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妊娠初期に生理痛?出血と下腹部痛の原因&注意したい症状を解説

2023.04.24

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

妊娠初期に出血や生理痛のような痛みがあると不安に感じるかもしれません。そこで今回は、妊娠初期に生じる出血や痛みの原因を解説するとともに、痛みを感じたときの対処法をご紹介します。加えて、注意したい痛みや症状も解説しますので、受診を迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

妊娠初期における出血と生理の違い

妊娠が成立して胎嚢(たいのう)が見えてくる時期には、出血するケースがしばしばあり、妊娠しているのか、それとも生理なのか、見分けるのが難しいものです。ここでは妊娠初期における出血と生理の見分け方をまとめました。

①血の色と出血の仕方

妊娠初期に見られる出血と生理の出血は、出血の症状が異なります。妊娠初期症状における出血は、「おりものに血が混ざったピンク色だった」「真っ赤な鮮血だった」「時間が経ったような茶色だった」など、人それぞれ出血の色が異なります。生理の始まりかけの出血と見分けるのが難しいかもしれませんが、出血量は少量にとどまるケースが多く見られるようです。

また、生理の出血では、血の塊が見られることがありますが、妊娠初期の出血では、血の塊が出ることはほとんどないといわれています。

②血の量と出血の期間

妊娠初期の出血と生理の出血には、出血量と出血期間にも違いがあります。生理の出血は平均3~7日ですが、妊娠初期の出血が見られる期間は平均1~2日、長くても3~4日で止まることが多く、生理の出血よりも短めの傾向です。もともと生理が早く終わる人の場合、生理と妊娠初期の出血を見分けるのが難しいかもしれませんが、妊娠初期の出血の期間が生理より長引くことは多くないといわれています。

もし妊娠が分かっている状態で、出血する期間が生理と同じか、もしくはそれ以上長引いているようなら、早めに病院で検査を受けてください。

③痛み方の違い

妊娠初期に感じる下腹部痛は、「おなかの奥がチクチク痛む」と表現される方が多いですが、「腰のあたりがズンと重く痛む」と感じるケースもあるようです。こうした症状は、生理痛とよく似ているため、痛みの感覚だけで見分けるのは難しいかもしれません。

一方、痛みの強さでいえば、妊娠初期は生理痛のようにひどく痛むことはありません。もし生理痛と同じか、それ以上の強い痛みを下腹部に感じるようなら、すぐに治療が必要な状態です。可能な限り早く婦人科の診察を受けてください。

④そのほかの妊娠初期症状

妊娠初期には、下腹部の痛みや出血以外にも、以下のような生理とよく似た症状が現れます。

  • 腰の痛み
  • 胸の張り
  • 食欲不振または増加
  • めまいや立ちくらみ
  • 眠気や体のだるさ
  • 嗅覚が敏感になる
  • イライラや不安

体調不良が妊娠によるものか生理によるものか見分けるのが難しいときは、基礎体温の数値をヒントにしてみましょう。通常、生理のある月経期は低温期が2週間ほど続きます。一方、妊娠初期は基礎体温が変化せず、高温期が続くのが特徴です。加えて、妊娠初期のおりものは量や状態、色などが変化することもあります。

妊娠初期の出血と下腹部痛の原因

妊娠初期は、おなかの赤ちゃんにとってもデリケートな時期のため、出血や痛みがあると不安になるかもしれません。ここでは、なぜ妊娠初期に出血と痛みがあるのか、その原因を解説します。

①受精卵が子宮内膜を傷つける着床出血

受精卵は卵管を通過し、子宮内膜に入って着床します。その際、受精卵が子宮内膜を傷つけ出血することがあると考えられており、これを着床出血と呼びます。

ただし、着床出血は必ず起こるものではなく、あくまでその可能性が高いと考えられているだけで、医学的に根拠が示されていません。妊娠初期に生理痛のような痛みを感じた日を調べると、着床したであろう日が多いため、着床時に子宮内膜を傷つけるケースがあるのではないかと考えられています。

②絨毛(じゅうもう)膜下血腫

絨毛膜下血腫とは、胎嚢の周りに起こる内出血です。妊娠が成立すると、子宮の中には徐々に赤ちゃんの袋である胎嚢が見えてきますが、絨毛膜下血腫ができる位置やその大きさによっては、出血を起こすことがあります。

③子宮が大きくなっている

妊娠していないときの子宮は、鶏卵と同じくらいの大きさです。妊娠すると、子宮は数週間で一回りほど大きくなります。この子宮が大きくなり、子宮の筋肉が引き伸ばされる過程で生理痛に似た下腹部痛を感じることがあるようです。

子宮が大きくなると、子宮を左右から支えている「円靭帯(えんじんたい)」が引っ張られることにより、おなか全体も引っ張られ、人によっては下腹部や腰、脚の付け根などに「ズンとした重い痛み」を感じることがあるようです。

いずれにしても、妊娠初期の下腹部痛は、受精卵が着床して妊娠が成立し、赤ちゃんを育てるために子宮が大きくなることが主な原因といえるでしょう。

④ホルモン分泌による便秘or下痢

妊娠するとプロゲステロンの分泌が活発になり、食欲のアップや乳腺の発達など、赤ちゃんが育つために必要な土台が作られる一方、腸の動きが鈍くなることもあります。腸の動きが鈍くなると、便やガスが腸内にとどまりやすいため、便秘になったり、おなかに痛みを感じたりする妊婦さんも多いようです。

また、妊娠初期のつわりで偏食になると、便がうまく形成できず、下痢になるケースもあります。

要注意!こんな原因で痛むことも?

