【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介
【妊娠後期】体温37度以上だけど大丈夫...?原因・対策・注意が必要な時について説明
2023.11.14
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
「妊娠後期なのにまだ37度ある…」「特に不調なことはないけど大丈夫かな?」。妊娠が順調だったり、赤ちゃんが大きくなった証拠だったりする妊娠後期の体温の高さ。とはいえ、体調や赤ちゃんへの影響が心配になっている妊婦さんも多いのではないでしょうか。
ここでは妊娠後期の体温の高さが気になる方に向けて、その原因や対策、注意が必要な時について説明します。
妊娠中の体温上昇について
一般的には妊娠初期に体温が上がり、胎盤が出来上がる12~16週を過ぎると下がり始める妊婦さんが多いと言われています。
この理由は、妊娠初期は黄体ホルモンであるプロゲステロンの働きによって受精卵が着床しやすくなる効果と、体温を上昇させる効果があるためです。
妊娠中期は、胎盤ができることによってホルモン分泌の場所が子宮から胎盤に移ることや、妊婦さんの体がホルモン分泌に慣れることから37度以下や平熱に戻る場合が多いようです。
妊娠後期も平熱に戻る方が一般的ですが、妊娠に伴う症状は個人差が大きいことから、体温が37度付近のままという方もいます。
妊娠後期に体温が37度以上になる原因
ではどのようなことが原因で、妊娠後期に体温が37度以上になるのでしょうか。ここではホルモン分泌・風邪・感染症に着目して説明します。
ホルモン分泌
妊娠により黄体ホルモンであるプロゲステロンが分泌されることにより、体温の上昇が起こると考えられています。
プロゲステロンの影響により妊娠初期に体温が高くなり中期には落ち着く方が多いのですが、妊娠中は分泌量の多い状態が続くため、中には妊娠後期まで続く方もいるでしょう。
また、妊娠中には基礎代謝量が増えるので、代謝によって産生される熱も増加し結果として体温が上がりやすくなります。
風邪や感染症
妊娠中は免疫力が低下しやすいことから、風邪などの感染症にかかりやすいことが考えられます。発熱以外に倦怠感・関節痛・咳・鼻水などの症状が見られる場合は風邪の疑いがあるかもしれません。
症状がつらくても自己判断による市販薬の服用は避けておきましょう。赤ちゃんに影響する薬があるため、必ずかかりつけ医に相談することが大切です。
妊娠後期で体温が37度以上のときの対策
続いて、体温が37度以上のときの対策について説明します。できる範囲で生活に取り入れてみてくださいね。
食事や水分補給の管理
体温が高いとのぼせたり、ほてったように感じたりする方も多いかと思います。
妊娠後期は血液中の水分量が増えるため、血液が薄くなり貧血のような症状が出ることも考えられますので、鉄分を多く含む肉やカツオなどの赤身の魚、小松菜やほうれん草から鉄分を取ることを心がけましょう。ただし、赤身魚であるマグロに微量に蓄積されている水銀には、わずかながら赤ちゃんの聴力に悪影響 が出ることがわかっているので、食べ過ぎには注意しましょう。ただし、缶詰のマグロやキハダマグロを選べば、そのような心配はありません。
また、水分が失われやすいことも考えられるため、水分補給も欠かさないことが大切です。水分と同時に電解質も摂取できるとよいため、麦茶などミネラルを含むお茶を選ぶとよいでしょう。たくさん汗をかいたときは、経口補水液やスポーツドリンクなどを併用することも対策になります。
ただし、スポーツドリンクなどは糖分の取り過ぎにつながる場合もあるため、何をどれくらい摂取するかは注意が必要です。
空調管理
無理をして体温が高い状態に耐えても、しんどくなって気持ち悪くなったり、脱水症状や熱中症のような状態になったりする場合があります。
つらい時は無理をせずに、エアコンを使って過ごしやすい環境を整えましょう。エアコンをできるだけ使用したくない方は、扇風機や保冷剤などの利用もおすすめです。
寝具の改善
最近では冷感素材の衣類が多く販売されています。寝具だと、枕カバーやシーツで冷感素材のものを準備しておくとよいでしょう。冷感素材以外なら、汗を吸収しやすい素材のものもおすすめです。寝巻きやタオルなどは、過ごしやすい肌触りのものを見つけてみてくださいね。
37度以上で注意が必要な時
妊娠中に起こりやすい体温上昇ですが、中には注意が必要な場合もあります。ここでは他の病気との関連について説明します。
37.5度以上
妊娠後期に体温が高くなることは珍しいことではありませんが、37.5度以上の熱は注意が必要です。
