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妊娠後期で息苦しい...!原因・対処法・入院理由・入院準備について説明

2023.11.08

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記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「妊娠後期になって息苦しい感じが常にする…」「おなかが張る感じもあってつらい…」「息を吸っても酸素が薄い感じがする…」。いよいよ出産が近い妊娠後期。おなかが大きいことや血液量などの関係で息苦しいと感じる妊婦さんは多いかと思います。

ここでは妊娠後期の息苦しさについて、その特徴や原因・対処法などから、入院となる場合の理由や入院準備までを説明します。

妊娠後期の息苦しさの特徴

妊娠後期では座っても寝ても苦しいと感じたり、食後に苦しさを感じたり、いくら空気を吸っても苦しいと感じたりする方もいるでしょう。中には、めまいやふらつきを感じる方もいるかもしれません。

妊婦さんや赤ちゃんの状態に問題がないにもかかわらず、妊娠後期にこのような息苦しさを感じる方は多いようです。

妊娠後期の息苦しさの原因

ではどのようなことが原因で、妊娠後期に息苦しさを感じるのでしょうか。

ここでは子宮が大きくなったことによる圧迫感、血流量や血圧の変化、精神的なプレッシャーなど妊娠に伴って自然に起こることから、甲状腺の異常や薬の副作用についても触れていきます。

大きくなった子宮による圧迫

妊娠後期は赤ちゃんが大きくなることによって子宮も大きくなっています。大きくなった子宮が肺や横隔膜などを圧迫するため、それに伴って肺や横隔膜の運動を制限し、呼吸が浅くなり息苦しさを感じる場合があります。

また、大きくなった子宮が周辺の血管や下半身から流れてくる血流を妨げるので、全身に血液が行き渡りにくくなり、脳への血流が少なくなります。結果として、めまいなどにつながることも考えられます。

血液量の変化・貧血

妊娠中は赤ちゃんに酸素や栄養を届けるために、妊婦さんの体内では血液量や赤血球の量が増えます。しかし、血液量は増えても赤血球の増加が間に合わないことがあり、酸素などをうまく運べずに貧血になるケースがあります。

そのため酸素が体全体に行き渡らず、酸欠の状態になってしまうことで息苦しさを感じる妊婦さんもいます。

また、血液を全身に送り出そうとすることで心臓の負担が増えることで、息苦しさを感じることも考えられます。

精神的なプレッシャー

妊娠中は陣痛やお産、出産後の心配までさまざまなプレッシャーがあります。子育てが始まった時の経済面が気になったり、ちゃんとした親になれるか心配になったり、つい考え事をしてしまうことで気づかないうちに呼吸が浅くなっている場合もあると思います。

ストレスや不安によって自律神経が乱れる方もいます。それが睡眠不足などにつながって、さらに呼吸が浅くなることもあるとされています。

血圧の変化

妊娠中は初期から妊娠20週付近までは緩やかに下がりやすくなりますが、その後、後期に近づくにつれて血圧が上がりやすくなります。血圧が高いと、息苦しさ・頭痛・めまい・ふらつき などの症状を感じることがあります。

一般的な妊娠で急激に血圧が高くなることは基本的にないことが多いですが、妊娠高血圧症候群といって、妊娠前は高血圧でなかった方が妊娠20週以降に高血圧になることもあります。

血圧の程度によっては妊婦さんや赤ちゃんの健康、妊娠の維持に影響することもありますので、血圧の管理は、かかりつけ医の指導をよく聞き、確実に行うことが大切です。

甲状腺機能の異常

甲状腺は喉仏にある組織で、甲状腺ホルモンは妊娠や出産だけでなく赤ちゃんの発育に関係するものです。

しかし甲状腺ホルモンが過剰に働いた場合(甲状腺機能亢進症 )では頻脈や発汗、イライラするなどの症状が現れます。このような甲状腺の働きが原因となって息苦しさを感じている場合もあるでしょう。