妊娠初期の生理痛に似た症状は、たいてい一時的なものといわれています。しかし、痛み方や原因によっては、流産や母体の命の危険につながるケースもあります。こちらでは、注意しておきたい妊娠初期の症状をチェックしておきましょう。

①子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮の壁(筋層)にできる良性の腫瘍です。妊娠初期は分泌されるホルモンのバランスが変化するため、ホルモンの影響を受けやすい子宮筋腫が大きくなり、痛みを感じることがあります。痛みの特徴としては、妊娠初期に感じることが多い「チクチクした痛み」「なんとなく重だるい痛み」よりも強い傾向にあるようです。

子宮筋腫は、すぐに治療が必要な症状ではありませんが、筋腫のできた場所や大きさによっては、妊娠が経過している間に影響を及ぼしたり、早産につながったりすることも考えられます。検査で子宮筋腫が見られるようなら、かかりつけの婦人科医に相談して、今後のケアと対処法を決めていきましょう。

②感染症

性感染症は妊娠中に注意しておきたい疾患の一つです。性感染症にかかると強い子宮収縮が起こり、流産につながる可能性があるだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの命にも影響が及ぶ可能性もあります。

またクラミジア感染症は、切迫早産や前期破水の原因になるだけでなく、新生児に結膜炎を引き起こすこともあるようです。そのほか梅毒や性器ヘルペスなどの性感染症や、トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症、風疹、リステリア症などの感染症は、胎児の先天性異常や死亡につながる恐れがあります。

感染症の場合は、腹痛と一緒に発熱することもあるため、妊娠初期にこうした症状が見られた場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
特に妊娠初期は感染症に注意してください。性交渉はコンドームを使用し、いつも清潔にしておくよう心がけておきましょう。また、食事や動物との接触などにも注意が必要です。感染症対策に関する詳しい情報は、厚生労働省のWebサイトなども参照してください。

③異所性妊娠

異所性妊娠とは、本来であれば子宮に着床すべき受精卵が、卵管や卵巣、子宮頸管(しきゅうけいかん)など、子宮内膜以外の場所に着床してしまう症状です。以前は「子宮外妊娠」とも呼ばれていました。

異所性妊娠は出血や激しい痛みを伴うこともありますが、破裂していないうちは、正常な妊娠と変わらない程度の痛みにとどまるか、痛みが生じないことも多くあるようです。しかし、破裂すると、強い腹痛と同時に母体の生命を脅かす危険を伴う可能性もあります。

異所性妊娠の場合、胎児の生存は不可能ですが、破裂前に治療を行えば、母体の命が危ぶまれることは回避できるでしょう。正常な妊娠をしているかどうかを確認するためにも、妊娠が確認できたら、早めに婦人科で検査しておきましょう。

妊娠初期の腹痛対処法

妊娠初期に生理痛のような下腹部痛や出血などをした場合の4つの対処法をご紹介します。

①安静にする

妊娠初期に下腹部痛を感じたときは、椅子に座る、横になるなど、楽な姿勢で安静にしておきましょう。受診時に分かりやすく症状を伝えるためにも、心を落ち着かせて痛みの程度や頻度、どのようなときに痛むのかを確認してみてください。

痛みが治まった後もすぐに仕事や作業を再開せず、様子を観察しましょう。痛みがある日は、なるべくゆっくり過ごします。激しい運動なども控えてください。急ぎでない仕事や作業は翌日に取り組み、妊娠初期は安静第一を心がけましょう。

職場で痛みが生じたときも、軽作業や座り仕事に変えてもらう、あるいは症状が落ち着くまで自宅で安静にさせてもらうなど、医師とも相談の上で柔軟に対応してもらうよう、あらかじめお願いしておくとよいでしょう。

加えて、腹痛や出血があるときは、性交渉は控え安静にしておきましょう。痛みや出血がなく、切迫早産や前置胎盤などの異常が指摘されていなければ性交渉をしても構いませんが、感染症予防の観点からコンドームを使用することをおすすめします。

②体を温める

体が冷えると、さまざまな痛みや不調を誘発するかもしれないので、妊娠が分かったら体を冷やさないように意識しましょう。寒い季節は、紅茶やココアなどを飲むと体が温まります。ただし、妊娠中のカフェインは胎児の発育に影響を及ぼすこともあるため、過剰摂取にならないように注意してください。ノンカフェインの飲み物を用意しておくとよいでしょう。
また、鉄分の吸収を妨げるタンニンは、貧血症状を誘発するケースもあるため、紅茶の飲み過ぎにも注意してください。

