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「やばい、生まれる!」第二子の出産は突然だった。貴重な体験と育児から実感したこと

2023.11.01

この人に聞きました

松井 雄介(仮名) さん

20代・会社員2歳の女の子、生後5日の男の子

京都府在住。児童福祉の分野で資格を生かしながら働く会社員。夫婦共働きで、最近第二子が生まれたばかり。最近のハマリゴトは、たくさん歩けるようになった長女と近所を散歩すること。

昔から子どもが大好きで、職業も児童福祉の分野を選んだという松井さん。
2020年に結婚し、2021年には第一子である長女さんをもうけました。
インタビュー時には「最近第二子が誕生しました」とおっしゃっていたのですが、聞けば5日前に生まれたばかり!
しかも、出産の際にはなかなかインパクトのある経験をされたそうで……。
子どもとかかわる職業人としての立場から経験したご自身の育児の話、そして出産にまつわる貴重な体験をお話しいただきました。


夫婦そろって子どもが大好き。
「子どもは2人以上ほしいね」と話していた

お話をうかがったのは、9月も下旬にさしかかった頃。長く続いた暑さがようやく和らぎを見せ始めていました。
「最近たくさん歩けるようになったんですよ」と、長女さんと手を繋いで姿を見せてくれた松井さん。ご本人は、転職前の充電期間中というタイミングでした。

松井さん前に勤めていた職場が、親会社の方針転換のあおりを受けてなくなることになってしまったんです。思いがけないことにビックリしましたが、幸い転職先はすぐ見つかって今は有給休暇の消化中。
偶然にも第二子の出産のタイミングと重なり、家族でゆっくり過ごせるし、長女ともたくさん遊べているし結果オーライという感じです。

松井さん、以前は障害のある子や発達に特性のある子など、支援を必要とする就学児童が利用する放課後デイサービス施設にお勤めでした。新しい職場でも引き続き資格を生かして、児童発達支援に携わるそうです。

松井さん幼稚園で働く妻とは学生時代からの付き合いです。夫婦ともに子どもが大好きで、お互い保育・児童福祉系のスキルを生かしながら働いています。

子どもに関する職業に就くほどの子ども好きで、以前からご夫婦で「子どもは2人以上ほしいね」と話していたのだとか。
となると、自身のお子さんが誕生した際には、さぞ喜びが大きかっただろうと思いきや「それが……実感がなかなか湧かなかったんです」とのこと。どうしてでしょうか?

「ああ、この子が自分の子だ」
個性を感じて実感がじわじわと

松井さん、他のご家庭の子どもを預かるのではなく自分自身の子どもを育てる、という感覚が不思議だったと振り返ります。

松井さん生まれてきてくれたことはすごく嬉しかったです、もちろん!
ただ長女が生まれてしばらく、接しながら仕事の延長線上のような感覚が抜けなかったというか……。私の場合は少し特殊なケースだと思うんですが、日頃からずっと子ども達とかかわっているので、職場にいる存在が自宅にもという状況に不思議な感覚を覚えていました。
他の職種のお父さんやお母さんに比べると、ミルクの準備やおむつのお世話など、保育のスキルはかなり持っているはずなんですけどね(笑)。

「自分の子どもなんだ」とようやく実感が湧いたのは、長女が意思を感じさせる声を出すようになった頃です。言葉は話せなくても一人の個人なんだって伝わってきたときに「この子が自分の子どもだ。ああ、父親になったんだなあ」って嬉しさがじわじわと形になりました。

お話を聞いていると、どうやら保育のスキルがありすぎるがゆえに“赤ちゃんをお世話していて困ること”や“新鮮な出来事”に遭遇する隙がなかったようです。だからこそ長女さんの個性を受け取ったときに、感じるものがあったのでしょうね。
そんな松井さんが、育児で心がけていることとは?

松井さん子育てで大事にしているのは、気持ちでかかわること。そして、威厳を示すよりもフレンドリーな存在でいたいと考えています。
子どもといえども、当然ながら個性があり感情をもつ一人の人間です。保護者が上の立場からものを言うと選択肢を狭めてしまうかもしれないと思っていて。日頃から子ども本人の本音、意思を引き出すような会話を心がけています。

松井さんご夫婦の心がけに、本人のはつらつとした性格も相まって、長女さんは素直に意思表示ができる明るい子に育っているそう。
ご夫婦の間では、いつも子育ての話題が途切れることがないようです。

松井さん最近は育児の話ばっかり過ぎるかな? と思わなくもないですが、子どもを育てるっていうのはそのくらい心を傾ける必要があるよね、と。
今は下の子も生まれましたし、むしろ子ども中心の日々はここからさらに濃密になっていくんでしょうね。

松井さんは優しい笑顔を浮かべつつ、「まあ、自分の趣味の時間も大事にしたいので、それは子どもが寝ている間にちゃっかり楽しむんですけど」と照れたように続けました。

心の準備をする間もなく突然の出産。
自分で赤ん坊を取り上げるなんて!?

