1. HOME
  2. 記事一覧
  3. 【産後のお腹】へこまないお腹やたるみの原因・ケア方法を説明

【産後のお腹】へこまないお腹やたるみの原因・ケア方法を説明

2024.02.08

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

産後、自分のお腹に対して「たるんだ」「しまりがなくなった」と感じるお母さんが多いようです。

いつまでお腹が出た状態なのか気になったり、そもそも元に戻るのかと心配になったりする方もおられるかと思います。

ここでは産後のお腹が気になる方に向けて、産後のお腹の特徴や、ぽっこりと出てしまう原因、対策、産後のお腹と関係のある病気について説明します。

産後のお腹の特徴

産後のお腹は、子宮が収縮し小さくなるに伴い、へこんでいきます。個人差があるものの、子宮が元の大きさに戻るには6週間から8週間、広く見積もって約1カ月から3カ月ほどかかるでしょう。また、お腹のたるみが戻るまでには、産後6カ月から12カ月ほどかかる方が多いようです。

体に蓄えられた脂肪などは何もせずに勝手になくなるものではないため、筋トレや運動、ストレッチ、骨盤ケアなどをして戻そうとする意識や気持ちが大切になります。

産後6週間から8週間ほどは産褥期 といって、妊娠・出産により起きた体や生殖器の変化が、妊娠前に戻る時期があり、体を回復させることを優先すべきときです。ダイエットや運動などをしたくても、まずは体調に問題がないか、お医者さんから許可を得てから取り組む必要があります。

帝王切開だった方は、手術の影響で腹筋が引き伸ばされるためお腹がぽっこりしやすく、気になる場合が多いかもしれませんが、こちらもまずは傷口の回復を優先することが大切です。産後3カ月から6カ月くらいから徐々に腹筋をし始めても遅くないと考えられています。

産後にお腹が出る原因

産後にお腹が出る原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは赤ちゃんが産道を通りやすくするためのホルモンであるリラキシンの影響、骨盤周囲の組織の緩み、腹筋の筋力低下に焦点をあてて説明します。

リラキシンの影響

出産に向けて骨盤周辺の靭帯・関節・筋肉などを緩ませるリラキシンというホルモンがあります。リラキシンは産後の2、3日から6カ月ほどかけて徐々に分泌量が減るといわれています。

リラキシンが分泌している間は骨盤が緩み広がりやすい状態にあるため、その間はお腹が引き締まりにくいと考えられます。

骨盤周囲の組織の緩み

リラキシンの影響もありますが、妊娠と出産により骨盤周辺の組織が緩むことでお腹が出ると考えられます。

産後は骨盤だけでなく、背骨や股関節周辺の緩みも続くでしょう。

骨盤が開いたり筋肉や靭帯などが緩んだりしたままだと、子宮や腸などの内臓を支えにくくなり下腹がぽっこりと出る原因になります。

便秘や腰痛、場合によっては生理痛などのトラブルも同時に起こる場合があるでしょう。

腹筋の筋力低下

妊娠の期間や産後は体を動かしにくいため、腹筋が衰えてしまうことが考えられます。
腹筋が弱くなると座ったり立ったりするときの姿勢を保てなくなるため、お腹が出やすくなるのです。

また、お腹の前面に腹直筋と呼ばれる筋肉があるのですが、腹直筋同士を結ぶ筋が妊娠によって伸ばされてしまい、腹直筋離開と呼ばれる状態になる場合があります。

腹直筋離開を起こすと腹圧のコントロールが難しくなって体幹が不安定になり、お腹のたるみの原因にもなります。

産後に出てくるお腹の対処法

続いて産後に出てくるお腹の対処法について説明します。
ふだんの姿勢や運動、補正下着の活用、食生活の見直し、マッサージ・施術を受けることなどが挙げられます。

姿勢を意識する

日頃から良い姿勢をキープして過ごすと良いでしょう。姿勢を意識すると自然と腹筋が引き締まるようになります。

授乳のときは姿勢が崩れやすくなるため、 座ったときに背筋を伸ばし、骨盤の高さを左右対称にするなどの工夫を可能な限りでしましょう。

立つときや歩くときも腹筋に力を入れておくことで、手軽にお腹を鍛えることが可能です。

妊娠中はお腹が大きくなることで反り腰や猫背になるお母さんが多いため、リラキシンの分泌が少なくなって体が硬くなる前に、良い姿勢を保つことを習慣づけておきましょう。

ストレッチ・筋トレ・有酸素運動をする

産褥期が終わった場合やかかりつけ医から問題がないと判断されてからにはなりますが、ストレッチや筋トレ、有酸素運動によって体のケアをすることも、産後に気になるお腹の対処法に有効と思います。

筋トレであればスクワットやプランク、有酸素運動であればウォーキングやヨガなどから始めてみると良いでしょう。

骨盤体操によって骨盤の歪みをケアしたい方は、仰向けで膝を90°に曲げておへそを見るように上体を起こす、または、同様の姿勢で顔ではなく腰を上げてお尻を浮かせるなどの体操が良いでしょう。

産褥期の方であっても、産褥体操で体のケアをすることは可能です。
胸式呼吸や腹式呼吸、寝た状態で足首を伸ばしたり回したりしてふくらはぎのストレッチを行うことだけでも体操になります。

