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妊娠中期になってから眠い...!妊婦さんが寝てばかりになる原因や対処法を説明

2023.08.01

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

眠気は妊娠初期や妊娠後期が強いと思われがちですが、妊娠中期でも何らかの理由で眠気に悩まされる方がいます。中には日中も寝過ぎてしまったり、職場では眠ることができないために不安になったりと、深刻に考えてらっしゃる方もいるかと思います。

ここでは、妊娠中期の眠気で悩む方に向けて、眠気の特徴や原因、対処法、眠気と関連の病気などについて説明します。

妊娠中期の眠気の特徴

妊娠中期はつわりが落ち着く方が多い時期なので、寝つきが良くなる方もいるでしょう。
一方、ホルモンバランスの変化や、体重の増加、血流の酸素が赤ちゃんへ運ばれやすいことから、疲労も感じやすくなり、眠気のコントロールが難しくなる時期でもあります。同時に、めまいや動悸(どうき)を感じる方もいます。

眠気の感じ方は妊婦さんそれぞれ異なり、夜たくさん寝ても食後に眠くなったり、一日中眠気を感じたりする方もいるでしょう。

眠気は、妊娠初期や妊娠後期に感じやすいイメージがありますが、妊娠中期においても起こりうるものです。

妊娠中期の眠気の原因

妊娠中期の眠気の原因には、以下のことが考えられます。

ホルモンバランスの変化

妊娠すると、プロゲステロンという黄体ホルモンの分泌が増えます。プロゲステロンには、赤ちゃんが育つ環境を整える役割や産道を通りやすくする役割もありますが、眠気も誘発する作用があります。

このプロゲステロンが分解されてできるアロプレグナノロンという物質には、強い眠気を起こす作用があることもわかっています。生理前に眠気が出るのも同様です。

妊娠5週から16週を過ぎると眠気やつわりが落ち着きますが、中には妊娠中期まで続く方もいます。この理由の一つとしてプロゲステロンの分泌が出産まで続くことが挙げられます。

貧血

妊娠中期(妊娠16週から27週)は貧血にもなりやすく、貧血によって、眠気が誘発される場合があります。

妊娠15週頃には胎盤ができますので、母親の体で血流量が増え、血液を通じて栄養や酸素が赤ちゃんに運ばれます。酸素を運ぶヘモグロビンというタンパク質が血液中にありますが、増えた血流量に対して、ヘモグロビンの産生が追いつかなくなり、結果的に貧血が起こるのです。

酸素が身体中に行き渡りにくくなるので、眠気以外にもめまいや動悸(どうき)、倦怠(けんたい)感などの症状が見られます。

体重増加による疲労

妊娠20週あたりからは胎動を感じるくらいに赤ちゃんが成長します。成長に伴ってお腹が大きくなり、体重が増えますので、体を少し動かすだけでも疲れやすく、だるさを感じやすくなります。

また、体重が増えたことで運動をするのが難しい場合もあります。運動不足によって体力が落ち、体力不足によって眠気につながることもあります。

妊娠中期の眠気の対処法・対策

続いて、妊娠中期のつらい眠気の対処法について説明します。

仮眠・少しウトウトする

眠いときは無理をせずに仮眠をとりましょう。少しウトウトするだけでもスッキリする場合があります。眠いのに無理をして動くと思わぬケガにつながったり、ストレスを感じる原因になったりします。あくまでも夜の睡眠に影響が出ない範囲で、目安としては10分から20分ほど寝てみましょう。

寝るときの体勢は仰向けだと圧迫感を伴うことがあるので、シムス位と呼ばれる体の左側を下にして横向きになる姿勢がおすすめです。

軽いストレッチ・ヨガ

医師から運動を止められていなければ、負荷が軽めのストレッチやヨガも眠気対策に効果的です。運動によって筋肉が少しでもつくと、疲労を感じにくくなります。

妊娠中期は体調が安定しやすい時期なので、できる範囲で体を動かしてみるとよいでしょう。気分のリフレッシュもでき、上のお子さんがいる方は、一緒に取り組んでみても楽しいでしょう。

ただし、やり過ぎてしまうと、逆に疲れてしまい、眠気につながる可能性もありますので、あくまで無理のない範囲が望ましいといえます。

気分転換をする

眠気があるからといって、仮眠をとることができないときもあるかと思います。

そんなときは、何かを飲んで気分転換をする、ガムやキャンディーを口にする、お手洗いに行く、顔を洗う、誰かと話す、歌うなど、気分転換になることをするとよいでしょう。

深く考えない

妊娠中の生理現象とはいえ、眠気によって「こんなに寝てていいのかな…」と考え込んでしまうかもしれません。考え過ぎるとストレスを感じて、ホルモンバランスにも影響してしまうこともあります。

妊娠中の眠気は、怠けているわけではないので、深く考えずにリラックスして過ごしましょう。

栄養を摂る

食事によって貧血対策ができます。貧血からくる眠気を何とかした場合には、以下の栄養素の摂取を心がけるとよいでしょう。

  • 鉄分
  • 葉酸
  • ビタミンB12
  • ビタミンB6

これらは血液を作るのに役立つ栄養素です。ホウレンソウには鉄分や葉酸が含まれており、レバーやカツオ、赤身肉、高野豆腐にも鉄分が含まれています。ビタミンB12やB6は肉や魚にも含まれています。

