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「産後のむくみがすごい...」原因・対策・足のケアなどを説明

2023.11.14

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

多くのお母さんが経験する産後のむくみ。

出産前と後では身体が急激に変化するため、さまざまな不調が起こってもおかしくありません。
しかし、わかってはいても症状がつらく、もしかしたら何か別の病気が隠れているのではと不安になる方もいるのではないでしょうか。

ここでは産後のむくみについて知りたい方へ、その原因や対策、見分け方、注意が必要なときなどについて説明します。

産後のむくみの特徴

まずは、産後のむくみ(浮腫:ふしゅ)の特徴から確認していきましょう。
他のお母さんはどのような感じだったのか、むくみの期間やピークはいつ頃か、産後太りとの見分け方などについて説明します。

他のお母さんの声

「足がむくんで靴下が入らない」
「全身のむくみだったのが今は顔が特に気になる」
「指がむくんで結婚指輪が小さく感じる」

産後のむくみで悩まされたお母さんからはこのような声があります。

足のむくみだけでなく顔のむくみがひどい 方もいて、寝起きに顔がパンパンになっていたり、ムーンフェイスのようになったりする方もおられます。

期間・ピーク

産後のむくみが起こる期間は、産後1カ月以内が多いようです。ピークは産後の2日後が多く、10日前後でむくみが引く場合が多いでしょう。1カ月以内にむくみが治まる方が多いですが、長い場合2カ月から3カ月間続く方もいるようです。

産後太りとの見分け方・チェック方法

むくんでいるのか産後太りなのかわからない方は、以下のような方法でチェックしてみるとよいでしょう。

該当する場合はむくみの可能性があります。
・足の甲が見えない(ゾウの足のようになっている)
・アキレス腱がはっきりと見えない
・スネを指で10秒間押した後、5秒ほど指の跡が消えない
・指輪が入らないくらいに指が大きくなっている

産後のむくみの原因

産後のむくみには多くの原因が考えられます。
ここでは、ホルモンバランスや水分量の変化、出産時に骨盤周辺のリンパが傷つくこと、睡眠不足や運動不足に触れていきます。

ホルモンバランスの変化

産後は、妊娠によって分泌されていた女性ホルモンが急に減ってしまうため、その影響でむくみが起こる場合があります。

ホルモンの変化としては、妊娠中にエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌され、出産後は母乳に必要なプロラクチンが分泌することで、エストロゲンやプロゲステロンの作用が抑制されるようになります。

ホルモンバランスによって血液の量や血流に変化が起こるため、老廃物を流すことができなくなったり 、水分量の調節が難しくなったり して、むくみにつながりやすくなるのです。

水分量の変化

出産後は羊水が体外に排出されるため、身体が水分をため込む方向に働きます。水分量を保つために身体がむくみやすくなり、足や顔などに水分がたまってしまうのです。

前述の通り、水分はホルモンバランスによる影響も受けやすいため、むくみが起こりやすくなります。

また、帝王切開の方は点滴を受ける量が多く、安静にしている時間が長いことからむくみやすい傾向にあります。

骨盤内のリンパの損傷

分娩時、赤ちゃんは産道を通るときに骨盤周辺のリンパを圧迫しながら降りてきます。分娩時の赤ちゃんの頭の大きさは、直径(大横径)約10cm程度、頭囲が平均30cm 以上 といわれており、リンパへのダメージが少なくないでしょう。

リンパ管が損傷すると身体の巡りに影響し、リンパによる余分な水分やタンパク質の吸収ができなくなったり、老廃物を流せなくなったりするため、むくみが起こりやすくなると考えられます。

また、お産のときに分娩時間が長い場合や赤ちゃんの頭が大きい場合には、リンパがより損傷しやすくなると考えられます。

睡眠不足

おむつ替えや授乳、夜泣きなど、数時間おきに赤ちゃんのお世話があるため、寝不足のお母さんが多いかと思います。

長時間にわたって同じ体勢になることが多いと、血流や水分など身体の巡りが滞ってむくみやすくなります。

運動不足

産後は、運動不足になってしまうお母さんが多くおられます。運動不足によって代謝が低下すると、血流が悪くなってむくみやすくなるでしょう。

ただし、出産後、6週間から8週間は身体が元に戻ろうとする産褥期 と呼ばれ、身体を休める期間であるため、安静にする期間になります。

産後1カ月に動きすぎると免疫力が低下し、貧血や悪露がひどくなる場合もあります。産褥期も身体が回復に向かう時期で、子宮が元の大きさに戻ろうとする時期です。むくみ以外にイライラや疲労感、産後うつなどの症状が起こることもありますので、できる範囲の家事などをしつつも、無理しないことが基本です。

産後のむくみの対処法・対策

続いて、どのようなことがむくみの対策や対処法になるのでしょうか。
ここでは、クッションや着圧ソックスなどのサポートアイテムを使う方法から、マッサージやストレッチ、またカリウム摂取や温かい水を飲むことなど食事に関することまでを説明します。

