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妊娠中期の頭痛|原因・対処法・注意が必要なときについても説明
2023.08.26
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
妊娠中期の頭痛はこめかみあたりがズキズキするものや、首あたりからギューっとするようなものなどが多いのではないでしょうか。「頭痛なんてよくあるもの…」と我慢してしまいがちですが、中には危険な頭痛もあります。ここでは妊娠中期の頭痛が気になる方に向けて、頭痛の特徴や原因、対処法、関係する病気や注意が必要な頭痛についても説明していきます。
妊娠中期の頭痛の特徴
妊娠中期の頭痛は、主に片頭痛と緊張性頭痛の2種類に分けられます。
片頭痛
片頭痛は脳の血管が急に拡張することにより起こる頭痛で、こめかみがズキンズキンと痛むのが特徴です。
原因には、ストレスや睡眠不足、妊婦さんだとホルモンバランスの変化も挙げられます。妊娠初期などにつわりの症状として見られやすいでしょう。
片頭痛が起こっているときは、大きな音や強い光などが刺激になり、場合によっては吐き気なども伴います。
緊張性頭痛(筋緊張型頭痛)
緊張性頭痛(筋緊張型頭痛)は、頭や首が締めつけられることによって起こる頭痛です。ギューっと締めつけられる頭痛や、倦怠感が起こります。
肩や首の筋肉の凝りなど、長時間にわたって同じ姿勢を続けていたり、目を使いすぎたりするなど、血行不良が原因です。妊娠中期や後期に多い傾向があります。
妊娠中期の頭痛の原因
妊娠中期の頭痛の原因について、詳しく説明していきます。主に、ホルモンバランスの変化や貧血、運動不足、ストレスによって頭痛が引き起こされることが多いようです。
女性ホルモンの増加
妊娠によって、女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌されます。プロゲステロンが自律神経に作用することにより、血管の拡張や収縮がうまく行われず、生理痛のときの頭痛に近い痛みが発生します。
妊娠初期から中期にかけての頭痛は、このようなホルモンバランスの変化が原因として挙げられます。
貧血
妊娠中は赤ちゃんに栄養や酸素を送るため、母体側の血が薄くなります。これにより貧血になりやすく、貧血から頭痛につながることがあります。
この貧血は鉄欠乏性貧血と呼ばれており、全身に酸素が届きにくくなります。脳に酸素が届きにくくなると、頭痛やめまいといった症状が現れます。
運動不足
運動不足や同じ姿勢を続けていることにより、肩凝りや首凝りから緊張性頭痛が起こる場合があります。
妊娠に伴って動くのがおっくうになる方も少なくありませんが、運動不足によって血行不良から頭痛が起こります。
ストレス
精神的なストレスが緊張性頭痛の原因になる場合もあります。無事に出産できるかどうか悩んだり、産んだあとの子育てを考えて不安を感じたりする妊婦さんもいると思いますが、このようなストレスによって、肩凝りや倦怠感などにもつながる場合があります。
妊娠中期の頭痛の対処法・対策
妊娠中期の頭痛の対処法について説明します。片頭痛と緊張性頭痛では対処法が異なりますので、どちらが効果のある方法かについても触れていきます。
安静
妊婦さんの場合、片頭痛でも緊張性頭痛でも、まずは横になって休むことが大切です。頭痛に限らず腹痛などでも、不調を感じたら座ったり、可能であれば横になったりして様子を見ましょう。しばらく休んで症状が治まるなら、心配しすぎる必要はないでしょう。
ツボ押し
使用しても大丈夫な薬があるとはいえ、身体に作用するとなれば赤ちゃんへの影響も気になるものです。そこで自分で手軽にできるものとして、ツボ押しがあります。気持ちいいと感じる力加減で押してみましょう。
おすすめのツボは、左右の耳の後ろのうなじの生え際にある風池(ふうち)、首の後ろ側でうなじのへこんだところで、風池よりも内側に左右対称にある天柱(てんちゅう)などがあります。また、片頭痛の方は親指と人差し指の付け根の間にある合谷(ごうこく)が押しやすくておすすめです。
他にも、頭のてっぺんの百会(ひゃくえ)、眉間の印堂(いんどう)、両眉の外側上にある頷厭(がんえん)、両目尻の太陽(たいよう)、首と肩先をつないだ中央にある肩井(けんせい)などもおすすめです。
目の休息
デスクワークでパソコンを長時間見る方や、スマートフォンの使用が長い方は、意識的に目を休ませるようにしましょう。
長時間の目の使用は緊張性頭痛の原因になります。首や肩が凝っている可能性がありますので、ストレッチやホットアイマスクで温めて、血行不良を改善しましょう。
少量のカフェイン摂取
カフェインには鎮痛作用があるため、少しだけ摂取するのも有効な手段です。また、カフェインには血管を収縮させる作用があるため、血管拡張によって起こる片頭痛には一時的な効果が期待できるでしょう。
ただし、カフェインの過剰摂取が赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があるため、大量に取らないことに注意が必要です。コーヒーなら1日1杯、多くても2杯までにしておきましょう。
