【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介
妊娠初期に気をつけることとは?妊娠初期の症状についても説明
2024.03.15
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
「妊娠初期は何に気をつけて過ごせばいいの?」
「やってはいけない体勢はある?」
妊娠することができてうれしい気持ちと同時に、どのようなことを意識して過ごせばよいかわからないと思う方も多いのではないでしょうか。
ここでは妊娠初期の方に向けて、妊娠初期に気をつけるべきことや妊娠初期の症状、家族に気をつけてもらうこと、妊娠初期の流産などについて説明します。
妊娠初期に気をつけること
妊娠初期に気をつけるべきことは多岐にわたります。健康的な生活を送ることや禁煙・禁酒、市販薬の使用などが挙げられるでしょう。
風邪・感染症など
妊娠中は免疫力が下がる傾向です。これはお母さんの体が赤ちゃんを異物として攻撃しないように、妊娠していないときに比べて免疫が抑制されていることが理由として考えられています。風邪などにはいつもより用心しておきましょう。
少し熱が出て数日で治るならよいのですが、高熱になってつらい思いをするケースもあります。妊婦さんがインフルエンザや新型コロナウイルスに感染すると、重症化のリスクが高まることもわかっていますので、流行期にはワクチン接種をしておきましょう。
また、感染する病原体の種類によっては、胎盤を通じて赤ちゃんに影響するものもあります。感染症であれば、十分に加熱されていない食べ物からリステリア菌に感染することや、生の肉や猫の糞を介して感染するトキソプラズマ症などが赤ちゃんに影響することがあるものとして挙げられるでしょう。
飲酒・喫煙を避ける
飲酒や喫煙の習慣がある方は、妊娠がわかった時点ですぐに中止することをおすすめします。
飲酒によって胎児性アルコール症候群が起こる場合があります。
胎児性アルコール症候群により、赤ちゃんに顔面の形態異常や脳障害、発達遅延などが起こるリスクがあります。これらは少量の飲酒で発生した例もあるため、注意が必要です。
喫煙では先天性の異常や流産・死産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全、常位胎盤早期剥離などのリスクが増加することがわかっています。ニコチンによって血管が収縮するため、お腹の中の赤ちゃんに栄養や酸素が届きにくくなるのです。
出産ができても、低体重の赤ちゃんが生まれる場合があるでしょう。常位胎盤早期剥離は赤ちゃん、お母さんの双方にとって命に関わる合併症です。喫煙しない方は、副流煙や喫煙所には近づかないことなどを意識して過ごすようにしましょう。
市販薬の使用
妊娠初期はさまざまな不調が体に現れる時期です。頭痛や胃痛など、耐えられないくらいつらいときもあるかと思いますが、自己判断で市販薬を使用することは避けておきましょう。風邪薬や胃薬などを飲みたくなる日が続くときは、医師に相談してからの服用をおすすめします。
歯科や整形外科、健康診断などで受ける一般的なレントゲン撮影は、放射線を浴びる検査にはなりますが、被曝量が少なく胎児への影響もないと考えられていますので、レントゲン撮影を妊娠中に受けることは可能です。
妊娠している、または妊娠の可能性があることを事前に申告すると、お腹に放射線があたらないようにお腹に防護衣を巻いて撮影します。ただし、検査を受ける医療機関によっては妊娠中の撮影は行わないというところもあるかもしれません。
レントゲンには放射線の一種であるエックス線が含まれています。
食事内容
妊娠中は以下の栄養素の過剰摂取に注意が必要です。
ここではそれぞれの栄養素を含む食品例も紹介します。
・動物性ビタミンA(レチノール)
過剰に摂取することにより赤ちゃんに奇形が生じる場合があります。ただし植物性のビタミンAであるβ-カロテンの摂取は問題ないと考えられています。鶏や豚のレバー、うなぎなどがレチノールを多く含む食品です。
・カフェイン
世界保健機関(WHO)や英国食品基準庁(FSA)などから、妊婦の方のカフェイン摂取量について発表がされています。カフェインの1日あたりの摂取量は200mgから300mgまでにしておくことが望ましいでしょう。一般的なマグカップの大きさで、2杯コーヒーを飲むと200mgほどのカフェインを摂取となります。
・水銀
魚類にはメチル水銀と呼ばれる水銀が含まれていることがあります。水銀の摂取によって、赤ちゃんの先天性異常が起こる場合があります。ミナミマグロ(インドマグロ)・クロマグロ(本マグロ)・メバチマグロ・キンメダイ・マカジキ・サメ・イルカ・クジラなどの魚類に注意が必要です。一方、キハダマグロや鮭、サンマや鯖などの青魚・鯛・ブリ・カツオ・ツナ缶などは安心して食べられます。
