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産後の骨盤ケア・矯正 のためにできることを紹介

2023.11.29

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記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

「骨盤ケアってどうしたらいいの?」
「産後いつ頃から始める人が多いんだろう?」

無事に出産ができても、次は骨盤や体型といった産後のケアが気になるという方は多いのではないでしょうか。骨盤ケアは必ずしも整骨院や治療院に行かなければいけないというわけではありません。自分自身でできるケア方法もあります。

ここでは産後の骨盤ケアを知りたい方に向けて、骨盤ケアが必要な理由や骨盤ケアの方法、骨盤ケア以外で体型を戻すためにできることなどを説明します。

産後に骨盤ケアが必要な理由

まずは産後の骨盤ケアの大切さがどういうものなのか、妊娠中の骨盤の状態によって起こるトラブル、ケアを始める時期について説明します。

妊娠時に骨盤の靱帯は緩む

妊娠中はリラキシンというホルモンの効果によって骨盤の靱帯が緩みます。 これは出産の準備として必要な作用であり、赤ちゃんが産道を通るために欠かせない身体の変化なので、骨盤の形そのものがゆがむわけではありません。出産が近づくとリラキシンの効果によって恥骨結合が緩みがちになり、出産後は骨盤底筋もダメージを受けた状態になります。

恥骨結合とは歩行時の衝撃や骨盤の動きのサポートをしている部分で、おへその真下で左右の恥骨が合わさっている部分を指します。 また、骨盤底筋とは骨盤の中の臓器や恥骨、座骨などの骨を支え、姿勢、排泄を正常に保つために必要な筋肉群のことです。

恥骨結合も骨盤底筋も出産時だけでなく日常生活をするうえで大切な部位であるため、適切なケアをしておくと日常的に楽に過ごせます。

骨盤の不調が起こすトラブル

骨盤の不調によって、以下のような不調が起こることがあります。
・激しい生理痛
・腰痛
・便秘
・睡眠の質の低下
・肌荒れ

また体型に関してはO脚やX脚、太りやすくなる、下腹が出やすくなる、お尻や太ももが大きくなるなどの症状として現れることがあります。

骨盤ケアを始める時期

一般的には産後半年までの骨盤ケアが大切といわれており、実際にこの期間にケアを始める方も多い傾向にあるようです。

産後はリラキシンの効果もなくなり、靱帯の緩みや骨盤底筋のダメージは徐々に産前の状態に戻っていくと考えられています。ただし、筋肉の緩みや反り腰、育児や家事などによる負荷の度合いによっては、完全に元通りにならない場合もあります。

骨盤ケアを産後すぐに取りかかるのは負担にもなるので、産後1カ月後から3カ月頃に取りかかるのも目安の一つといえるでしょう。

後悔しないためにも骨盤ケアを早期に始める方が良いですが、産後6カ月から12カ月、もしくは産後1年を経過してから始める方もいます。

始めるまでの期間が長いと日頃のクセが治るまで時間がかかるものの、ケアを始めるのに遅すぎるということはありません。

産後の骨盤ケアの方法

では、どのような方法で骨盤のケアができるのでしょうか。

ここでは、ストレッチやエクササイズ、姿勢のケアができるサポートグッズ、整骨院や治療院に通うことについて説明します。

骨盤ケアのためのストレッチ・エクササイズをする

骨盤底筋を使うエクササイズなどで、骨盤のダメージやゆがみをケアすることが可能です。

・お腹いっぱい息を吸ってゆっくり吐き出し、吐けなくなった状態で5秒キープする
・仰向けに寝て膝を立てたら腰を上げて(お尻に力を入れる)、5秒かけて下ろす
・仰向けで膝を立てたら、膝を左右にゆっくり倒す
・四つ這いでお尻(骨盤底筋)に力を入れ、お腹の凹みを感じる、ゆっくり息を吐く

以上のようなストレッチやエクササイズは、いずれも数分あればできるものです。取り組みやすいものから始めてみるとよいでしょう。

骨盤底筋を鍛えることによって、尿もれや腰痛予防などにも良い効果があります。
また、下腹を凹ませることやヒップアップ、下半身痩せなど、骨盤底筋のトレーニングが体型のケアにもつながります。

骨盤ケアや姿勢のサポートができるグッズを使う

骨盤ベルトや妊婦帯などのアイテムが骨盤のサポートに役立つでしょう。骨盤ベルトは姿勢をサポートするのに骨盤を正しい位置に固定したり、位置を補正したりするときに役立ちます。

また、妊婦帯を着用することで腰への負担を軽減してくれたり、体のバランスを保ちやすくなったりと、骨盤をサポートしてくれます。

下着選びは体型の戻りや体調に合うものを選ぶことが大切です。産後1カ月は体重が減って体型が戻り始め、3カ月から6カ月は妊娠前の状態に戻る回復期、6カ月から12カ月は移行期と呼ばれ体型や体調の戻りに個人差がみられるようになります。

ガードルやショーツといった補正下着などにこだわるなら、産後6カ月までを目安に考えるとよいでしょう。

骨盤に限らず、産後のバストケアができるブラなどもあります。体型で他に気になる部分がある方は、部位ごとでサポートアイテムをチェックするとよいでしょう。

整骨院・整体・治療院などに通う

骨盤ケアと聞いて最初に浮かびやすいのが、整骨院・接骨院・整体・治療院などに通うことではないでしょうか。

先に説明したように、骨盤の形はそのものがゆがむわけではありません。産後必ず整骨院などに通う必要はありませんが、腰痛などの症状がある方は施術を受けることで身体が楽になるかもしれません。

