【妊娠中のお酒】飲酒・アルコールの影響は?注意したい飲食物なども紹介
【妊娠初期】妊婦の便秘|いきんでも大丈夫?解消方法や注意点などを解説
2023.05.18
記事監修
吉田悠人先生
日本産科婦人科学会/日本産科婦人科内視鏡学会/日本生殖医学会に所属
「妊娠してから便秘がちになった…」
「あまりいきんじゃうと赤ちゃんに影響があるのかな…」
便秘は妊娠の初期から後期まで起こるもので、悩まされるお母さんが多い症状の一つです。
妊娠前の便秘とは違って、赤ちゃんへの影響も気になるものですよね。
ここでは妊娠初期の便秘について、特徴や原因、対処法、注意点、予防について説明します。
妊娠初期の便秘の特徴・発生時期
まずは妊娠初期の便秘の特徴と発生時期について説明します。
妊娠中の便秘は妊娠4~5週に現れやすい
妊娠中の便秘は妊娠4週~5週に現れやすいものです。
妊娠週数の数え方は、最終月経があった日を0週0日として、0~13週6日を妊娠初期、14~27週6日を妊娠中期、28週以降を妊娠後期と数えます。
便秘は妊娠初期だけでなく中期・後期にも起こる
妊娠中は血液中のプロゲステロン(黄体ホルモン)が妊娠前と比較して大幅に増加しています。プロゲステロンは子宮が大きくなるために子宮の平滑筋(へいかつきん)という筋肉を緩める働きがありますが、同時に腸の平滑筋も緩めてしまうため、腸が便をお尻側に押し出すぜん動運動によって動きが弱くなります。よって、妊娠中は全期間にわたり、便秘になる可能性があるのです。
それに加え、妊娠初期はつわりによる脱水で、妊娠後期は大きな子宮による腸の圧迫で、便がますます出にくくなることがあります。
いきんでも赤ちゃんが生まれる心配はしなくてよい
妊娠初期や中期で正常な経過をたどっている妊婦さんであれば、いきんで赤ちゃんが生まれたり、流産や早産になったりする心配はしなくてよいでしょう。
ただし、いきみは腹圧がかかってしまう動作ではあるため、切迫早産の方や妊娠後期の方の場合は強くいきむことや、長くいきむことは避けた方がよいでしょう。
妊娠初期に起こる便秘の原因
では、妊娠初期の便秘はどのようなことが理由で起こるものなのでしょうか。
ここではホルモンの影響や水分不足、食事量、運動との関係について説明します。
ホルモン分泌の影響
妊娠に伴って分泌が増えるホルモンにプロゲステロンやエストロゲン(卵胞ホルモン)があります。
先述のプロゲステロンは、黄体ホルモンとも呼ばれ、体が妊娠しやすい環境を整えてくれる女性ホルモンですが、分泌が多くなると胃腸のぜん動運動の低下につながります。
ちなみにプロゲステロンの分泌量は排卵後から生理前にも増えます。生理前に便秘がちになることと、同じ仕組みで妊娠中の便秘が起こるのです。
水分が不足している
つわりの影響で水やお茶を飲んでも「まずい」と感じて吐いてしまうことがあります。また、吐きづわりの方は、嘔吐(おうと)によって脱水状態に近くなってしまう方もいるほどです。
このように何らかの理由で水分不足だと、便に水が含まれにくくなって固くなってしまい、便秘がちになってしまうことがあります。
食べる量が少ない
そもそも食事量が少ないために便秘になっている場合もあります。
水分不足と同じように、食事量もつわりの影響を受けるものです。
つわりによって、妊娠前よりも食欲が低下した方や食の好みが変わって食べられるものが少なくなった方は、食事量が便秘の原因となっているかもしれません。
運動不足
運動不足だと腸への刺激が少なくなり、便秘がちになることがあります。
妊娠してからは運動することが難しくなったり、周囲の方が力仕事などをサポートしてくれたりと運動量が妊娠前よりも少なくなります。
また、つわりの症状がつらくて動けなくなる方も運動不足による便秘が起こりうるでしょう。
便秘でつらいときの対処法・注意点
続いて、便秘でつらいときにはどのような対処法や注意点があるのでしょうか。
ここでは食事や運動、医師へ相談するタイミングなどについて説明します。
食事を見直す
便秘改善のためには、食物繊維や発酵食品の摂取を心がけましょう。どちらも腸内環境の改善に役立ちます。
食物繊維には、善玉菌を増やしたり腸内環境を整えたりする水溶性食物繊維と、腸を刺激して活発にさせる不溶性食物繊維があります。
水溶性食物繊維は、海藻類や野菜(切り干し大根・トマト・ねぎなど)、果物(バナナ・プルーンなど)、こんにゃくなどに含まれています。
一方、不溶性食物繊維が含まれている食品は、豆類(大豆・おからなど)、野菜(ごぼう・かんぴょうなど)、キノコ類(しいたけ・きくらげなど)などです。
発酵食品には善玉菌が含まれており、具体的にはヨーグルトや納豆などが挙げられます。これらも定期的に食べるようにするとよいでしょう。
