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【妊娠後期・臨月】妊婦の恥骨痛は分娩が近い証拠?原因や対策を説明

2023.09.27

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記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

妊娠後期(28〜39週)や臨月(36週以降・出産の1カ月前)になると、ついに出産まで後少しという感じがしますね。妊娠に伴ってさまざまな体調の変化を感じてきたかと思いますが、妊娠後期では恥骨痛に悩まされる方も多くなります。ここでは妊娠後期の恥骨痛について知りたい方に向けて、その特徴や原因、対策だけでなく、分娩が近いときの特徴や準備についても説明します。

妊娠後期の恥骨痛の特徴

まず、妊娠後期の恥骨痛にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、恥骨とは体でどのような役割をしている部位なのかを説明し、妊娠後期の恥骨痛の特徴について触れていきます。

恥骨とは

恥骨は骨盤を構成する骨盤群の骨の一つです。左右に分かれていて軟骨組織からなる恥骨結合を形成し、つながっています。

個人差はありますが、陰毛の生え際の中央にあって、おへその下を触っていくと恥骨に触れることができるでしょう。

恥骨の役割は、骨盤を構成する骨の一つとして体重を支えることや内臓を守ることです。外部の衝撃から身を守るために、脂肪がつきやすい部位であることも特徴の一つです。

妊娠後期の恥骨痛の特徴

妊娠後期の恥骨痛の特徴は、チリチリ・ズーン・ツーン・チクチク・ズキズキ・ギシギシなどさまざまな表現で痛み方が表されます。電気が走ったような痛みと表現される場合もあるかもしれません。

また、恥骨に痛みを感じるというより、足の付け根が痛いと感じる方もいます。痛みというよりも足の付け根に怠さや違和感、ズンとした重さを感じたり、歩いたら痛いと感じたりと、人によって感じ方は異なる場合があるでしょう。

恥骨に近い部位の痛みとして、子宮が左右どちらかに傾くことによって神経が圧迫されて、お尻の方が痛む方もいます。恥骨痛を感じやすい時期としては、妊娠36週頃が多いでしょう。

妊娠後期の恥骨痛の原因

では、妊娠後期の恥骨痛はどのようなことが原因で起こるのでしょうか。

ここでは、赤ちゃんが下がってきて恥骨が圧迫されていること、骨盤の中心にある恥骨結合が広がること、リラキシン によって骨盤周辺や恥骨結合が緩むことを説明します。

恥骨が赤ちゃんに圧迫されている

成長した赤ちゃんの頭が恥骨を圧迫することによって恥骨痛が起こると考えられています。順調に妊娠が経過しているときに感じることが多く、出産が近いサインの一つと捉えることができます。

恥骨痛によって何か異常が起こっているのではと不安になる方もおられますが、心配しすぎる必要はあまりないでしょう。

恥骨結合の広がり

恥骨の痛みを感じている部位は、厳密には恥骨の左右をつないでいる恥骨結合という場所です。

出産が近づくに連れて骨盤が左右に開くため、骨盤の広がりが恥骨を左右に引っ張ることにつながり、結果として恥骨結合が広がり、恥骨痛の原因になると考えられます。

このように、恥骨痛を伴いやすい恥骨結合の広がりを「恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい)」と呼びます。

リラキシンによる骨盤周辺の緩み

妊娠に伴ってリラキシンというホルモンが分泌されます。生理前や妊娠中、妊娠後にも少し分泌されるホルモンとして知られています。

リラキシンには、赤ちゃんが骨盤を通りやすくするために骨盤周辺の靱帯や筋肉を緩める作用があるのですが、緩くなった骨盤に成長した赤ちゃんの負荷がかかることで恥骨痛につながります。

妊娠後期の恥骨痛の対処法・対策

では妊娠後期の恥骨痛にはどのような対処法があるのかを説明します。いずれも日常に取り入れやすい対処法をご紹介しますので、無理のない範囲から始めてみてください。

ストレッチや体操をする

できる範囲で構いませんので、ストレッチや軽い体操をすると恥骨痛の予防対策になると思われます。
血流を良くすることで恥骨周辺の痛みを和らげることができる場合があります。

ストレッチの中でも、骨盤底筋を鍛えるものがありますので、隙間時間などにトライしてみるとよいでしょう。

方法は、仰向けに寝て足を肩幅に開いた状態か、立った状態で腰くらいの高さのテーブルに手をついた状態で、肛門・尿道・膣全体にじっくり力を入れて陰部全体を5秒ほど引き締め、その後55秒ほど脱力してこれを1セット、合計10セットほどすると骨盤底筋のストレッチになります。

骨盤ベルトの使用

骨盤ベルトによって骨盤周辺を支えることで、骨盤の緩みや開きを抑えることができます。着用によって、恥骨痛だけでなく腰痛や体型の変化の予防なども期待できるかもしれません。

妊娠中だけでなく、妊娠後も着用できる骨盤ベルトがありますので、産後の体型が気になる方は使用を検討してみてください。ただし、使用方法については必ずかかりつけ医や助産師・看護師から聞いておく必要があります。