暑い季節も、冷たい飲み物や冷房、シャワーだけで済ますなど、体温を下げる行動を取りやすいので注意してください。そのほか、カーディガンを羽織る、ブランケットをかける、室温を少し高めに設定しておくなど、季節にかかわらず、妊娠前より少し温かくしておく意識も大切です。

③水溶性食物繊維の摂取を意識する

妊娠中は、腸の動きが鈍くなり、腸にたまったガスや便が腹痛を引き起こすこともあります。痛みのないときに適度な運動で体を温めたり、血流を促したりするほか、水溶性食物繊維の摂取を意識しておくことも大切です。

水溶性食物繊維を多く含む食材として代表的なのは、大麦、オートミール、納豆、ごぼう、切り干し大根などです。つわりの症状が出てくるケースもあるため、食べやすい食材や食品の中から水溶性食物繊維が豊富なものを選んでみてください。

ただし、水溶性食物は摂り過ぎると下痢になりやすく、不溶性食物繊維は摂り過ぎると便秘になりやすい特徴があります。適度に摂取できる食事メニューで、おなかのトラブルを回避しましょう。

④下痢やつわりのときは水分補給を意識する

妊娠初期につわりで食事量が減り、下痢で水分を多く失いやすい状態のときは、脱水症状にも注意が必要です。少量の水をこまめに飲むようにしてください。
下痢とつわりに悩まされているときは、おかゆやうどん、バナナ、リンゴ、豆腐や納豆などの大豆食品、鶏ムネ肉や白身魚、卵やチーズなど、消化の良い食べ物がおすすめです。

つわりはいつか必ず終わるものなので、しばらくはジャンクフードやお菓子、アイスクリームなど、「これなら食べられる」というものでも構いません。無理せず食べやすいものを選ぶようにしてください。

食材は細かく刻み、ゆでる・煮るなどして、軟らかく調理すれば、胃腸に優しい食事を作ることができます。調理がつらいときは、レンジ調理のみ作れる食品やレトルト食品を活用してみてください。

痛みと出血が続くときは病院へ

妊娠初期の腹痛は、生理痛よりも軽いケースが多いため、病院で診てもらうことをためらってしまうかもしれません。万が一のことも考え、すぐに受診した方がよい症状をご紹介します。

①お医者さんに相談すべき症状

妊娠初期に生理痛のような痛みを感じたとき、お医者さんに相談すべきかどうか迷っている方は、以下の症状が出ていないかをチェックしてみましょう。一つでも当てはまるなら、かかりつけ医へ相談してください。

  • 出血を伴う痛みがある
  • 何日も出血が続く、あるいは生理の2日目のような量の出血がある
  • 1時間のうちに何度も痛みが生じる
  • 痛みが強くなってきている
  • 生理痛よりも長い期間痛みがある
  • 刺すような強い痛み(生理痛と同等かそれ以上)
  • 冷や汗が出るような痛み
  • 発熱している

②自己判断で薬を服用しない

妊娠初期は下腹部痛以外にも、腰痛や頭痛といった痛みのトラブルを経験することが少なくありません。痛みがあるからといって安易に薬を服用してしまうと、胎児に影響を及ぼす可能性もあります。

特に4~12週の妊娠初期は、赤ちゃんの臓器が作られる大切な時期です。自己判断で薬を服用せず、必ずかかりつけ医に相談した上で、処方された薬の用法用量を守って服用しましょう。

②自己判断で薬を服用しない

妊娠初期は下腹部痛以外にも、腰痛や頭痛といった痛みのトラブルを経験することが少なくありません。痛みがあるからといって安易に薬を服用してしまうと、胎児に影響を及ぼす可能性もあります。

特に4~12週の妊娠初期は、赤ちゃんの臓器が作られる大切な時期です。自己判断で薬を服用せず、必ずかかりつけ医に相談した上で、処方された薬の用法用量を守って服用しましょう。

③受診の際に伝えるべきポイント

婦人科を受診した際は、医師に以下の項目を説明できると、スムーズに原因が判明できるので、適切な治療を受けやすくなります。

  • いつごろから痛みがあるか
  • 痛みはどのくらい続くか
  • どこがどのように痛むか
  • 出血の有無と血の量、色
  • おりものの状態

妊娠初期に、痛みや出血を含む体調の変化があれば、記録しておくと良いでしょう。スマホのアプリを使えば、日ごとに基礎体温や体調を記録できます。使いやすそうなものを前もって選んでおくことで、記録し忘れもなく、自分の体調管理もしやすくなるでしょう。

まとめ

妊娠初期の症状は、生理痛とよく似ている症状があるため判断が難しいかもしれません。痛みを感じる場合は、まず安静にして、痛みの程度や頻度を確認しておきましょう。痛みが続いたり、出血を伴ったりする場合は、医師に相談してください。心身ともにデリケートな妊娠初期は、無理をせず、ゆとりを持って毎日を過ごしましょう。

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

プロフィール

平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。

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