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【産後の腰痛】原因・対策・注意が必要な場合について説明

2023.12.27

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記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

「産後の腰痛がひどくて起き上がれない」
「どんなストレッチや体操が良いの?」

出産によって体の状態が変化して、育児や家事で休んでいられないのに腰痛に悩まされている、というお母さんは多くおられます。

ここでは産後の腰痛について、その特徴や原因、対策、注意が必要な時について説明します。

産後の腰痛の特徴

産後の腰痛は、出産後にさまざまな身体所見として知られるマイナートラブルの一つとして知られています。

体力の低下や姿勢の変化、肩こりなどと同じように現れるものですが、出産に伴う体の変化と育児による物理的な負荷から、腰痛は特に見られやすいものです。

具体的にいつまで産後の腰痛が続くのかは個人差にもよるところですが、3カ月以内の腰痛がきつかったと感じる方が多く、半年や1年近く続く方もおられます。

産褥期とは

出産から6週間~8週間ほどの期間を産褥期(さんじょくき)といいます。産褥期は徐々に体力が回復する期間ですが、育児や家事に追われて安静にできなかった場合には骨盤のゆがみや腰痛などが長引くケースがあります。

完全に体力が回復したと感じるには産褥期の期間だけでは足りませんが、産褥期中の過ごし方は特に気をつけたいものです。

産後の腰痛の原因

では、どのような原因で産後の腰痛が起こるのでしょうか。
ここではホルモンバランスの変化や筋力、姿勢、他の婦人科系の疾患による腰痛について、着目します。

ホルモンバランス・骨盤の変化

出産に伴って骨盤を広げる作用を持つリラキシンというホルモンが分泌されます。 リラキシンは赤ちゃんが産道を通りやすくするために分泌されるホルモンですが、その影響により産後も骨盤の結合組織が緩んだ状態となります。

骨盤の結合組織が緩んだ状態になると姿勢が悪くなりやすく、腰や背中の筋肉に負担がかかるため、腰痛が引き起こされることが多いでしょう。

腹筋の筋力低下

姿勢を保つために必要な腹筋ですが、妊娠に伴って大きくなった子宮によって引き伸ばされてしまい、筋力の低下が起こるといわれています。

これにより、お腹の前面にある腹直筋が伸ばされた状態である「腹直筋離開 」になると、姿勢を維持することが難しくなり、腰への負担が増えることによって産後に腰痛を感じる原因となるのです。

育児による姿勢の変化

授乳や抱っこ、おむつ替えなど、産後は育児によって姿勢の変化が起こります。いずれも腰に負担がかかりやすい姿勢になることが多いですが、育児の最中は気にする余裕がないかもしれません。

例えば、前屈みの姿勢は骨盤や腰椎、腰の筋肉に負担がかかります。産後に筋力が落ちた状態で育児をしなければいけないこともあり、このような理由からも腰痛を感じる方が多いでしょう。

婦人科系の疾患

先述の原因以外であれば、子宮筋腫や子宮内膜症など、何らかの婦人科系の疾患が関連している可能性があります。

子宮筋腫は良性の腫瘍が子宮の筋層にできる疾患ですが、筋腫ができる場所や大きさなどによっては周辺の神経や臓器を圧迫することがあり、腰痛を感じる場合があります。

子宮内膜症は、子宮内膜かそれに似た組織が本来あるべき場所ではないところで発育する疾患です。強い月経痛が代表的な症状ですが、月経時以外のときでも月経のときのような痛みが起こることがあります。子宮内膜症では、下腹部痛や腰痛を伴います。

産後の腰痛の対策

続いて、どのようなことが痛みの対策となるのか、ここではストレッチなどのセルフケア、姿勢を整えること、病院や接骨院に通うことなどについて説明します。

体操やストレッチをする

産褥期におすすめの体操やストレッチをすることで腰痛の対策ができます。仰向けに寝て両手は体に沿わせ、膝を立てて肛門を締めたり緩めたりすることで骨盤と肛門の運動をすることが可能です。

また、同じ体勢で息を吸いながら腰を上げて息を吐きながら腰を下げたり、腰をねじったりすることで腰の運動にもなるでしょう。お腹周りのシェイプアップにもつながります。

腰だけでなく、お尻の筋肉をほぐすストレッチもおすすめです。仰向けに寝て、お腹と太ももを近づけるように膝を抱えるとお尻のストレッチになります。

これらのストレッチは、筋肉の痛みを和らげる効果や、血行を良くする効果などが期待できるため、数分ほどの隙間時間に寝ながらでも取り組めるでしょう。

ヨガやピラティスが気になるお母さんもおられるかと思いますが、かかりつけ医に相談して、産後の1カ月~2カ月以降など問題がない時期から始めるとよいでしょう。

座り方に気をつける

授乳中の座り方にも腰痛対策につながるポイントがあります。座るときはできれば正座、足を伸ばして座る、椅子に座ることなどを意識しましょう。

椅子に座るときは深く座って、両足の裏を地面につけ、胸を張って肩と頭を少し後ろに引くと、腰に負担がかかりにくくなります。

腰に負担がかかりやすいため、あぐらやお姉さん座り、膝を立てて座ること、お山座り(=体育座り) 、横座り、椅子に座るときは猫背の姿勢や、足を組むことなどは避けましょう。1日あたりの座る時間が長い場合、座り方を工夫すれば腰痛の軽減も期待できます。