甲状腺機能が亢進する病気はバセドウ病が代表的です。のぼせやほてりなどの症状が現れることもあります。

一方で甲状腺機能が低下した場合には、元気がなくなったり、声がかすれたり、便秘を来したり、むくみや体重増加、また皮膚の乾燥や薄毛などの症状が見られます。疾患名としては橋本病や甲状腺機能低下症 などが代表的です。

ウテメリンの副作用

切迫早産や切迫流産の方が処方されているウテメリンは子宮収縮を抑える薬です。このウテメリンには、副作用として動悸や息切れ、脈拍が早くなることが挙げられ、中には息苦しさを自覚される方もいます。

妊娠後期の息苦しさの対処法

続いて、息苦しさの対処法について説明します。日常生活に取り入れやすいものをご紹介しますので、できる範囲から試してみてくださいね。

楽な姿勢で深呼吸をする

まずは、深呼吸ができるくらいの楽な姿勢がないか探してみましょう。クッションを使ったり、横になって左側を下にしたりすると楽な姿勢が見つかるかもしれません。

横になった時に左側を下にすると、子宮の後ろにある下大動脈を圧迫せずに済むため、息苦しさを軽減できると考えられています。

左側を下にした状態で右腕と右膝を曲げて前に出すと「シムス位」と呼ばれる状態になります。安眠や腰痛対策に良いと言われている姿勢なので、クッションなども使って一度試してみてくださいね。

一方で、仰向けで寝てしまうと大きくなったおなかが心臓や血管を圧迫してしまいます。体に酸素が運ばれにくくなり、頻脈や吐き気を感じる場合がありますので注意が必要です(仰臥位低血圧症候群)。

仰向けが楽に感じる方は、仰向けの状態から背中を30度ほど上げた状態の「セミファーラー位」という姿勢もありますので、そちらも試してみるとよいでしょう。

食事回数を5~6回に分ける

1度にたくさん食べてしまうと消化しきれずに苦しい思いをすることになります。妊娠後期は子宮が大きくなって胃腸などの消化器系の臓器も圧迫されてしまうため、食べ物が消化されにくい環境になっています。

あまりおなかが満たされない程度に、1日あたり5~6回に分けて食事を取るようにしましょう。よくかんで、時間をかけてゆったりとしたペースで食事を楽しむことも大切です。

貧血気味な方であれば、豚レバー・鶏レバー・牛の赤み肉・ブロッコリー・ほうれん草・小松菜など鉄分が含まれた食事や、水分摂取を小まめに取ることもおすすめです。

ただし、レバーにはビタミンAが入っているため取り過ぎには注意が必要です。牛レバーなら1日30g程度、鶏や豚レバーなら週に1~2回30g程度 を目安に摂取すると心配はないと考えられています。

また、カフェイン の摂取によっても貧血が起こりやすくなります。胃が荒れる原因にもなりますので、緑茶やコーヒー、紅茶などの摂取は控えておいた方がよいでしょう。

ゆとりのある服を着る

衣服や身に着けるものはゆとりのあるものを選ぶとよいでしょう。大きいサイズの服や、締め付けが少ないシルエットのものがおすすめです。

気づかないうちにおなかを締め付けていたことが理由で息苦しさを感じる場合もあります。ウエストがゆったりしたものやゴム素材のもの、また、服だけでなくインナーも緩い素材にしておきましょう。

衣服に関しては、冷えないものを選ぶことも大切です。冷えるとおなかの張りや便秘などが悪化する原因になって、息苦しくなるとも考えられます。軽く羽織ることができるものを持ち歩くなど、工夫をしてみてください。

妊娠後期の主な入院理由

妊娠後期に息苦しさやおなかの張り、それらと関連する症状から入院となる場合もあります。お産が近い時期でもありますが、それ以外で入院となる場合について触れていきます。

切迫早産

切迫早産とは早産になりかかっている状態のことです。切迫早産では、妊娠中期の後半から妊娠後期(22〜36週)におなかの張りを頻繁に感じるため、息苦しさがおなかの張りから来ているかもしれないと思う方は注意が必要です。

