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「むし歯に負けないお口づくり」
2023.11.01
記事監修
安田恵理子先生
日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長
むし歯になる要因の大きなひとつ、「宿主と歯の感受性」についてお話しましょう。
むし歯になりやすい人、なりにくい人、というのは確かにあります。
それはその人の口腔内の細菌の活性度や、発酵性糖質の摂取状況や食べ方といった時間的要素や生活習慣等が複雑に絡み合っています。
そしてその人の「歯の質」によってもむし歯のなりやすさは違います。
遺伝的に持って生まれたものもありますが、後天的に強い歯質にすることが可能です。
それが「フッ素」をとりいれることです。
歯の一番表面のエナメル質の構造は「ハイドロキシアパタイト」といって、ダイヤモンドの次くらいに硬いので崩壊することが少なく、博物館に行っても古代動物の歯が展示されていますね。
その歯の表面にフッ素を取り込んで「フルオロアパタイト」という層を作ることで、更に強固な歯になってむし歯になりにくくなるのです。
フッ素は自然界にも存在していて、栄養素としても重要です。
私達は海藻やイワシなどの魚、ジャガイモなど野菜やお茶等からも摂取しています。
特に緑茶には100~400ppmとフッ素が多く含まれています。
そこで、フッ素をフッ化ナトリウム等の化合物にして身体にとっても歯にとっても安全で有効な低い濃度で歯磨き剤や洗口剤に取り入れるようにしています。
では、どのようにしてフッ素はむし歯予防に効果を発揮するのでしょうか?
① 初期むし歯の再石灰化を促進します。
コラム6でも記載したように、エナメル質のリンやカルシウムイオンが酸によって溶け出していた(脱灰)のを、唾液中から再びエナメル質に取り込まれる(再石灰化)のをフッ素イオンが促進します。
② 歯質を強化します。
ハイドロキシアパタイトは硬いといっても、酸に弱くむし歯になりやすいのです。
フッ素イオンがハイドロキシアパタイトの水酸基イオンと置換されることでフルオロアパタイトの層が形成されると、歯質が強化されて酸に対して強い構造となり、むし歯予防効果が高くなります。
ですので、歯の表面に少しでも長くフッ素イオンが覆っている状態にしておくことがコツです。
フッ素が入っている歯磨き剤を使うこと、その場合強くすすぎすぎないことです。
③ むし歯菌の活動を抑制します。
フッ素イオンは細菌活動を抑制する作用があるので細菌が酸を産生するのを少なくします。
これが、むし歯予防にもなります。
特にむし歯になりやすい「生えたての乳歯」や「生えたての永久歯」を持つ子ども達には、フッ化物はむし歯予防としては効果が高く、歯科医院で必要に応じてフッ化物歯面塗布をしてもらうことが出来ます。
勿論、大人にもしてもらえますので、歯科医院で御相談下さい。
また保育園や幼稚園、小学校では、集団でフッ化物洗口を実施しているところもあります。
セルフケアとしては、毎日の歯磨きの時に使う歯磨き剤にフッ素が入っているものを使いましょう。
2017年には厚生労働省が1000ppmから1500ppmという従来の製品よりも高濃度であるフッ化物配合薬用歯磨き剤を認可しました。
2023年現在、日本で市販されている歯磨き剤では1450ppmが一番高濃度ですので、是非使ってみて下さい。
ただし、6歳未満には使わないように注意して下さい。
6歳未満には1000ppm以下の歯磨き剤です。
このように、大人用は1450ppm、6歳未満には950ppm等、歯磨き剤に表示されていますのでチェックしてみて下さい。
海外ではフロリデーションと言って水道水にフッ素を添加している国もありますが、
日本ではされていませんので、以上のようなことを参考にフッ素を取り入れてみて下さい。
子どもからのむし歯予防やフッ化物応用や歯磨きの仕方等、詳しくはまた出産後のコラムで詳しくお話しますね。
まずは御自分の歯を大切に、口腔ケアに取り組んでみて下さい。
記事監修
安田恵理子先生
日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長
プロフィール
1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。