発熱に伴って喉の痛みや関節痛、腹痛など別の症状も起こっている場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。一度診察を受けてみた方がよいでしょう。
風邪の症状が見られる時
37.0度付近でも、鼻水や咳、頭痛などの風邪の症状に近いものがある場合は注意が必要です。妊娠による高熱ではなく風邪を引いている状態であれば、いつもより安静にして過ごす必要があります。
インフルエンザ・新型コロナ感染
妊娠によって免疫力が下がることが予想されます。高熱を伴うものとして、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの感染が疑われるケースもあるでしょう。
妊娠中のインフルエンザウイルス感染は赤ちゃんへ直接影響することはないと考えられていますが、重症化しやすいとも考えられています。
治療には一般的な抗インフルエンザ薬が使用可能となる場合がありますが、38度以上の発熱がある場合はかかりつけ医にご相談ください。流行しやすい冬場(11~2月) あたりは注意して過ごしましょう。
似た症状として新型コロナウイルスへの感染も疑われやすいです。基礎疾患のない方は妊娠をしていない場合と近い経過を示す傾向にありますが、早産や重症化のリスクが高くなると考えられています。
どちらも手洗い・うがい・消毒・人混みや密になる場でのマスクの着用などといった、基本的な感染予防を徹底することが大切です。
風疹
風疹は風疹ウイルスの感染によって起こる病気で、春や初夏に流行しやすいことがわかっています。主な感染経路は感染者の飛沫です。
1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性は風疹の予防接種の機会がなかった世代なので、身近にいる場合は注意が必要な感染症です 。自治体によっては抗体検査やワクチン接種に補助が出ることもあるので、妊婦さんに風疹をうつさないためにもこの年代の方は特に検査を受けておくことをおすすめします。
風疹の症状は、発熱・咳・目やに・発疹・耳の後ろや首などのリンパ節が腫れるなどです。妊婦さんが風疹に罹患すると、妊娠週数が短いほど赤ちゃんが先天性風疹症候群になる場合があると考えられています。
先天性風疹症候群になると、赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が発生する可能性があります。風疹の抗体が低いと言われている妊婦さんは、産後ワクチン接種を検討しましょう。
水痘
水痘は水ぼうそうとも呼ばれており、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV) に感染することで起こる病気です。
多くの人は子どもの頃に罹患していることが多い病気ですが、小児の間に感染せず大人になってから感染して重症化する場合があります。
また、子どもの頃に初感染を経験していても、ストレスや加齢などによって帯状疱疹として発症することもあるでしょう。
罹患したことがない妊婦さんが妊娠後期に水痘に罹患すると肺炎を起こしやすく、それによって亡くなるケースもあるため注意が必要です。 症状は発熱や頭痛から始まり、紅斑や水疱、丘疹(きゅうしん) 、頭部や口腔粘膜の発疹です。
水痘にかかったことがなく、ワクチン接種歴もない方は、ワクチン接種をしておくことが予防として望ましいですが、 妊娠中であっても、罹患した場合は抗ウイルス薬による治療が可能な場合が多いでしょう。
ジカ熱
ジカ熱はジカウイルスを持つ蚊に血を吸われることによって起こる感染症です。人から人への感染は性行為や輸血などによって起こると考えられています。
症状は発熱・倦怠感・発疹・結膜炎・関節痛・筋肉痛・妊婦さんが罹患した場合は赤ちゃんが小頭症になる場合があることです。
症状自体は軽い場合もありますが、赤ちゃんが小頭症になる可能性がある点でとても注意が必要な病気と考えられるでしょう。
予防としては蚊に刺されないようにすること、ジカ熱が流行している場所への渡航は避けることなどが挙げられます。
デング熱
デング熱もジカ熱と同じく、蚊に刺されることによって感染する病気です。白と黒の縞模様が特徴的なネッタイシマカやヒトスジシマカ(ヤブカ)などによって媒介すると考えられています。
症状は高熱・強い頭痛・目の痛み・筋肉痛・関節痛・食欲不振・腹痛・嘔吐・吐き気などで、中にはデング出血熱となって出血傾向が見られる場合があります。