他の症状としては下腹部の痛み(生理痛に似た痛み)・性器出血・破水なども挙げられます。少しでも思い当たることがあればすぐに医師の診察を受けるようにしましょう。特に性器出血は注意が必要です。

切迫早産では、子宮収縮が頻回にある時や子宮頸管(赤ちゃんが通る子宮の出口)の長さが短く(多くは25mm以下)なっている時に入院が必要となる場合があります。

前置胎盤

赤ちゃんに栄養や酸素を運ぶ胎盤は、一般的には子宮の上の方に作られます。しかし、何らかの理由で子宮の下の方に胎盤が作られることがあり、赤ちゃんの出口である子宮口の全部または一部が胎盤によって覆われることを前置胎盤といいます。

一般的には無症状なことが多い前置胎盤ですが、腹痛などを伴わない性器出血(警告出血) が起こる場合があります。

この時におなかの張りや子宮収縮があると出血量が多くなること想定されるため、前置胎盤の疑いがある方や、息苦しさ・おなかの張り・出血が同時にある場合は注意が必要です。

出血があった場合には入院管理が必要となる ため、性器出血があった時点ですぐにかかりつけ医に相談することをおすすめします。

妊娠高血圧症候群

妊娠前に高血圧ではなかった方が、妊娠20週以降に高血圧になることを妊娠高血圧症候群といいます。

症状には動悸・息切れ・手足の痺れ・頭が重い・のぼせ・ほてりなどが挙げられ、合併症には子癇(=けいれん)発作・妊娠高血圧腎症・HELLP症候群・常位胎盤早期剥離・胎児発育不全・胎児機能不全など、注意が必要なものが挙げられます。

入院が必要となる場合があるのは、以上の合併症がある時や血圧が160/110mmHg以上 となる場合です。

治療としては安静、食事療法、降圧剤などがありますが、根本的治療は、妊娠の終了、つまり分娩になります。

妊娠後期の入院準備

お産が近いこともあるため、ここでは出産を見据えた入院時の準備をご紹介します。

・パジャマ
・ルームウエア
・骨盤ベルト
・産褥用ショーツ
・授乳用ブラジャー/ハーフトップ/乳帯
・母乳パッド
・産褥ニッパー
・ウエストニッパー
・シェイプガードル
・腹帯
・洗面用タオル
・バスタオル
・洗面用具
・スキンケア用品/基礎化粧品
・スリッパ/靴下
・生活用品(食器類やウェットティッシュなど)
・筆記用具
・折れ目のあるストロー



量の目安は、衣服類は2~3日分ほど、骨盤ベルトなら1つ、産褥ニッパーなどは1~2つほどで足りる方が多いでしょう。

母乳パッドは洗って再利用できる布タイプと使い捨ての紙タイプがあります。布タイプは再利用ができ、紙タイプが肌に合わない方も使用できる点がメリットですが、吸収量が紙より少ない点やテープがついていなくて固定しにくいという点もあります。

紙タイプは使い捨てができて便利ですが、人によっては肌に合わないこともあるでしょう。個人に合うものを選んでください。

横になったままでも使えるように、ストローは飲み口の近くに折れ目があるものを持っていくのがおすすめです。

また、退院時に必要なものは、おくるみ・おむつ・肌着・抱っこ紐・チャイルドシート(車移動の場合)など です。

まとめ

妊娠後期に息苦しさを感じる方は多くいます。妊娠が順調に進んでいる裏返しでもあるので、心配はしすぎなくてもよいことが多いと思います。ただし、妊娠高血圧症候群の方や前置胎盤など性器出血を伴う場合は注意が必要です。どちらもかかりつけ医に相談して、適切な対処を受ける必要があります。

息苦しさはつらいかと思いますが、生まれてくる赤ちゃんを思うとポジティブに捉えることができる場合もあるかと思います。

出産のための入院準備をそろえたり、出産後に赤ちゃんとしたいことを考えたりして、うまく気分転換をしてくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。

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