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すべて不安な初めての妊娠。「普通の生活」が私を支えてくれた

2023.03.16

この人に聞きました

杉田 えりこ(仮名) さん

30代・会社員2歳の女の子

和歌山県出身。ウェブデザイナーとして7年勤務している会社で、現在はほぼフルリモートで時短勤務中。最近ハマっていることは、子供と一緒に手抜き料理を作ること。

妊娠すると、生活にも身体にもさまざまな変化が訪れます。
子どもに会えるのを楽しみに思う一方で、身体の不調や妊娠中の生活に、何もかも不安に感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、初めての妊娠で2度の「切迫流産」と「切迫早産」を経験された杉田さんに、当時の過ごし方や今だから思うことなどを伺いました。


「え、私が?」
最初に切迫流産だと知ったとき

当時は不妊治療のため、フルタイムで週4日の勤務をされていた杉田さん。念願の第一子を授かり、いわゆる「9週の壁」を超えて一安心。そこで身近な人に妊娠を伝えたところ、その直後に1度目の「切迫流産」と診断されました。

杉田さん9週を超えるまでは、ほとんど誰にも妊娠のことは言ってなくて。親にも言ってなかったです。やっと9週を超えたから、親とか仲の良い友達とかに言ったんです。その直後、10週目に出血しちゃって…。それが初めての切迫でしたね。

朝に出血し、すぐにご夫婦で病院へ。赤ちゃんと子宮の健康状態に問題はなかったそうですが、それでも切迫流産であることには変わりありません。自宅安静を伝えられ、その時に初めて「自分の身に降りかかることなんだ」と実感したといいます。

杉田さん常に「流産」っていうのは頭にあったんですけど、「切迫流産」っていう「今にも危ない!」みたいなのは全然(知らなかった)。なるんだったら流産だろうって思い込んでました。

杉田さんが妊娠されていたのは、2020年。自宅安静を伝えられたころ、世間では新型コロナウイルスの第1波を迎えていました。

杉田さん診断された2週間後ぐらいに、最初の緊急事態宣言が発令されたんです。だから周りも自宅待機していて、いたたまれない感じはしなかったですね。通勤はNG程度の安静を伝えられていたので、座って仕事してるぐらいなら大丈夫。ただ切迫流産とは関係なく、つわりがしんどいときは休憩を取っていました。

赤ちゃんにも身体にも重大な異常は見当たらなかったため、妊娠前と変わらない働き方をされていた杉田さん。経過観察ではあったものの、やはり不安は抱えていたようです。

杉田さん最初の切迫流産の時はやっぱり色々調べました。「流産 安静 どの程度」みたいな(笑)。でも人によって違うみたいですしね…。

原因もわからず、ひたすら安静に過ごした妊娠生活

「ステイホーム」とも相まって安静に過ごし、順調な経過を辿っていました。ところが、最初の切迫流産の直後、15週ごろに再び出血してしまいます。2度目の切迫流産です。

杉田さん初期の出血は結構あるみたいなんですけど、2回目ともなると、「そういう体質なんだ」って思って。私出血しちゃうのね、みたいな。出血の感じは変わらなかったので、同じ切迫流産なんだろうなとは思いました。でも2回目は落ち着いてたので、仕事をひと段落させてから1人でタクシーで病院に行って、夫にも言わなかったです(笑)。
ただ、仮に⼊院とかになってしまった時のことがあるんで、チームにはこのタイミングで切迫流産のことは伏せて妊娠報告しました。

自宅での出血ということで、冷静に対処。1週間の経過観察を伝えられましたが、幸い重症には至らず、自宅安静で事なきを得たといいます。

杉田さん思い出した!26週ぐらいのときにもう1回出血してたんです。病院に行くほどでもないかなって、なかったことにしてました(笑)。次の健診で報告したんですけど、そんなに長いこと(出血が)続かなかったです。