日本産婦人科学会の2014年の発表によると、妊婦さんが罹患すると重症化のリスクがあるものの、重症化は200人に1~2人、死亡に至ったのは約6,000人の感染者のうち1人 と推定されていることから、心配はしすぎなくてよいという見解が発表されています(※)。
ただし、早期の治療が必要な感染症であることは変わりません。お住まいの地域でデング熱が流行していて蚊に刺されたなど、心配な場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
予防としては蚊に刺されないことが大切です。肌を露出しない服装や虫除けグッズを使用しましょう。
※参照元:デング熱感染を心配している妊婦のみなさまへ
麻疹
麻疹(はしか)は麻疹ウイルスに感染することで起こる病気です。感染した人の飛沫や飛沫が乾燥した後の空気中の麻疹ウイルスなどが感染経路です。
症状は咳や鼻水などから始まり、発熱、発疹、合併症で中耳炎や肺炎、脳炎にかかる方もいます。妊婦さんで重症化すると流産や早産の可能性があり、麻疹の抗体がないお母さんから生まれた赤ちゃんが1~2歳 のうちに麻疹に感染すると、重症化するケースもあると言われています。
麻疹は減少傾向にある病気ですが、予防には妊娠前に抗体価検査を受けて、必要であればワクチンを受けることが挙げられますが、検査の料金は原則全額自己負担となります。
治療では症状を軽減するための対症療法が取られ、医師の判断によっては早産とする場合があります。
急性腎盂腎炎
腎盂腎炎は腎臓に細菌が感染することにより起こる病気で、尿路感染症の一つです。腎盂(じんう) は腎臓の中で尿をためておく場所で、尿路感染などによって細菌が入り込むことがあります。
症状は排尿後の違和感や残尿感などから始まり、発熱や背中の痛み、腰の左右のどちらかに重い痛みを感じることが一般的です。
早期に治療をすることで大きな問題につながることが少ない病気ですが、治療が遅れると症状が重くなって陣痛が始まり早産や流産となる可能性があるため、注意が必要です。もし腰痛や尿の濁り、膀胱炎のような症状を伴う発熱がある場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
予防には小まめな水分摂取と尿意を感じた時は我慢せずトイレに行くことが挙げられます。また、排便後は前から後ろの方向にお尻を拭くことも大切です。
虫垂炎
虫垂は大腸の一部であり、食べ物を消化する機能はありませんが、腸内の常在菌のバランスを保つと考えられている組織です。何らかの原因で虫垂の入口が塞がれて細菌が繁殖すると、炎症が起こって虫垂炎(いわゆる盲腸)となります。
症状はみぞおちの痛みなどから始まり、おなかの右下あたりの腹痛や真ん中にあった腹痛が移動すること、発熱、吐き気、食欲不振などですが、典型的な症状を示す方が半数近くと少ないと言われています。
また、妊娠中は、大きくなった子宮によって虫垂が押し上げられるため、妊娠していない方よりも上の部分に痛みを感じることもあるでしょう。
虫垂炎は悪化すると腹膜炎になったり、虫垂が破裂したりするため、命に関わることもある危険な病気です。
日頃から注意深く観察して、疑わしい症状があった場合は一度かかりつけの医師に相談しましょう。
赤ちゃんへの影響は?
体温上昇の理由が、妊娠によるホルモンの変化などであれば大きな影響は少ないと考えられます。ただし、37.5度や38度以上になると何らかの病気が隠れている可能性が考えられます。
風邪であっても高熱が続くと流産や早産の危険が高まったり、ただの発熱だと思っていると腎盂腎炎だったりするケースも有り得るでしょう。発熱を伴う感染症はおなかの中の赤ちゃんや生まれたての赤ちゃんに影響するものもあります。
対策として、普段から手洗い・うがい・消毒などの感染対策を徹底する、蚊に刺されない工夫をする、渡航は控える、体調に少しでも違和感がある時はためらわずに受診するなど、ご自身と赤ちゃんの安全を第一に考えて過ごしてくださいね。
まとめ
妊娠初期などには体温が上がりやすいイメージがあるものですが、妊娠後期においても体温が37度と高いままの方もいます。
風邪や感染症など、妊娠によるホルモン分泌が原因ではない場合を除けば心配しすぎなくてもよい場合が多いのですが、心配な場合はかかりつけ医に相談しましょう。
小まめな水分補給や栄養のある食事、暑さ対策で乗り切って、元気な赤ちゃんを迎えてくださいね。
記事監修
島袋朋乃先生
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属
プロフィール
平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。