・ヒ素
お母さんがヒ素を摂りすぎると赤ちゃんの脳障害や奇形につながる場合があります。ひじきに含まれているヒ素ですが、小鉢に入るほどの量のひじきであれば週に1回から2回なら問題ないと考えられています。
・ヨウ素(ヨード)
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料となる成分です。しかし、過剰摂取により赤ちゃんの甲状腺機能の低下につながることもわかっています。昆布に多く含まれているため、出汁はカツオや煮干しを選ぶとよいでしょう。
また、お菓子の食べすぎなどにも注意が必要です。適量であればよいのですが、スナック菓子やチョコレートなどは脂質や糖分、塩分などが多く含まれている傾向にあり、食べすぎると体重の増えすぎや妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
また、上述の通りですが、加熱が不十分な食品や生の食べ物は感染症にかかりやすくなるため、控えておきましょう。食品安全委員会のWebサイトも参考になりますので、ぜひチェックしてみてください。
激しい運動・重労働を避ける
スポーツや旅行、ライブなど激しく動くことは避けておきましょう。
自転車のように運動の負荷が控えめに思えることでも、運転中に転倒してしまうリスクがあります。妊娠の経過が順調で何か運動をしたい場合は、医師に相談した上でヨガや水泳、ウォーキング、マタニティエクササイズなど比較的負荷が穏やかで転倒や衝突のリスクが少ない運動を選びましょう。
妊娠中の旅行は国内・海外問わず予想外のことが起こる可能性があるため、おすすめできません。
また、やってはいけない姿勢として長時間にわたって立ち続けることや、重い荷物を持つなどの重労働、立った状態で床から物を拾うときにお腹が苦しいなど、ご自分で苦しく感じる姿勢などもあれば避けましょう。このようなこと日頃から意識しながら、リラックスして過ごすことを心がけましょう。
体を温めておく
体が冷えていると感じると、体調不良になりやすくなります。お腹が張りやすくなったり、便秘がちになったり、つわりの悪化やむくみなど、冷えによって体の不調が増えたりすることがあります。
冷えが気になるときは、いつもより1枚多めに衣服を身につけておくことや、首・手首・足首を温めること、温かい飲み物を口にすることなどを心がけるとよいでしょう。
生活習慣を見直す
十分な睡眠、栄養バランスのよい食事、適度な運動を心がけることが大切です。
食事に関しては、以下の摂取を心がけるとよいでしょう。
・タンパク質
タンパク質は体のあらゆる組織を作る元になるほか、機能を維持するためのホルモンや酵素、抗体、神経伝達物質の材料にもなります。肉類・魚類・卵・大豆製品に含まれています。
・葉酸
赤ちゃんの神経系の発達やお母さんの健康維持に役立ちます。ブロッコリー・いちご・バナナ・枝豆などに含まれています。できれば、妊娠する1カ月前から、葉酸のサプリメントは飲んでおくことをおすすめします。「妊娠中だけど飲んでいなかった」という方は、できるだけ早く服用をするとよいでしょう。
・ビタミンB群
炭水化物やタンパク質の代謝に必要な栄養素です。カツオ・ブリ・鶏肉・豚肉・納豆などに含まれています。
・鉄分 / ビタミンC
鉄は貧血予防に役立ち、ビタミンCは鉄の吸収を助けます。鉄分はほうれん草・豆腐・牛肉・卵などに、ビタミンCはレモンなどの果物や緑黄色野菜に多く含まれています。
・カルシウム / ビタミンD
カルシウムは骨の形成や精神の安定をサポートしてくれる栄養素です。ビタミンDは日光にあたることで合成でき、カルシウムの吸収を助けます。カルシウムは乳製品に、ビタミンDは紅鮭・きのこ類・卵黄などに多く含まれています。
・食物繊維 / 乳酸菌
どちらも便通を良くするために役立つため、便秘になりがちな妊娠期に接種しておきたいものです。食物繊維は野菜類に、乳酸菌はヨーグルトなどから摂取することが可能です。
・亜鉛
亜鉛は体内で作れないミネラルであり、免疫機能のサポートやタンパク質合成、味覚の維持などに関係する栄養素です。赤身肉・魚類・乳製品・卵などに含まれています。
また、過度なダイエットは赤ちゃんの発育に必要なエネルギーが不足して、胎児発育不全の原因となってしまうかもしれないため、控えましょう。
反対に、食べすぎることは、産道が狭くなって出産が大変になり、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群につながることもあるため、適度に食べる意識が必要です。
日々の生活に関係することとして、お仕事はご自分のペースを大切にしましょう。
