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1年間の育児休暇。 決め手は「今しかない家族の時間を大切にしたい」という想い

2023.08.25

この人に聞きました

藤川 真也 (仮名) さん

20代・会社員2歳の女の子、7カ月の男の子

兵庫県出身。SNS運営会社で法人向けマーケティング支援部門に所属。職場がフルリモートワークとなり、第2子誕生後に家族で関東から地元の兵庫県へUターン。現在は1年間の育児休暇中。

今回ご登場いただくのは、今年はじめに新たな家族を迎え、1年間の育児休暇中の藤川さんです。
フリーランスの奥さまは春に仕事復帰していて、夫婦で2人のお子さんを子育て中。
「第1子の妊娠がわかったばかりの頃は、何の知識もなく困惑してばかりでした」と当時を振り返る藤川さんに、ベビーを迎えるまでの奥さまとの暮らし、そしてこれまでの育児についてうかがいました。

初めての妊娠、初めての育児。
妻のつらそうな様子に困惑

第1子の妊娠が判明したのは2020年夏。奥さまは妊娠初期症状が強く現れ、ひどいつわりや体の痛みに悩まされていたそうです。

藤川さん子どもがほしいと夫婦で話してはいましたが、いま振り返ると、私自身は妊娠について何も知らなかったと反省です。
ドラマや映画なんかだと、妊娠がわかった後は少しだけつわりで体調が悪そうなシーンがあって……数分後には季節が変わり、赤ちゃんが生まれたシーンになっていたりするじゃないですか。そんなイメージで、多少は大変なこともあるだろうけど、少しずつ子どもを迎える準備をすればいいかなと考えていたんです。
ところが現実の妻はひどいつわりが2カ月くらい続いて、一日のうちほとんどをベッドで過ごすような状態。想像との違いに驚いて、妊娠中の症状や胎児の成長具合などいろいろ調べるようになりました。

とにかく奥さまが少しでも苦しくないようにと全力でサポートした藤川さん。それまで奥さまに任せていた日々の料理も、苦手ながら作るようになりました。

藤川さん家事は分担制でしたが、料理だけは妻に任せっきりだったんです。だから最初は何もできなくて、食材に火を通すのも恐る恐るという初心者っぷりを発揮していました。うどんを茹でたりハンバーグを焼いてみたり……ほんとうに少しずつですがレパートリーを増やしていきました。

つわりに苦しむ奥さまは、その日によって食べられるものが変わることも。リクエストを聞きながら調理したり買い出しに出たりする日々が続いたそうです。

藤川さん食べられるものが極端に限られていて、しかも日によってそのメニューが違ったので、いろんな種類の食べ物を買ってきては「これは食べられる、これはパス」と一緒に確認していました。結果、よく食べていたのは某ファストフード店のフライドポテト、某冷凍当食品メーカーのピラフ、昔から販売されているカップアイスのレモン味……。栄養バランスが心配になりつつも、とにかく口にできるものなら何でもいいということだったので食べてもらって。
私自身も家事や仕事でバタバタしましたが、妻のしんどそうな様子を目の当たりにして、妊娠ってこんなに大変なことなんだって衝撃の連続でした。

初めてのことばかりでご自身も不安が募ったものの、奥さまが安心できる環境であるように心を砕いたそうです。
藤川さんのサポートの甲斐あって、2021年には無事に長女さんが誕生。会社の制度を利用し5日間の休暇を取得しました。コロナ禍を機にお仕事がフルリモート勤務となっていたこともあり、時間を工夫しながら夫婦でじっくり育児に向き合えたそう。

2人目の妊娠から出産。
1人目の時より大変なんて!?

