点に注意が必要です。
ストレスや疲労などでも生理が遅れることもありますが、中には子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群などの要因によって生理が遅れている可能性もあるため、医師に相談して判断に従いましょう。
めまいや立ちくらみ
ホルモン分泌の変化から自律神経の変化により、めまいやふらつきを感じる方もおられます。脱水や貧血などによってめまいを感じることもあるでしょう。転倒してケガにつながることもあるため注意が必要です。
鼻血・耳詰まり
鼻血はホルモンバランスと自律神経の変化から起こりやすくなる症状です。プロゲステロンによって血管が拡張されるため、鼻付近の毛細血管が集まる箇所がむくみ、少しの刺激で出血することになります。
また、エストロゲンの作用には粘膜の膨張や水分貯留などもあるため、鼻が詰まりやすくなり、耳が詰まったりするような感覚を味わう方もいるでしょう。
むくみ(浮腫)
プロゲステロンの効果にも体内に水分を溜め込む作用があります。
そのため、妊娠初期からむくみやすくなる方もおられます。
軽いむくみであれば大きな問題はありませんが、足がむくんで靴が入らないようなときなどは医師に相談しましょう。
妊娠のチェック方法
妊娠のチェックでは、妊娠検査薬により尿中のhCGホルモンの分泌を調べます。hCGホルモンが分泌される時期を考慮すると、一般的には生理予定日の1週間後以降が妊娠検査薬を使用すべきタイミングだと考えられています。
妊娠初期症状がない方もおられるため、高温期が14日以上続いている状態で、かつ微熱や倦怠感などを感じるときには使用を検討した方がよいでしょう。
ただし、高温期13日以前の使用はフライング検査となります。妊娠検査薬でhCGホルモンを検出できず、妊娠していても陰性と出てしまう場合があるため注意が必要です。
妊娠検査薬で結果が陽性と出た場合は妊娠している可能性が高いでしょう。妊娠しているかどうか知るためにも産婦人科を受診しましょう。
産婦人科の受診時には、最終月経・生理周期・初めて生理があった年齢・服用中の薬・基礎体温・妊娠検査薬の使用日や陽性が出た日付・出産を希望するかどうかなどを質問されることが一般的です。できる限り把握しておくと、診察がスムーズになるでしょう。
産婦人科を受診するときの持ち物は、生理用ナプキン・保険証などです。お薬手帳や基礎体温表などをお持ちの方は持参しましょう。ワンピースやスカートなど、内診台で診察を受けやすい服装がおすすめです。
妊娠したら気をつけること
ここからは妊娠している場合に気をつけることについて説明します。
生活習慣
喫煙・飲酒などをやめることはもちろん、睡眠や食事などできるだけ健康な生活を送りましょう。ダイエットをしている方は注意が必要です。過度に食事制限などをして栄養が不足していると、ホルモン分泌などが正常に行われず、妊娠継続が困難な場合があります。
妊娠期間中は赤ちゃんの成長やお母さんの健康維持に役立つ葉酸、鉄分やビタミンB群などの摂取を心がけるとよいでしょう。
市販薬の服用・レントゲン(X線)
妊娠初期症状がつらくても自己判断で市販薬を使用することは控えましょう。お腹の中の赤ちゃんに影響が出てしまうことが懸念されます。
また、妊娠の可能性がある場合はレントゲン検査に注意が必要です。一般的なレントゲン検査で浴びるX線であればお腹の中の赤ちゃんに大きな影響はないと考えられています。歯科医院や整形外科などではレントゲン検査をすることがあるため、必ず受付や担当医に妊娠の可能性があることを伝えましょう。
ペットとの接し方
ペットと接したことによって感染症にかかることがあります。猫の便などを介してかかるトキソプラズマは、 赤ちゃんの発育に影響したり、場合によっては流産につながったりすることもあるため注意が必要です。
切迫流産・異所性妊娠・その他の疾患
妊娠が成立していても、切迫流産につながることや、異所性妊娠(子宮外妊娠 )の可能性があります。これらを確認するためにも、検査薬だけでなく産婦人科で診察を受けることが大切です。
受精卵となった場合でも、胞状奇胎 といって胎児に成長できず、流産となってしまう場合があります。
また、腟炎が起こっていた場合は、その原因となる菌が赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあります。クラミジアは早産や前期破水、B群レンサ球菌 は胎児機能不全や胎児敗血症につながることがあるでしょう。
保険や出生前診断の検討
妊娠に伴って起こる病気などに備えて、出産保険に加入する方もおられます。もしもの場合が気になる方は、ご検討されてみてはいかがでしょうか。
妊娠が確定後であれば出生前診断を受けることも可能です。赤ちゃんの健康状態や染色体異常などが気になる方や、妊娠期間をよりよい状況で過ごしたい方は検討してみるとよいでしょう。
まとめ
妊娠初期症状は最終月経日を0週0日として妊娠3週から4週頃に現れることが多い傾向です。症状の種類は多岐にわたるため、生理前の症状と見分けることは難しいですが、生理が来ないことと高温期が続くことが同時に見られた場合は妊娠している可能性があります。
妊娠をチェックする場合は妊娠検査薬を正しく使用して、妊娠の確定診断については医療機関で受けてくださいね。
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
プロフィール
2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。