補正下着を着用する

補正下着は体型を戻すサポートをしてくれるアイテムです。

骨盤を固定するための骨盤ベルト、大きくなった子宮や姿勢のバランスを支えるニッパー、また、優しくお腹を押さえるタイプのショーツや少し着圧があるショーツなどもあります。

ガードルを使用すると、お腹や腰周りだけでなくお尻のケアも可能です。お尻のたるみが気になる方は検討してみると良いでしょう。

ただし、いずれも着用するだけで効果が保証されるものではありません。
補正下着による締め付けが苦しく感じる場合もありますので、自分の体の状態に合ったものを選ぶようにしましょう。

栄養バランスの良い食事

栄養バランスの良い食事を行うことも、健康や体型にとって大切なことです。産後は育児で多忙となり、思うように体が動かないこともあるかもしれませんが、脂肪分や糖分などが多い食事、インスタント食品などを取っているとカロリー制限が難しく、体重が増加しがちになってしまいます。

産後にはタンパク質・カルシウム・鉄分・葉酸・DHA/EPAなどの摂取を心がけると良いでしょう。タンパク質は肉類や卵、DHAやEPAは魚、カルシウムは牛乳・チーズ・ヨーグルトなど、鉄分はほうれん草・ひじき・レバーなどから摂取可能です。

葉酸は赤ちゃんの成長やお母さんの貧血防止などに役立ちます。ほうれん草・ブロッコリー・いちご・バナナなどから摂取が可能です。

また、お腹や体型が気になるからといって、無理な食事制限をすることなどは控えましょう。
産後は体を回復させることが大切な時期であり、食べたものがそのまま母乳にも影響するため、過度な食事制限は避けた方が良いと考えられます。

マッサージや施術を受ける

産後の1カ月健診などでかかりつけ医から問題ないと判断された場合は、骨盤矯正の施術を受けることも良い方法です。施術を受けることで、産後に開いてしまった骨盤や、引き伸ばされた骨盤底筋群のケアをすることが可能です。

骨盤底筋群は骨盤内にある子宮や膀胱などの骨盤内臓器を支える役割や、排尿や排便をコントロールする機能、姿勢を保つのに必要な下腹部や股関節付近の筋肉を支える機能があります。

出産から半年ほどはまだリラキシンが分泌されており、骨盤矯正などの効果が出やすいと考えられているため、施術が気になる方は産後半年以内に始める場合があるようです。

体を温める

皮下脂肪には冷えから体を守る作用があるため、お腹が冷えてしまうとさらにお腹に脂肪がついてしまうことが考えられます。基礎代謝を考えるとお腹の周辺を温めておくことも大切です。赤ちゃんのお世話があると難しい場合もありますが、1カ月健診で許可が出た後は可能なら湯船に浸かって、できるだけお腹を温めるようにしましょう。

産後のお腹と関連のある疾患

もし、腹痛に加えて他の症状が見られる場合などは注意が必要です。ここでは子宮復古不全と子宮内膜症について紹介します。

子宮復古不全

子宮復古不全は妊娠や出産により大きくなった子宮が元の大きさに戻らなくなることです。原因は、本来であれば子宮から排出される胎盤や卵膜が子宮内に残ってしまったり、双胎妊娠、羊水過多や巨大児の分娩により子宮が大きくなってしまったりなど、さまざまなものが挙げられます。

中には子宮筋腫や子宮内感染症や、分娩が長引いた場合、難産による大量出血、早産や帝王切開などが理由で子宮復古不全が起こる場合もあるでしょう。

子宮復古不全になると、出血や悪露が長引く、腹痛が起こるなどの症状が起こる場合があり、放っておくと感染症などを起こすリスクがあります。さらに精神的な負担にもつながることがあります。

子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮の内側を覆う子宮内膜に似た組織が、腹膜・卵巣・卵管などの子宮の内腔以外にできてしまう病気です。主に症状は痛みと不妊です。痛みには腰痛・下腹部痛・排便痛・性交痛などが挙げられます。また不妊は、子宮内膜症によりたまった古い血液による卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)が原因で、排卵障害や卵管の癒着などによって引き起こされます。

子宮内膜症が起こる原因は明らかになっていませんが、有力な説としては月経血が腹腔内に逆流することが関連しているといわれており、月経の回数が増加すると子宮内膜症の発生頻度も増加すると考えられています。産後であれば、長時間の分娩や帝王切開などが子宮内膜症と関連していることも指摘されています。

まとめ

産後はリラキシンの影響や腹筋の減少などが原因でお腹がぽっこりと出やすくなるものです。体重や体型が気になるお母さんも多いかと思いますが、産後1カ月や産褥期などは無理をせず、まずは体の回復から取り組んでくださいね。

体を動かしにくい時期であっても負荷が控えめな産褥体操であれば問題なくできる場合があるため、気になる方は産院でやり方を聞いてみると良いでしょう。

動けるようになってからは筋トレや有酸素運動など、無理のない範囲で徐々に運動量を増やしてみることや、整骨院などで骨盤ケアのための施術を受けるなど、選択肢が増えます。

体型のケアを始める時期は人それぞれなので、焦らず、自分のペースで取り組んでみてくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。