そこから35週くらいまでは割と落ち着いていましたね。ただ定期検診では、ちょっと胎盤が下の方かもしれないねって言われてたんです。徐々に赤ちゃんが大きくなって見えてくるみたいなんですけど、それが出血の原因なのかなって気にはなっていました。結局は分からずじまいでしたが…

2度の切迫流産を無事に乗り越えたことには、コロナ禍で自然と安静な生活を送っていたこともプラスに働いたのでしょうか。
「この先3回、4回続いていくのかもしれないなぁ」という不安を抱えながら、安定期と呼ばれる時期に入っていきました。

切迫早産まで…不安を乗り越えられたのは
「普通の生活」のおかげだった

複数回の出血がありながらも、安定期に入ってからは平穏な生活に。仕事のペースを変えずに過ごしていた杉田さんですが、34週に入ったころから産休に入られたそうです。いよいよ出産も近づいてきた、というタイミングの定期検診で、なんと次は「切迫早産」と診断されてしまいます。

杉田さん産休に入った本当に直後ですね。まだもらった花束がいきいきしてた時でした(笑)。検診で子宮頚管が短くなってきているって言われて。そのときも自宅安静で過ごしてくださいっていう感じでしたね。実際生まれたのは39週でした。破水して、自然に生まれてきました。

明るく話してくださった杉田さんですが、それでもずっと不安は抱えたままだったそう。妊娠中のメンタルについて伺いました。

杉田さん妊娠が始まってからずっと不安で、その不安を夫にぶつけていました。ただ、仕事を変わらず続けられたというのが、私にはすごくありがたくて。ただでさえ不安いっぱいな妊娠生活の中で、仕事もなかったらネガティブになっていっただろうなぁって、めっちゃ思います。

ペース的に変わらず続けられたっていうのもありますし、集中することがあるとこっちに(お腹に)意識がいかなくなるんで、思い悩まなくて済んで良かったかなと思います。

(仕事を)長期で休むってなったら、多分めっちゃ不安になると思うんですよ。職場の人に迷惑かけてとかそういうのが…。それをそんなに意識しなくて済んだのは、恵まれた環境だったなと思います。

「いつも通り」。環境が変わらないということが、不安で落ち込んでしまいそうな気持ちを救っていたんですね。そんな中、切迫流産や切迫早産を経験し、少し心境が変わったといいます。

杉田さん1回目の切迫流産は、実母には後で報告しました。その時に「その子を守れるのはあなたしかいないのよ」みたいなことを言われて。それまでにも同じようなことを言われたことはあったんですけど、その時は、病気じゃないし、そこまで意識しすぎてもなって思ってたんです。母親の戯言みたいな感じ(笑)。

でもやっぱり、切迫があったことによって、その言葉が響いてきたというか。改めて、命を預かることの重みを意識できたかなとは思いましたね。

「不安だ」という気持ちを、認めてあげること

元気いっぱいに生まれてきてくれた娘さんは、現在2歳。今だからこそわかる、当時の心境をお話してくださいました。

杉田さん当時は原因がわからなかったし、病院の先生も何もはっきり言ってくれないし。大丈夫とも言われず、子供は元気としか言われなくて、常に気にはなっていました。

でも後から思うと、どんな妊娠でも不安は不安。初めてのことだし、何をするにも不安だったなあっていうのはあります。ただ仮に二人目ができたとしたら、そこまで不安にならないかなっていうのはちょっと思いますね。

無責任に「大丈夫だよ」と言われても…みたいなところはあるのでしょうか。

杉田さんそうかも!大丈夫って言われたとしても、心配は心配かもしれないですね。何を根拠に?って思うし、むしろ不安かも。

他人に対して、むしろ身近であればあるほど、切迫流産など妊娠中の出来事はなかなか話しにくいのではないでしょうか。
身の回りに同じ経験をした人はいるかもしれませんが、なかなか「どんな感じで過ごしてた?」とは聞けないもの。
「こんな感じで過ごしてたけど、私も不安だったよ」という杉田さんのお話は、今まさに悩まれている方にそっと寄り添っているように感じました。

文 Fuka Tsujimoto
写真 Junya Tanaka

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