長女さんが生まれてから時間が経つと、2人目もほしいねと話し合える余裕も出て、2022年の春の終わりに第2子の妊娠が判明しました。
そして奥さまがつわりや頭痛、全身の関節痛など、前回の妊娠期間と同じようにつらそうな毎日を送る中、藤川さんご自身も予想外だったという展開を迎えます。

藤川さん前回の経験から「もっと上手にサポートできたら」なんて思っていたのですが、結果として2人目の妊娠中の方が激動の日々になりました。
というのも、1人目の妊娠期間は妻と私だけの生活だったのに比べて、今度は幼い長女を育児中。妊娠がわかったばかりの頃はまだハイハイ期でしたが、みるみる歩けるようになって行動範囲が広がり、いっときも目が離せないようになっていたんです。
つらそうな妻に、かまってほしそうな娘、たまっていく家事、果たすべき仕事……。「長女の妊娠時にある程度の経験はしたから大丈夫なはず!」なんて楽観的な思惑は通じず、想像以上にバタバタでした。

そんな日々の中、藤川さんは今後に向けて一つの決断をします。それは1年間の育児休暇の取得でした。

職場では男性初の長期取得者。
1年間の育児休暇を決意

第2子の出産予定が今年1月で、昨年の夏には職場の人たちに育休取得を宣言したという藤川さん。

藤川さん妻にも育児休暇の了解をもらった後、職場に「来年は第二子が生まれる予定なので、1年間の育休を取ります」と話しました。男性で1年間の育休を取得するのは私が初めてだったのですが、周囲は引き継ぎや不在期間のフォロー体制を一緒に考えてくれてありがたかったです。

社会では男性の育休取得を推進する動きがありますが、長期取得者のモデルケースがいない職場で第1号になった藤川さん。そこに悩みや不安はなかったのでしょうか?

藤川さん不安がまったくなかったと言えば嘘になります。復帰後のキャリアや育休中の家計のこと、決断前に少し考えました。でも、育休を取らないという考えは私のなかにはありませんでした。「自分が人生で大事にしたいもの」を考えた時に私の答えは明確で、家族がいちばん。今しかない家族の時間を大切にしたいと強く思いました。
「もし思ったようにうまくいかず困ることがあったら、それはそのときに考えよう」と割り切りました。

藤川さんによると、最近、男性の育休取得に対する世間の空気が変わってきていることを肌で感じるそうです。職場でも、藤川さんの後に半年の育休に入った男性社員もいらっしゃるのだとか。

藤川さん少し前……たとえば長女が生まれた頃は、男性が長期の育児休暇を取るのはまだ一般的ではないという風潮でした。ですがここ数年で社会の雰囲気もけっこう変わったかなと当事者として感じます。
これからも男性の育休取得者が増えて、かけがえのない期間をしあわせに過ごせる家族が増えるといいですよね。

子どもの成長は早い。
いましかない時間を大切に

育児や家事に専念できる今、その楽しさを実感しながらも「毎日夜にはクタクタに疲れています」と藤川さん。

藤川さん子育てってすごく体力が必要だから、育休を取って良かったとしみじみ思います。仕事をしながらだと全力で向き合えなかったんじゃないかな。子どもの成長を間近で見られるってほんとうにしあわせで、すばらしい経験をさせてもらっています。

たとえば、息子さんの表情が少しずつ豊かになってきたり、いつの間にか娘さんが1人ですべり台を滑れるようになったり。そんな一つひとつの変化に喜びがあふれるそうです。
最後、藤川さんに、これからパパになる予定の方に向けたアドバイスを聞いてみました。

藤川さん自分を振り返って感じるのは、妊娠・出産・育児に対して当事者意識を持つことがすごく大事だということです。
正直なところ、私自身は妻が妊娠するまで妊娠した後の女性の大変さとか、体がどう変化していくかとか、知識が不足していました。「つらそうな妻を自分が支えないと」といろいろ調べ始めて、初めて当事者になれた気がします。
偉そうなことは言えませんが、特に妊娠期間中から出産はどうしても女性の負担が大きいですし、サポートしようと思えば当人と同じくらい、またはそれ以上の知識は必須になると実感しました。
そして、育児休暇が少しでも気になるならぜひ取得することをおすすめします。私の経験上、予定に入れてしまえば仕事の調整は後で何とかなります! 人生で二度とない時間をじっくり過ごせますし、夫婦で日々の感動を共有できるのもすごくしあわせですよ。

文 Atsuko Yoshimura
写真 Junya Tanaka

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