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産後の体型戻しはいつから?どうやって?対策や注意が必要なときを説明

2023.12.06

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

「産後の体型の変化がひどい…」
「これだけ変わってしまうともう戻らないのかも」

かわいい赤ちゃんを迎えるために頑張った証とはいえ、いざ自分の体型の変化を目の当たりにすると落ち込むお母さんは少なくないかと思います。

ここでは産後の体型戻しが気になる方に向けて、体型の変化の特徴や原因、対処法・対策、注意が必要なときについて説明します。

産後の体型変化の特徴

まず、産後の体型変化にはどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは変化が気になりやすい部位や、体型戻しを始める時期を説明します。

変化が気になりやすい部位

産後の体型で気になりやすい部位には、おなか、お尻、腰回り、骨盤、ウエスト、太もも、二の腕、背中、胸、体毛、髪の毛などが挙げられます。

また、体の部位ではありませんが、味覚に変化を感じられる方もいるなど、産後の変化は多岐にわたります。

体型戻しを始める時期

産後の体型戻しを始める時期は、産後6カ月以内であることが多い傾向にあります。
産後6週間から8週間は産褥期(さんじょくき)と呼ばれ、体の回復期間 であり、産後2カ月から3カ月頃に始める方が多いようです。どの期間であっても基本的には無理のない範囲で体型戻しに取りかかるのがよいでしょう。

最終的には体型が戻る方もいれば、戻らない方もいます。戻るまでの期間にも個人差があり、体型戻しを開始してから半年以内に戻る場合が多いようです。

産後に体型が変化する原因

産後に体型が変化する原因としては、妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンによる骨盤の緩みや、妊娠中についた皮下脂肪、おなかが大きくなることで引き伸ばされた皮膚が産後にたるむことなどが挙げられます。リラキシンはお産に備えて分泌され、赤ちゃんが産道を通りやすくするために欠かせないホルモンです。

また、産後は腹直筋も緩んだ状態になります。 腹直筋には胸郭(背骨にある胸椎と肋骨全体を指すかご状の部分) と恥骨(おへその真下にある陰毛が生えている部分) をつなぐ役割があります。

腹直筋の緩みによって胸郭が下がると、姿勢が悪くなり産後で重くなった胸が垂れて見えやすくなります。また、腹直筋の緩みやおなかの皮膚のたるみが原因の場合、おなかがポッコリ出やすくなり、上半身をうまく支えられなくなることにもつながります。姿勢の悪さや背中の痛みなどの原因にもなるでしょう。

産後の体型を戻すための対処法・対策

ここからは、産後の体型を戻すための対処法や対策について説明します。
主な対処法は、骨盤ベルトなどを使って姿勢の補正をすること、整骨院や整体に通うこと、運動や筋トレ、栄養バランスの取れた食事、バストやデコルテのケアなどがあります。

骨盤ベルトで骨盤から補正する

骨盤ベルトは姿勢を正しくキープするのに役立ちます。
下着選びは体型の戻りや体調に合うものを選ぶことが大切です。産後1カ月は体重が減り、体型が戻り始め、回復期の3カ月から6カ月は妊娠前の状態に戻ります。移行期は6カ月から12カ月であり、この時期は体型や体調の戻りに個人差が見られるようになるでしょう。

骨盤ベルト以外の産後体形ケアのアイテムとしてガードルやショーツなどの補正下着がありますが、産後6カ月までに取り組むとよい効果が得られるでしょう。他にも、産後のバストケアができるブラなどもありますので、気になる部位ごとでサポートアイテムをチェックしてみるのがおすすめです。

整体や整骨院に通う

整骨院・接骨院・整体・治療院などに通うことでも体型のケアが可能であり、腰痛、凝りなど全身に関わる施術をしてもらえます。自分では気づかなかったことを教えてもらえるので、自分の体をより詳しく知るきっかけになるでしょう。

通院頻度や費用は場所によってさまざまです。整骨院などでは、打撲や捻挫など急性期の症状ではない場合、基本的に保険適用外 となります。ただし、整骨院などでの施術は必ずしも受けなければいけないものではないので、体がつらい、あるいは気になることがあるというときに相談してみるとよいでしょう。

整体や整骨院をどう選べばよいかわからない方は、施術者がどのような経緯で学んできたかを知ると治療する場所を選ぶ一つの目安になるかと思います。

また、マッサージは「あん摩マッサージ指圧師」、整骨院および接骨院は「柔道整復師」という国家資格の取得が必要です。

東洋医学に基づいてゆがみが現れている部位に施術を行う整体、西洋医学に基づいて痛みのもととなりやすい背骨や骨盤にアプローチするカイロプラクティックなどでは資格取得の必要なく、手技や経験によって体の不調を和らげる施術が行われます。

また、他の判断材料としては、施術者の経歴や口コミも参考になります。一つの治療院で複数の施術者が対応するのではなく、施術者が一人で対応している方が、技術力が高い傾向にあるとも考えられます。この場合、施術の担当者が変わることがないため、体の状態や変化に対して理解してもらいやすい側面もあるでしょう。

運動や筋トレをする

体型を戻したい場合は、ウォーキングやストレッチ、ヨガなどできる範囲の運動習慣を続けていくことが大切です。

ウォーキングは体全体をバランスよく使えて、脂肪燃焼にもよい有酸素運動です。最初は5分や10分など、無理のない範囲から始めてみるとよいでしょう。

ストレッチやヨガは体の柔軟性を高めるためによい運動ですが、運動に慣れていない方は軽い負荷のストレッチや準備運動でもじんわり汗をかけると思います。どちらも育児中の気分転換になるでしょう。