軽い運動をする
散歩やストレッチ、マタニティーヨガなど、負荷が穏やかで取り組みやすい運動をしてみましょう。
ただし、おなかが苦しいときは無理をして行う必要はありません。また、運動してすぐに便秘解消に効果があるとは限らないので、生活習慣として長い期間取り組むことが大切です。
妊娠初期の方で「運動すると流産につながるのでは…」と気になる方もいますが、妊娠12週までの流産は運動との関連よりも原因として染色体異常が多いことがわかっています。
不安な時期に運動を強制するものではありませんが、ご自身にできる範囲で軽い運動を意識してみてくださいね。
マッサージをする
便秘改善のために手軽にできることとして、ツボをマッサージする方法があります。
合谷(ごうこく)というツボの刺激はリラックス効果に加えて、便秘改善が期待できます。
手の甲にあって、人差し指と親指の付け根が合流する場所あたり、もしくは人差し指と親指の中間あたりが合谷といわれる部位です。
手のひらを上に向けて、手首の関節の小指側に神門(しんもん)というツボもあります。
ツボは体の左右対称にあるので、両方をもみほぐすように刺激しましょう。
また、看護師さんに相談する必要はありますが、おなかや腰を温めて腸の動きを活発にさせる温罨法(おんあんぽう)という方法もあります。
薬を飲みたいときは医師の診察を受ける
妊娠中は自己判断で市販薬を服用することは避けましょう。
便秘が改善されず苦しい状態が続くときは、かかりつけの医師や近くの病院などで妊娠していることを伝えて、処方されたお薬を飲むとよいでしょう。
便秘のお薬は自己判断で飲むと逆に下痢になることがあります。
また、浣腸(かんちょう)は子宮収縮を引き起こす可能性があり、流産や早産につながる可能性がありますので、注意が必要です。
薬を使用するときは医師と相談し、妊娠中でも使える薬の用法用量を守って使用しましょう。
強い腹痛や出血を伴うときは医師に相談
強い腹痛を伴う場合は、便秘とは別の病気が関係している可能性があります。
出血がある場合、いきみ過ぎて痔(ぢ)になっていることもありますが、場合によっては切迫流産や切迫早産、その他妊娠中の異常の可能性もゼロではありません。
普段と違う腹痛だと感じる場合や出血を伴う場合は、我慢せずに診察を受けることが大切です。
便秘予防のためにできること
最後に、便秘の予防のためにできることを説明します。
排便習慣や生活習慣などから見直していきましょう。
朝に排便する習慣をつける
起床後は、朝食や水分を摂ることで腸が動き出し、排便しやすくなります。
朝は余裕をもって起きて、ごはんを食べるようにしましょう。
また、朝以外の時間帯でも便意を感じたときは我慢せずにお手洗いに行くことが大切です。
我慢すると便から水分が抜けて排出しにくくなり、便意を感じにくくなったり、悪玉菌が増えたりする原因になります。
食事の取り方に気をつけ、軽い運動を習慣化する
水分や食物繊維の摂取、軽い運動を心がけましょう。
水分を摂ることで便が柔らかくなり、また、食物繊維を摂ることで腸内環境が整ったり、腸が活発に動いたりしてくれます。食物繊維は水溶性のものと、不溶性のものをバランス良く食べるとよいでしょう。
また、軽い運動をすることで腸に刺激が届き、活発に動くようになります。ストレッチや散歩など、無理のない範囲から始めましょう。
改善が見られないときはお薬を処方してもらう
生活習慣を改善しても便秘がつらいときは、我慢せずに医師に相談することが大切です。
便秘改善のために使われるお薬は、飲み薬や坐剤(ざやく)などがあります。妊娠している方の場合は、非刺激性下剤の飲み薬である酸化マグネシウム系のものが処方されるでしょう。酸化マグネシウム系は、腸を刺激するものではなく、腹痛なども出にくいタイプのお薬です。
どうしても便秘がつらい方は、自己判断で市販薬を買わず、処方されるものを服用しましょう。
まとめ
妊娠初期の便秘について、特徴や原因、対処法、注意点などを説明しました。
便秘は妊娠中のどの時期にも起こりうる症状です。
便秘以外の原因が隠れていることもあるため、痛みが強いときや出血を伴うときは我慢せずに診察を受けましょう。
妊娠の早い段階から、便秘になりにくい食生活やできる範囲での運動習慣を身につけて、少しでも楽に過ごしてくださいね。
記事監修
吉田悠人先生
日本産科婦人科学会/日本産科婦人科内視鏡学会/日本生殖医学会に所属
プロフィール
東北大学医学部卒業。大学病院、複数の総合病院勤務を経て、日本産科婦人科学会専門医として、2023年3月現在、アルテミスウイメンズホスピタルに勤務。分娩から内視鏡手術、高度不妊治療まで幅広く診療に従事する他、月経トラブル、帯下異常、性感染症に悩む女性の診療や、避妊指導なども行っている。