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「歯周病と妊婦さん、生まれ来る赤ちゃんの、こわ~い関係」

2023.11.08

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記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

現在、歯が抜ける一番の要因は何だと思いますか?
むし歯ではなく、歯周病なのです。

国民病とも言われる程、ほとんどの日本人は何らかの歯周病の症状を持っています。
しかもsilent diseaseと言われるように、痛み等自覚症状がほとんどなく徐々に進行してしまいます。
でも生活習慣病とも言われるように、発病や進行が歯磨き等日常の健康生活行動に関わっているので、自己管理で予防できます。

皆さんがお口を開けて見える「歯」は下の図の歯冠といわれる部分で、一番表層のエナメル質が見えていて、それが歯ぐき(歯肉といいます)に植わっているのが見えますね。

健康な状態の時、その歯と歯肉の間には歯肉溝という1~2㎜の溝があります。

でも、この溝(ポケット)にプラークや歯石がたまっていくと、細菌が繁殖して歯肉の炎症がおこります。
この段階は歯肉炎で、しっかり歯磨きや歯石除去をすることで炎症が治まり、またもとの
健康な状態にもどりやすいので、早く気づくことは大切です。

でもそのままにしているうちに、ポケットがどんどん深くなり、歯の根っこ側にもプラークや歯石が付着してきます。
ポケットの中は、空気に触れにくい場所なので、そういうところで活性化するのが嫌気性の
菌で、プロフィノモナス・ジンジバリスのような歯周病菌です。

ポケットが4㎜以上になってくると歯磨きの時だけでなく食べ物を噛んだ時に血がでることがあったり、もっと深くなってくると歯が植わっていた歯槽骨という骨も溶けてきて、
歯がグラグラして来て、むし歯でもなく痛みも感じないのに抜けてしまう状況になってしまいます。

これは免疫反応といって、気づかないうちに歯と歯肉の場所で歯周病菌と私達の身体が戦っているのに、歯磨きや歯石除去といった口腔ケアメンテナンスをしっかりしていないと身体の免疫だけでは負けてしまった状態で、歯がグラグラしてくるのです。

新型コロナ感染で、一般の皆様も免疫の大切さはニュース等で少し御理解いただいていると思います。
特に歯周病は、歯やお口の中だけでなく糖尿病等の全身疾患とも関連があることが、最近の研究で明らかになって来ています。

特に歯石になってしまうと歯ブラシで取ることは出来ないので、歯科医院で衛生士さん等に機械的に除去してもらう必要があります。
ですから痛みがなくても、定期的に歯科医院を受診してメンテナンスを受けることが重要になって来ます。

妊娠中の安定期には是非、歯科健診と共に歯石除去等もしてもらいましょう。
重度の歯周病の妊婦さんの場合、歯周病菌が起こす炎症反応の中でプロスタグランディンE2という物質が増えてくると、子宮収縮や子宮頚部の拡張を促して出産を促進する傾向があるので早産や低体重児出産がおこりやすく、歯周病でない人より5~7倍のリスクがあるという報告が出ています。

日頃からお口のケアを習慣づけて、歯周病予防、進行抑制につとめておきましょう。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。

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