間違ったサイズ・使用方法によって、あまり効果がなかったり、おなかを締め付けて息苦しい思いをしたりすることにつながりますので、自己判断による購入や使用は控え、相談してから検討してください。

マッサージを受ける

足の付け根にあたる鼠径部 をさするようにマッサージすることも、恥骨痛の対策の一つです。恥骨結合をほぐすことで、痛みの軽減につながる場合があります。

さするときの力の入れ具合は、自分が気持ちいいと感じる程度にしておきましょう。あまり力を入れすぎると、逆に痛くなることがあります。また、おなかの張りや仰向けの姿勢が苦しく感じるときは中止するようにしてください。

姿勢に気をつける

おなかが大きくなると、反り腰になったり前屈みになったりと姿勢が崩れやすくなるため、意識的に姿勢を整えることが大切です。

ホルモン分泌の影響で骨盤周辺が緩みやすくなっているため、日常から姿勢を正す意識をできる限りで持っておくとよいでしょう。

内腿(うちもも)を温める

恥骨は内腿の筋肉とつながっているため、内腿の筋肉の凝りが恥骨痛の原因となっている場合もあります。意外なことかもしれませんが、凝りをほぐすために内股を温めることが恥骨痛の対策になる可能性があります。内腿にカイロを当てることや、お灸のシールを貼っておくだけで温めることができるでしょう。

半身浴なども体を温めるために良い方法ですが、おなかが大きくなっているため浴室で滑らないようにマットを使ったり、サポートしてもらえる家族がいるときに行ったりするのがおすすめです。また、湯船に浸かりすぎてのぼせないことにも注意が必要です。

横になる

恥骨痛でつらいときに休む場合、可能であれば横向きに寝転がって休みましょう。立ちっぱなしや仰向けになるのは負荷になるため避けて、座るよりも横向きで寝転ぶと楽に感じる方が多いようです。

ただし、楽に感じられるかどうかは個人差もありますので、必ずしも横向きにこだわらなくて大丈夫です。自分にとって、楽な姿勢を探るときのヒントにしてくださいね。

クッションの上に座る

恥骨への負荷を分散させるため、座るときはクッションの上に座るとよいでしょう。また、クッションではなくとも、柔らかいソファに座ったり、硬いところに座ることを避けたりするだけでも恥骨痛の予防対策になります。

骨盤のゆがみが恥骨痛につながることも考えられますので、足を組む姿勢や猫背なども控えた方がよいとされます。

恥骨に負荷がかかりにくい座り方としては、正座やあぐらが挙げられます。硬いところに座るときの工夫として覚えておくとよいと思います。

分娩が近いときの特徴・準備

妊娠後期の方の中には、妊娠から36週以降の臨月に差しかかり、出産間近の方もいるかと思います。ここでは最後に、分娩が近いときの特徴や準備について説明します。

特徴

分娩が近いと、おなかの張り・食欲の増加・頻尿・おりものの増加・おしるし・前駆陣痛などを自覚される方が増えます。

出産に向けて赤ちゃんが下がることによって、胃の圧迫感が軽くなり食欲の増加を感じる場合、また、膀胱が圧迫されて尿意を感じやすくなる場合があるでしょう。

前駆陣痛は、子宮の入口の出産準備のためにおなかが不規則に張ることです。痛みが強くなったり、痛む間隔が短くなったりすると本陣痛になることもあるため注意が必要です。

子宮の変化によって、子宮卵膜の一部が落ちることによる少量出血(おしるし)や、おりものの増加も見られるでしょう。

準備

分娩の用意としては、時計やメモ帳のアプリを用意しておくこと、ナプキンを多めに用意しておくこと、遠出は控えることなどが挙げられます。

分娩が近いと前駆陣痛が起こります。本陣痛か前駆陣痛かを見極めるために、おなかの痛みや張りが起こったタイミング、痛む場所、間隔の規則性をメモしておくとよいでしょう。

外出でも室内にいるときでも、ナプキンは多めに準備しておいた方がよいでしょう。分娩が近いとおりものの増加や、おしるしによってナプキンを取り替えることが増えます。

また、外出の際は遠出を控えることも大切です。外出先で陣痛が始まる可能性や破水する可能性がありますので、やむを得ずに遠出するときは必ずかかりつけ医に相談しましょう。

まとめ

妊娠後期の恥骨痛は、赤ちゃんによる骨盤部位の圧迫や、恥骨結合への負荷、リラキシンの分泌などが原因として考えられます。

そのため、赤ちゃんが順調に成長していて、出産が近いことを知らせてくれているようなものとしても考えられるでしょう。

対策方法としては主に、恥骨への負荷を分散させること、血行を良くして痛みを和らげることが挙げられます。

妊娠後期は妊娠から28週の8カ月頃から39週の10カ月頃を指し、36週以降は臨月と呼ばれ、いつ生まれてもおかしくない状態です。

臨月に差しかかった方やそれ以前の方も、分娩が近いときの特徴や準備などを早めにチェックしておきましょう。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。

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