葉酸は食べ物からの摂取も可能ですが、食事で補えない場合はサプリメントの活用もよいでしょう。

夜の睡眠時間を多めにとる

もし、夜に睡眠を多くとれていない場合、夜間の睡眠時間を長くできないか工夫してみてはいかがでしょうか。

成人から50歳代までで厚生労働省から推奨されている睡眠時間は6時間半から7時間半といわれています(※1)。

人それぞれ適切な睡眠時間は異なります。夜間にどれくらい眠れば昼間に眠気を感じにくいか、また睡眠時間だけでなく質の良い睡眠をとれているかどうかなど、振り返ってみるとよいでしょう。

寝る時間と起きる時間のリズムを規則的にすることも大切です。寝る前はぬるま湯につかって、入眠しやすくするなどの工夫も睡眠の質を上げるのにおすすめです。

参考文献:(※1)健康づくりのための睡眠指針検討会報告書(平成15年3月)

周囲の理解を得ておく

妊娠中でも働いている方は、職場に報告して周囲の理解を得ておくことも大切です。妊娠中の眠気はコントロールできないため、子育ての経験がない方には誤解される可能性もあります。強い眠気を伴う場合などは、仕事を休むことも考えましょう。

職場だけでなく、近くに実家がある方も、助けてもらえるところがあれば、無理せずに相談しましょう。

妊娠中期の眠気と他の病気との関連

あまりにも強い眠気を感じたときは、何か病気が隠れているのではと不安になる方もいるかと思います。

ここでは、妊娠中期の眠気と関連のある病気や症状について説明します。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

妊娠前にはなかったのに、激しいいびきによって途中で息が止まったり、呼吸が浅くなったりするなどの症状は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群という可能性があります。

他にも、夜中に目が覚める、日中に強い眠気を感じる、起きたときに倦怠感や頭痛があるなどの症状があります。

妊娠によって体重が増えると、舌や喉に脂肪がつきやすく、気道が狭くなることが原因で閉塞性睡眠時無呼吸症候群が起こる場合があります。

日中の眠気以外では、塞性睡眠時無呼吸症候群によって交感神経が優位になると高血圧につながり、また睡眠時の低酸素状態が続くことでインスリンの作用が悪くなります。結果的に糖尿病などの病気につながるので、早めに診察を受けた方がよいでしょう。

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

睡眠時に脚がむずむずしたり、ピリピリしたりして眠れないという方もいるかもしれません。
これはレストレスレッグス症候群というものであり、脚を虫がはっているような感じや、何かでなぞられている感じ、火照ったような感じなどの不快感が現れる病気です。

原因は明らかになっていないものの、鉄不足や神経伝達物質のドパミン不足が原因として考えられています。

脚の不快感でうまく睡眠がとれなくなると、日中の眠気や生活リズムの乱れにつながるので、早めに診察を受けましょう。

うつ(鬱)

妊娠中はうつになる方がいます。何もやる気が起こらなかったり、気分が強く落ち込む状態が2週間以上にわたって続いていたりする場合は、診察を受けた方がよいでしょう。

女性は8人から12人に1人の割合でうつを経験するといわれています。妊娠中のうつでは、出産後の子育てを不安に感じたり、赤ちゃんの存在を面倒に感じてしまったりする場合があります。

また、妊娠中は大変なことがあっても当たり前と周囲からは思われがちです。このように周囲に理解されないことも苦しい原因の一つです。

重症化するとネガティブな気持ちが強くなったり、赤ちゃんに対して危険が及んだりするリスクがあります。早めに産科の主治医の先生に相談するか、心療内科や精神科の診察を受けることが大切です。

肥満や筋力低下

運動不足が続くと、筋力低下や肥満につながることが考えられます。筋力が低いと出産のときに、陣痛が弱くなり(微弱陣痛)子宮口が開くのに時間が必要になったり、肥満によって産道に脂肪がつくと赤ちゃんが出にくくなる(軟産道強靭症)などの原因になったりします。

筋力低下や脂肪がつかなければ、出産をスムーズにすることが可能なので、できる範囲で運動をしたり、生活リズムを整えておいたりすることが大切です。

まとめ

妊娠中期の眠気について、特徴や原因、対処法、眠気と関連のある病気や症状について説明しました。

安定期と呼ばれる妊娠中期でも、眠気を感じることは珍しくありません。原因としては、ホルモンバランスの変化、貧血、体重の増加が考えられます。

仮眠がとれるなら仮眠し、適切な栄養バランスを取ったり、規則的な生活リズムで過ごしたりすることが大切です。

中には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、うつなど、早期に診察を受けた方が良い病気が隠れている場合もあります。

母親が元気に過ごすことで赤ちゃんも元気に育ちます。できるだけ無理をせずに、健康に過ごすことを心がけてくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。