さて、最近新たな家族である長男さんを迎えたばかりだという松井さん。
第二子出産時のエピソードを尋ねると、「奥さんが急遽自宅で分娩し、私が赤ちゃんを取り上げました」と衝撃の答えが返ってきました。

松井さん出産予定日が偶然にも妊婦健診の日だったんですが、妻には陣痛もなく、病院で「子宮口が2cmしか開いていないから出産はまだ先かな。いったん自宅に戻っていてくださいね」と言われました。
夫婦で帰宅してから、私は同居している祖母の通院に付き添うため30分ほど外出。すると途中で奥さんからスマートフォンに連絡があり、「破水した!」とSOSが入ったんです。
ビックリして急いで帰宅し、119番で救急車を要請しました。

しかし救急車の到着を待つことなく、あれよあれよという間に出産のタイミングが。松井さんご自身が赤ちゃんを取り上げることになったそうです。

松井さん家に戻って横になっている奥さんの様子をうかがっていると、少しして「やばい、生まれる!」と。
ほんとうに、その言葉のすぐ後に“ドゥルンッ”と生まれてきたんです。
生々しい表現ですが、ありのままを表すとそんな感じでした。
幸い赤ん坊は元気に泣き声をあげてくれたし、奥さんも意識がハッキリしていたので、とにかく安心したのを覚えています。すぐにタオルを取りに行って赤ん坊の体を包み、そのまま救急車が到着するまで待機しました。

心の準備をする間もなく、思いがけないかたちで自ら赤ちゃんを取り上げることになった松井さん。出産直前まで「予定日より遅くなるかもね」と話していたそうなので、奥さんもさぞかしビックリされたことでしょう。

松井さんSOSの連絡が入ってから驚きっぱなしだったんですが、出産のタイミングが急に訪れた時と、赤ん坊を取り上げた時は「ウワーッ」と恐怖心でいっぱいになりました。でも怖がっている場合ではなかったし、何より奥さんが不安だろうと、エイヤッと腹をくくって行動するしかなかったです。
長女のことは祖母と弟が見てくれていたので助かりました。

救急車が到着して病院へ運ばれた後、奥さんは急な出産による貧血の症状が残り、母子ともに3日間入院することになりました。

松井さんあとで病院の記録を見たら、出産にかかった時間は「30分」と記されていました。数字だけ見ると超安産っぽいですが、思ってもいなかった事態に面食らいましたよ。
今は妻も長男も無事に退院しています。

もともと家事が得意で、結婚当初から料理や掃除といった家事を担っているという松井さん。奥さん退院後は、体調のことを考えて鉄分多めの食事を用意するようにしているのだとか。

自分の経験はレアケースかもしれない。
それでも伝えておきたいこと

赤ちゃんや子どもと近い暮らしを送り、長女さんの出産も経験していた松井さん。それでも第二子出産時の経験を経て、改めて「出産って何があるか分からない」と痛感したそうです。

松井さんこれから妊娠・出産を控えている方たちには、出産前後の期間は、母親だけでなく父親も心身ともに健康を心がけておくようにとお伝えしたいです。
特に男性の方。女性にしかできない出産を万全にサポートするには、時間も気持ちも出産に焦点を絞って余裕を作っておくことが大事だと思います。私自身、つい予定を詰め込みがちなのですが、第二子の出産当日は動ける状況にしていて本当によかった。
我が家のケースはかなりレアだろうと思いますが、事の大小に関係なく、すぐに動けるコンディションでいることが大事です。

貴重な経験に基づいたアドバイス、かなり納得感があります。最後に松井さんに、これからの子育てについて聞いてみました。

松井さん長男を我が家に迎えてまだ数日ですが、沐浴を嫌がったり寝付きが悪かったり、すでに長女の時とは違う反応に新鮮さを感じています。
長女は「私に似た性格だな」と感じることが多いのですが、長男も私に似るのか? あるいは妻に似るのか? ということも楽しみですね。

一つ、すごく気を付けているのは、すでに自我が芽生えた長女と、まだ生理的な欲求だけで過ごしている長男を「きょうだいだから」とひとくくりにしないこと。
子どもを一人の人間として尊重することを考えると、今は自我がある長女の意思を大切にしてあげることがいいのかなと妻と話し、「お姉ちゃんだから」「赤ちゃんが泣いているから」とガマンを強いる状況を作らないようにしています。
もちろん、いずれ長男も意思表示できるようになったら、お互いに尊重することを自然と学んでいけるようにしてあげたい。そういう流れの中で、長女自身も「自分より小さい子をきょうだいに持つお姉ちゃん」としての意識を学んでくれたら嬉しいですね。
妻も私もきょうだいが多い方なので、家族が増えてよりにぎやかな毎日になるのが、本当に楽しみです!

文 Atsuko Yoshimura
写真 Kyoto Tanaka

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