職場の方や他のお母さんが自分よりもたくさん働いているように見えても無理をしないことが大切です。
妊婦さんの中にはイライラしやすくなったり、不安に感じることが多くなったりする方も少なくありません。趣味に触れてリラックスしたり、友人とおしゃべりしたりして、メンタル面のケアも心がけてみてください。
性行為はホルモンバランスや体調の変化などで難しく感じるときが増えるかと思います。スキンシップを心がけるだけでも夫婦間の雰囲気はよいものになるでしょう。性行為をしたいという気持ちがあって、切迫早産や前置胎盤などの合併症がなければ、しても構いません。心配な場合は医師に確認しましょう。そのときは感染症予防にコンドームをつけることをおすすめします。
ペットを介して感染症にかかることもあるため、ペットの唾液や排泄物は取り扱いに注意が必要です。ペットのお世話はなるべく同居している方にお願いするとよいでしょう。
妊娠初期の症状
妊娠初期はホルモンバランスの変化からさまざまな症状が表れます。どのような症状がどのくらいの強さで現れるかは個人差があり、めまいや立ちくらみなどのように、症状によって転倒などの二次被害につながることがあります。
ご自分に起こっている症状を把握して、気をつけて過ごすことが大切です。症状については以下のものが挙げられます。
・着床出血
・胸の張り
・微熱
・お腹の張りや下腹部痛
・腰痛
・頭痛
・肌トラブル
・口内炎
・嗅覚の変化
・唾液や鼻水の増加
・頻尿や便秘
・おりものの変化
・倦怠感
・眠気
・イライラや不安など情緒の不安定
・胃痛やゲップ
・基礎体温の上昇
・食欲や食の好みの変化
・生理が止まる
・めまいや立ちくらみ
・鼻血
・耳詰まり
・浮腫(むくみ)
性器からの多量の出血や強い下腹部痛などがなければ、急いで病院を受診する必要はありません。ただし、以上の症状があっても、生活に支障が出ているときや、不安を感じるほどに症状が強い場合は遠慮なく担当医に相談することをおすすめします。
妊娠初期にやるべきこと
妊娠が成立したら、妊娠に伴う手続きなどをする必要もあります。
妊娠初期に主にやるべきことは、妊娠検査薬による検査や、産婦人科で妊娠を確認してもらうことです。妊娠が確定した場合は、自治体に妊娠届出書を提出し、母子健康手帳を受け取ります。このタイミングで自治体の支援制度や受けられる助成がないかを確認しておきましょう。
その後は妊婦健診を受けたり、出産する病院を決めておいたり、妊娠について職場に伝えておくことも大切です。
パートナーに気をつけてほしいこと
パートナーのサポートがほしいと思っても、具体的に何を伝えたらよいかわからない方もいるのではないでしょうか。
以下は一例ですが、早い段階で話し合っておくとお互いが楽になるでしょう。
・つわりがつらくて何もできないときがあると伝える
・気持ちが不安定になりがちなことを伝えておく
・睡眠が長いことや体型の変化など言ってほしくないことを伝えておく
・負担の重い家事を担当してほしいと伝える
・パートナーが喫煙者の場合は近くで喫煙しないように伝える
・日常生活や買い物など重いものを持つことは母胎に負担になることを伝える
・妊娠期間や体の変化について一緒に勉強する
・万が一に備えて家の中にあるものや緊急連絡先などといった大切ことを再度共有する
妊娠初期の流産
厚生労働省が公表している情報によると、妊娠初期の流産は約15%にもなり、その多くは遺伝子的な異常(染色体異常)が理由といわれています。染色体異常の場合は、受精卵である時点で育つことが難しいものです。流産でご自分を責めるお母さんがおられますが、染色体異常による流産はお母さんのせいでは決してないことを認識しておきましょう。
他に流産のリスクを上げるものとしては、子宮奇形や感染症、子宮頚管無力症、子宮頸部円錐切除術後などが挙げられます。妊娠判明後の喫煙や飲酒も流産率を上げることがわかっています。
もし診察で流産の可能性が指摘された場合であっても、確定するまではアルコールやたばこなどを避けて過ごしましょう。
まとめ
赤ちゃんやお母さんの健康を思うと、妊娠初期に気にすることは多いかもしれません。どれから意識すればわからない方は、まずは注意しておかないと危険な状態につながることからチェックしておくと安心でしょう。
意識した方がよいこともありますが、中にはご自分に合わないものがあるかもしれません。
また、気にしすぎることでプレッシャーになる場合もありますので、できる範囲でやるという意識もときには持ちましょう。
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
プロフィール
平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。