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「口腔発達不全症について」

2024.04.03

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記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

歯科と言えば、歯のことばかりを診ていると思っていますか?
いえいえ、歯はもちろんですが、歯肉、舌、唇、お口の中の粘膜、それを動かす口や顔、喉の筋肉、そしてその骨などトータルで診ています。
そこで最近の子ども達に見られる心配な傾向があります。

「お口がぽかん」としているお顔で唇がしっかり閉じれていなかったり、しっかり噛むことが出来ず、舌の力が弱くて上手く食べ物を嚥下出来ていなかったり、滑舌が悪くて舌足らずな話し方になったり。
こうした「口腔機能発達不全症」と思われるお子様が増えていて、その指導も歯科医院では行っています。

「噛みしめの影響について」のコラムで、妊娠中の大人の方に対してお話した「低位舌」がお子様に多く問題になっていることは少し触れましたね。

舌が上顎の裏にタッチ出来ていない、舌の力が弱いことはいろいろな影響を及ぼします。
例えば「タチツテト」の発音が舌が上顎にあたらず、上と下の前歯の隙間に舌をあてて(英語のthの発音のような感じ)発音するので、気づきやすいかと思います。
中には舌小帯という舌を安定させる筋のようなものがあるのですが、それが短くて動きが悪い場合もあるので歯科医師に相談してみましょう。

発音だけでなく「さあ、離乳食です!いろんな食べもの知っていこう!」のところでもお話したように、食べ物を食べて喉から胃に送り込むためにはしっかり噛んで食べ物の塊を舌で喉の奥まで送りこむことが重要です。

舌の力が弱いということは、食べ物を飲み込むよう流し込む癖がついてしまいます。
これが大人や高齢者では、誤嚥性肺炎を引き起こす大きな原因でもありますね。
子どもの頃から上手に摂食嚥下の仕方を身に着けておくことが大事です。

私達は食べ物を見てその硬さや柔らかさ、熱さや冷たさ等、無意識に判断して口に入れて味わい消化していくわけです。

離乳食スタートの頃、手づかみで食べ物をぐちゃぐちゃにするのは赤ちゃんが食べ物がどんなものなのか眼で見るだけでなく触れて五感をフルに使って学習している時なんですね。
だからその時期は「汚い!」と怒ったりせず、思いっきりやらせてあげて「ふわふわで柔らかいね」とか「熱かったね」とか「美味しいね」とか声かけしてあげながら、食事を楽しい
時間にしてあげて下さいね。

それから、舌の内側からの力と外側の唇の力とがバランス良く保たれているから、歯が
U字型に綺麗に並んで生えているのです。
でも口をぽかんと開けている癖があったり、舌で前歯を強く押しているようなら、歯が移動してしまって歯並びに影響を与えます。

逆に歯の矯正をしても後戻りしてしまいます。
また唇を閉じてないと口呼吸になっていることも多く、お口が乾燥しやすく、上の前歯の
むし歯ができやすくなります。
唇を閉じてお鼻で呼吸をする癖もつけてあげましょう。

これが大人になった時まで影響しますのでやはり小さい頃から身につけさせてあげて下さいね。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。

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