足の下にクッションを使う

横になって休むことができる瞬間は足の下やふくらはぎ辺りにクッションや座布団を使いましょう。

あまり長く休むことは難しいかもしれませんが、足の位置を高くしておくことで足のむくみが解消されやすくなります。足のむくみが特に気になる方におすすめの方法です。

マッサージする

マッサージをすることによって老廃物が排出されやすくなるため、むくみの解消につながります。

足のマッサージでは、足首から膝にかけて押し上げるようにふくらはぎをマッサージするとよいでしょう。

むくみ解消の効果は徐々に現れますので、できれば毎日行うことをおすすめします。無理をせずに、ちょっとした隙間時間などに行ってみてください。

着圧ソックスをはく

マッサージをする時間がない方や、日常の動作をしながらできることを取り入れたい方は着圧ソックスがよいでしょう。

昼用と夜用があり、家事や育児をしているときも寝ているときもむくみのケアが可能です。足首のサイズや圧迫感の違い、指先が出ているタイプなど、自分に合った選び方ができます。

ただし、あまりにも圧迫感が強いものや長時間の着用は血行障害につながる場合があります。
逆効果となってしまうこともあるため、使用方法には注意しましょう。

ヨガ・ストレッチ・軽い運動をする

適度に運動を取り入れることもむくみのケアに有効です。少しまとまった時間がある方であれば、ヨガやウォーキングなどの軽い運動がおすすめです。むくみケアだけでなく気分転換やリラックスなど、メンタル的にもよい効果があるでしょう。

産後1カ月以降からは外出がしやすくなる方が多いので、抱っこひもやベビーカーで赤ちゃんと一緒に散歩するのもおすすめです。

時間がない方は隙間時間や家事をしながらストレッチを取り入れるのがよいでしょう。背伸びをするだけでふくらはぎや足首を使うことができます。軽く伸脚をして股関節や太ももなどを意識的にストレッチすることもおすすめです。

顔周辺のむくみは、ほうれい線の辺りからこめかみに向かって中指と薬指を使ってなぞるとよいでしょう。顔の場合はあまり力を入れすぎないように注意が必要です。

塩分を控えてカリウムを摂る

育児をしている状態で自分の食事にまで気を配るのは簡単なことではありませんが、塩分量の多い食事は控えるようにしましょう。

人の身体は体内の塩分濃度を一定に保とうとするため、塩分量に伴って水分もため込もうとしてしまい、結果的にむくみにつながることが考えられます。

インスタント食品・ファストフード・お菓子・スイーツ、意外なものだとお酢やドレッシングなども塩分が多いため、食べすぎには注意です。

一方で、カリウムには塩分を排出する作用があり、バナナ・さつまいも・スイカ・アボカド・ほうれん草などに多く含まれています。食べやすいものから摂取を心がけるとよいでしょう。

足湯

足湯は血行をよくする最適な方法です。産褥期で湯船に浸かれない方は、足だけでも温かいお湯でほぐすとよいでしょう。
足で滞った血流を心臓に送り出す効果が期待でき、気持ち的にもリフレッシュができます。

実際に足湯をするときは、洗面器や耐熱性のバケツなどに40℃から42℃くらいのお湯を用意して、15分から20分ほど足を浸けるとよいでしょう。

可能であればふくらはぎも、難しければくるぶしぐらいまででも大丈夫です。お湯にアロマオイルも垂らし、香りも楽しむこともできます。

産後のむくみで注意が必要なとき

最後に、産後のむくみを起こす病気について説明します。
産後1カ月くらいで落ち着くことが多いむくみですが、治らない 場合には別の病気が隠れている可能性もありますので、かかりつけの産婦人科に相談しておいた方が安心でしょう。

あまり知られていない病気ですが、周産期心筋症は妊娠や出産をきっかけに心機能が低下し、心不全を発症するので、注意が必要です。

主に注意が必要な徴候は心不全症状ですが、身体の各部位に水がたまってむくみが起こります。
他には、息切れ・倦怠感・咳・体重増加などを伴うこともあるでしょう。
むくみの特徴としては足だけなど一部ではなく、全身に見られる点です。

毎年50人〜70人の方に発症することから頻度は高くありませんが、命に関わることもあるため、注意が必要な疾患です。

また、妊娠後期にむくみがひどかった場合は産後の数日で妊娠高血圧症候群と診断されることもあります。合併症には脳出血やけいれん(子癇発作)などもあり、命の危険が及ぶこともあるため、注意が必要です。

産後は、むくみ以外に頭痛・倦怠感・貧血・冷えなどを感じる方もおられますが、授乳中の方は赤ちゃんに影響する場合があるため、お薬の使用を控えましょう。基本的にはお薬や漢方などを使用しない方法でむくみのケアを行うことが大切です。

どうしても改善しない症状がある場合はかかりつけ医に相談して、処方されたお薬を使用しましょう。

まとめ

産後のむくみは、ホルモンバランスの変化や睡眠不足、運動不足など、産後では避けられないことが原因となって起こりやすくなるものです。

産後のむくみの多くは1カ月以内に治っていくものですが、それまではできる範囲で対処法を取り入れてみてください。

中には周産期心筋症のように注意が必要な病気と関連している場合もあります。産後のむくみがあまりにも長引く場合や心配に感じる場合はかかりつけの先生に相談してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。