産後2カ月目 などの早い段階からの通院をすすめているところが多く、通院頻度や回数によっては2週間に1回の頻度で5回通い や週1回でまずは1カ月 など、場所によってさまざまです。

費用の目安としては、1回あたり4,000円から6,000円など が多いでしょう。
整骨院などでは、打撲やねんざなどケアを急ぐではない場合、基本的には保険適用外となります。 ただし、育児のための動作で肩や腕の痛みが生じた場合は保険適用となるケースもあるようです。

「どの治療院に行けば良いかわからない」という方は、施術者がどのような経緯で医学などを学んできたのかを知ると治療院を選ぶ一つの目安になるかと思います。

マッサージは「あん摩マッサージ指圧師」、整骨院や接骨院は「柔道整復師」という国家資格が必要です。一方で東洋医学に基づく整体、西洋医学に基づくカイロプラクティックは、資格の取得が不要であり、手技や経験によって体の不調を和らげる施術が行なわれます。

また、施術者の経歴や口コミも参考になるでしょう。複数のスタッフではなく、施術者が一人で行っている方が高い技術を持っていると考えられます。施術者が頻繁に変わらない場合、体の状態や変化への理解をしてもらいやすくなると考えられるのが理由です。

骨盤ケア以外で体型を戻すためにできること

骨盤ケアが気になる方の中には「骨盤ケアによって体型を戻したい!」とお考えの方もいるのではないでしょうか。

ここでは、骨盤ケア以外で体型を戻すためにできることを紹介します。

運動や筋トレをする

体型を戻したい場合は、ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、日常生活においてできる範囲の運動習慣を続けていくことが大切です。

ウォーキングは体全体をバランスよく使え、脂肪燃焼にもよい有酸素運動です。ストレッチやヨガは体の柔軟性を高めるためにいいですが、運動に慣れていない方は軽めのストレッチや準備運動でもじんわり汗をかけるでしょう。どちらも育児中の気分転換になるでしょう。

ただし、出産による体力の消耗を生じる 産褥期(さんじょくき)と呼ばれる産後6週間から8週間までは体の回復を優先する方がよい期間です。産後1カ月以降を目安に体を動かし、少しずつ無理のない範囲で取り入れてみるとよいでしょう。

栄養バランスの取れた食事をする

体型を戻すためには栄養バランスの良い食事をすることも大切です。産後のお母さんは母乳を作るために栄養のある食事を取る必要があり、母乳がうまく作れないと胸がしぼむ要因にもなってしまいます。鉄・カルシウム・ビタミンC・葉酸など を意識的に摂取することもよいでしょう。

以下の食材から摂取が可能です。
・鉄…牛の赤身肉・レバー・カツオなど
・カルシウム…乳製品・煮干し・しらすなど
・ビタミンC…イチゴ・レモン・ピーマン・キャベツなど
・葉酸…ブロッコリー・アスパラガス・枝豆など

他にもビタミンやミネラルなど体の機能維持に欠かせない栄養素と、適度なカロリーを摂ることも大切です。

全ての栄養素を食事だけでまかなえない方は、健康食品で補うことも検討するとよいでしょう。

また、身体に良いものを食べる一方で、糖分が多いお菓子や脂っこいものなど、カロリーが高く栄養が偏った食べ物を多く摂取しないよう気をつけましょう。 授乳中の飲酒は母乳にアルコールが移行し、赤ちゃんの発育にも悪影響を与えます。

バストやデコルテなど部分ごとでケアをする

デコルテや大胸筋などといった部分ごとで、産後の体をケアすることも良い方法の一つです。出産後に胸がしぼんだり、垂れたりすることが気になる場合、リンパ管が多く流れているデコルテ周辺のマッサージがよいでしょう。リンパ液の流れをスムーズにすることによって老廃物を流すと、バストのケアにつながります。

バストマッサージでは、脇肉をしっかりとつかんで前に引っ張って、胸前で1分間キープを片方ずつする方法もあります。

筋トレではバストを支えている大胸筋を鍛えることでバストアップなどの効果が期待できるでしょう。膝をついた状態で腕立て伏せをするなど、負荷が控えめなトレーニング方法から取り組むのがおすすめです。

まとめ

赤ちゃんをお迎えするにあたって、骨盤周りにダメージが加わることは仕方のないことです。出産後の骨盤は、ある程度は自然に戻っていくものですが、骨盤の状態を放っておくと家事や育児などによってダメージが残ってしまうこともあります。

対処法には、骨盤底筋の回復を促すセルフケアやサポートアイテム、整骨院や治療院などで施術を受けることなど、いくつかの方法が挙げられます。

また、産後2カ月頃までは産褥期です。骨盤ケアや体型維持も気になるかと思いますが、栄養のある食事を心がけ、できるだけ休んでおくことも大切です。

産後の体型の変化が気になっている方は、産前の体型にできるだけ近づけるよう無理のない範囲で骨盤のケアをしてみてくださいね。

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

プロフィール

平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。

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