病院や整骨院などに行く

妊娠や出産でお世話になった病院に相談すると、日常の過ごし方について相談に乗ってくれたり、ストレッチや体操などの具体的な方法や骨盤ベルトの購入について教えてもらえたりするでしょう。

整骨院などに行く場合は、産後の方に対応しているかどうかを、事前に電話などで確認してから行くとよいでしょう。

整骨院で行われている産後の骨盤矯正は絶対にしなければならないものではありませんが、マッサージを受けることで痛みが軽減されるかもしれません。

具体的にどのような腰痛があるのか、他に痛みなどはあるのか、これらも電話の時点で聞いておくと、より期待に近い施術を受けられます。

安静にする・コルセットやベルトをする

腰痛に限らず痛み全般的にいえることですが、まずは安静にすることが対処法になります。産後の腰痛の場合は冷やさずに、温めておくと痛みが和らぎやすいでしょう。

安静にするときや普段過ごしているときには、骨盤ベルトやコルセットを着用することも腰痛の対策になるでしょう。ベルトといっても出産後から使えるタイプやシェイプアップを目的としたタイプ、素材の違いなど、さまざまなタイプがあります。

骨盤ベルトは、帝王切開の方とそうでない場合とで着用が可能になる時期が異なるなど、個人の状態によって使用に注意が必要な場合もあるため、気になる場合は一度かかりつけ医に相談することをおすすめします。

コルセットなどは姿勢をサポートしてくれるアイテムですが、長期間にわたって着用すると筋力低下につながるケースもあります。使用方法についてもご自身で確認しておきましょう。

注意が必要な腰痛

産後の腰痛自体は珍しいことではありませんが、中には無視できない原因が潜んでいる場合もあります。

ここでは仙腸関節性腰痛や骨粗鬆症、内臓疾患による腰痛について説明します。

仙腸関節障害

仙腸関節障害は、骨盤の左右それぞれの上部分を指す腸骨と、骨盤の中央上部分にある骨の仙骨、これらの間にある仙腸関節に痛みが発生して現れる腰痛です。

産後は恥骨や骨盤が緩んでおり、仙腸関節を止める筋力も低下しています。育児によって腰や骨盤への負荷がかかると、仙腸関節に痛みが現れるケースがあります。

仙腸関節障害の痛みは、片側の腰や臀部(おしり)、下肢に現れることが多く、足の付け根にあたる鼠径部 に痛みを感じる方もおられます。

痛みは体を反る姿勢や、前屈のときに痛みを感じることが多いでしょう。これらの姿勢を避けて、重たい荷物を持つのは避けるなど、腰への負担に配慮して過ごすことが推奨されます。

治療は安静にしておくことや、痛み止めの使用、骨盤ベルトの使用などが挙げられます。
これらの方法で改善しない場合は局所麻酔の注射や、稀なケースでは手術を行うことがあるでしょう。

骨粗鬆症

閉経後にエストロゲンの減少が原因で骨粗鬆症になる方がおられるように、産後のエストロゲンの減少によっても骨粗鬆症になる方がおられます。

産後の骨粗鬆症は妊娠授乳関連骨粗鬆症 と呼ばれており、授乳によるカルシウムの減少も骨粗鬆症の要因になると考えられています。

症状の特徴としては、背骨の椎体が平らに圧迫骨折することです。閉経後の骨粗鬆症より発見が難しく、妊娠授乳関連骨粗鬆症はMRI検査で発見されることがあります。起き上がれないほどの痛みや、長期間に渡って腰痛が続く場合は注意が必要といえるでしょう。

産後に生理が再開してエストロゲンの量が戻れば骨密度も回復し始めます。それまでの数カ月は腰痛に注意して過ごすことが大切です。

内臓疾患が原因の腰痛

中には、出産とは関連のない腰痛が原因となっている場合もあります。腰痛を伴う可能性がある内臓系疾患の例では、胆石・膵臓炎・十二指腸潰瘍・尿路結石・腎結石 などが挙げられます。

腰痛の痛みがひどいときや長引くとき、腹痛やみぞおちの痛み、血尿など腰痛以外の症状がある場合は当てはまる可能性がありますので、一度かかりつけ医に相談することをおすすめします。

まとめ

産後の腰痛の原因は、出産に伴う骨盤の変化や産後の育児による姿勢の変化などが原因となっていることが多くなっています。

対策にはストレッチや体操、ベルト・コルセットなどの着用、病院や整骨院に相談することなどが挙げられますが、ただの腰痛と思ってると骨粗鬆症や何らかの疾患が原因となってる場合があります。

隙間時間のケアも有効ですが、あまりにも症状が気になる場合はかかりつけの先生に相談してくださいね。

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

プロフィール

平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。

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