ただし、床上げや産褥期は体の回復を優先しておいた方がよい期間です。個人差がありますが動き出すとしても産後1カ月以降から、帝王切開や何らかの合併症があった方は約1カ月半から運動が可能となる場合があります。かかりつけ医と相談しながら、無理のない範囲で少しずつ取り入れてみるとよいでしょう。

栄養バランスの取れた食事をする

体型を戻すためには栄養バランスのよい食事をすることも大切です。

母乳をうまく作れないと胸がしぼむ要因になってしまうため、母乳によい食事を取る必要があります。栄養面では、鉄・カルシウム・ビタミンC・葉酸などを意識的に摂取するとよいでしょう。

それぞれ以下の食品から摂取が可能です。
・鉄…牛の赤身肉・レバー・カツオなど
→貧血予防、赤ちゃんの発達に必要な成分です

・カルシウム…乳製品・煮干し・しらすなど
→イライラの防止、母乳により失われるカルシウムの補給に役立ちます

・ビタミンC…イチゴ・レモン・ピーマン・キャベツなど
→カルシウムや鉄分の吸収を助けます

・葉酸…ブロッコリー・アスパラガス・枝豆など
→ビタミンB12と一緒に造血を行ないます
→血の巡りが良くなるため、酸素や栄養が体に届きやすくなります

他にもビタミンやミネラルなど体の機能維持に欠かせない栄養素や、適度なカロリーを摂ることも大切です。

また、脳の発達に役立つDHAも摂取しておくとよいでしょう。ただし、過剰摂取には注意が必要です。また、マグロ類やキンメダイなどはメチル水銀が多く含まれている傾向にあるため、すぐに影響が出るものではないものを避けておきましょう。

食事だけで全ての栄養素でまかなえない方は、過剰摂取には注意しつつ、健康食品で補うことも検討しましょう。よいものを食べる一方で、糖分が多いお菓子や脂っこいもの、アルコールなど、体に悪いものを避けることも大切です。

バストやデコルテのケアをする

体型でバストの形が気になる方は、デコルテや大胸筋など部分ごとでケアするのもよい方法です。

出産後のしぼんだ胸や垂れた胸が気になる場合は、リンパ管が集中しているデコルテ周辺のマッサージがおすすめです。リンパ液の流れをスムーズにすることによって老廃物を流すことがバストケアにつながります。

バストマッサージでは、胸の脇肉をしっかりとつかみ、前に引っ張って胸前で1分間キープを片方ずつ行う方法もあります。

筋トレではバストを支えている大胸筋を鍛えることでバストアップなどの効果が期待できます。膝をついた状態で腕立て伏せをするなど、負荷が控えめなトレーニング方法から取り組むのがよいでしょう。

部分ごとでケアしたい場合、太ももであれば骨盤のケアをしたり、正しくスクワットをしたりすることが有効です。 部位によって対処法が異なるため、気になるところは自分でも調べておくとよいでしょう。

産後の体型変化で注意が必要なとき

産後の体型変化は妊娠に伴って自然に起こることですが、中には注意が必要な場合もあります。
ここでは甲状腺機能の異常や、恥骨結合離開、腹直筋離開について説明します。

甲状腺機能の異常

妊娠前とは違い、産後は食べたものが母乳に変わっていきます。
基本的には食べても太りにくい状態ですが、まれに甲状腺機能の異常によって痩せている場合があるため注意が必要です。

甲状腺は喉仏にある4cmから5cmほどの臓器で、体温や心拍数の調節、新陳代謝に関係しています。体重が少なくなる場合はバセドウ病であり、甲状腺機能が働きすぎている状態(=亢進している状態)を指します。動悸や息切れ、発汗、手指の震え、眼球突出などの症状も伴うでしょう。 痩せる以外に症状がない場合は心配しすぎることはありませんが、心配な場合はかかりつけ医に相談しておいた方が安心です。

恥骨結合離開

体型を戻すためにまずは骨盤から始めようと思った方のうち、恥骨周辺に痛みがある場合には恥骨結合離開の可能性があります。

恥骨結合離開とは、お産時に赤ちゃんの頭を通すために左右の恥骨を結んでいる部分が離れてしまった状態のことです。恥骨結合離開の症状として、強い痛みを伴うことが多いですが、基本的には経過観察で徐々に治癒していきます。

症状がつらいときは骨盤ベルトなどを使ってサポートしますが、改善されない場合は整形外科での手術が必要となる場合もあります。

腹直筋離開

腹直筋離開は、腹直筋が左右に伸びた状態を指します。
症状は、おなかに力が入らなくなることや、おなか周りのたるみ、産後の尿もれが改善しない、放置しておくと腰痛が起こることなどです。

産後の半年から1年ほどで自然に治ることが多いですが、個人差があり、元に戻りにくい方もいます。施術は整骨院などで受けることができ、筋トレやストレッチなどの指導を受けることが治療につながります。

まとめ

産後は出産によって骨盤が緩み、それに伴って胸郭と恥骨をつなぐ腹直筋や骨盤周りを支える骨盤底筋なども影響を受けます。自然に妊娠前に戻る部位もありますが、気になる点がある方や元の体型に戻したい方は、産褥期が終わる産後2カ月あたりから体型戻しに取り組むとよいでしょう。

母乳育児をしている場合は太りにくい時期ですが、痩せてしまう症状以外に動悸や息切れ、倦怠感などが起こる場合は甲状腺機能に異常が起こっている場合もあります。

産後のダメージや育児で大変な時期でもありますが、無理のない範囲で体型のケアに取り組んでくださいね。

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

プロフィール

平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。