水分補給
脱水症状によって頭痛が現れることも考えられます。脱水により脳の血管が拡張されて片頭痛が起こる場合があります。
また、夏なら太陽の光が強い刺激になって片頭痛が、冷房が効きすぎて身体が冷えると緊張性頭痛が起こる可能性が考えられるでしょう。
原因によって頭痛の種類を見極めなければいけませんが、どちらにせよ水分補給を欠かさないことが大切です。
貧血改善
貧血からくる頭痛には、貧血の改善から行いましょう。鉄分やビタミンCが含まれた食事を取ることが大切です。
レバーや肉類に含まれている鉄分は、貧血の改善や軽減に役立ちます。また、ビタミンCには鉄分の吸収を手助けする役割が期待できますので、果物や野菜などから摂取しましょう。
血行のケア
緊張性頭痛の場合はお風呂やマッサージ、ストレッチなどで首や肩周りを温めることが対策になります。
緊張性頭痛の原因は血行不良であるため、同じ姿勢を続けたり、冷房が効きすぎた部屋で過ごしたりするなど身体が固まったときに現れやすくなっています。ただし、片頭痛のときに血行をよくすると、逆に痛みが悪化してしまうため注意が必要です。
冷やす
片頭痛が原因のときには患部を冷やすことが大切です。片頭痛のときは頭やこめかみを保冷剤などで冷やす、冷却シートを張ることなどが有効です。
反対に、身体を動かしたり、音や光の強い刺激を受けたりすると痛みが増しますので、安静にしておきましょう。
かかりつけ医から薬の処方
どのような頭痛であっても、症状がつらくてどうしても耐えられないときは、かかりつけの医師に相談しましょう。
一般的にはアセトアミノフェン(カロナールなど)が処方されることが多いようです。漢方では呉茱萸湯(ゴシュユトウ)が、片頭痛の方だとトリプタン系薬剤(レルパックスなど)というお薬が処方される場合もあると思います。
しかし、妊娠中はお薬を使用することで赤ちゃんへのリスクがあるのも事実です。市販の薬を自己判断で使用することはせずに、医師の説明をよく聞いた上で使用を決定しましょう。
妊娠中期の頭痛と関係のある病気
続いて、妊娠中の頭痛と関係のある病気について説明します。主に妊娠高血圧症候群に関連する頭痛と関係しています。
妊娠高血圧症候群
妊娠中期以降は妊婦さんの身体が高血圧になりやすい状態になります。血圧が140/90mmHg以上となる場合を妊娠高血圧症候群と呼びます。妊娠20週以降に初めて指摘される、あるいは元々妊娠前から高血圧がある場合などがあります。症状の一つとして、頭痛が挙げられます。
食事療法や血圧管理で対処することがあります。妊娠高血圧症候群の原因は妊娠ですので、出産によって症状が治まると考えられています。
子癇(しかん)
妊娠高血圧症候群が悪化すると子癇発作によってけいれんを起こす場合もあります。目がチカチカしたり、おなかの上の方(右側)が痛んだり、吐き気がする場合もあります。
妊婦さんだけでなく、赤ちゃんにも影響する場合があるため、早急にかかりつけ医に相談しましょう。
HELLP症候群
妊娠高血圧症候群の悪化によりHELLP症候群が起こる可能性があります。これは、肝臓に負担が強くかかり、血小板が減少し、また症状の一つに激しい頭痛があり、吐き気や右上腹部痛などを伴うこともあります。
妊娠高血圧症候群によって血小板が減少する病気なので、血液が固まりにくくなることも特徴です。重度になると多臓器不全や、脳出血の可能性があり、妊婦さんと赤ちゃん両方の命に影響する危険があります。
脳出血
血圧が上昇しすぎると脳の細い血管が破れ、脳出血につながる場合があります。症状には頭痛の他に、ろれつが回らない、目がチカチカする、手足を動かしづらい、さらにしびれるなどの症状が見られます。
注意が必要な頭痛
頭痛の中でも激しい頭痛やこれまでに感じたことがないほど痛い頭痛、また手足のしびれ、けいれん、嘔吐、発熱などを伴う頭痛の場合は注意が必要です。
上述した通り、ろれつが回らない、しゃべりにくい、身体にしびれを感じる、左右どちらかに力が入らない、片方の目が見えにくいといった場合もかかりつけ医に早急に診てもらうことをおすすめします。
妊娠高血圧症候群に伴う頭痛は、片頭痛にも緊張性頭痛にも当てはまらないものです。ただの頭痛だからと放置すると危険な状態に陥っていることもありますので、注意深く体調を観察しましょう。
まとめ
妊娠中期の頭痛には、主に片頭痛と緊張性頭痛の2つがあります。どちらも対処法はありますが方法は反対に近く、間違えると痛みの悪化につながるため、見極めて対処してください。
中には貧血によるものや、妊娠高血圧症候群など、片頭痛でも緊張性頭痛でもない原因の頭痛もあります。
ろれつが回らないときや身体にしびれを感じる場合は、危険なサインかもしれませんので、早急にかかりつけ医に診てもらってくださいね。
記事監修
阿部一也先生
日本産科婦人科学会専門医
プロフィール
2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。