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「再び、唾液の大切さについて!」

2024.02.14

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

お食い初めのお話のところで、赤ちゃんにはスタイ(よだれかけ)が必須の「よだれ沢山はwelcome!」とお伝えしました。
もう少し何故、よだれ(唾液)が大事なのかお話しますね。

唾液には、沢山の機能が備わっていて宝のお水です。
以下のような働きがありますが、⑦~⑪の作用はむし歯や歯周病等、お口の健康に重要な関わりがあります。

① 消化作用:唾液アミラーゼがデンプンを分解して消化しやすくする。
② 潤滑作用:粘膜を滑らかにして発音や嚥下を円滑にする
③ 粘膜保護作用:唾液中のムチン等が乾燥を防ぎ化学物質や細菌の影響を緩和する。
④ 味覚作用:唾液に溶解した飲食物が味蕾に作用し味覚が生じる。
味覚により、食欲、消化酵素分泌、消化管運動を亢進する。
⑤ 排泄作用:体内に投与された薬物等の血中濃度が高い場合、唾液中に排泄される。 
⑥ 水分代謝作用:体が脱水状態→唾液減少→口腔乾燥→尿抑制→飲水行動の促進
⑦ 浄化作用:お口の中の食べ物の残りを洗い流す。
⑧ 抗菌作用:免疫グロブリン、リゾチーム等が抗菌作用がある。
⑨ 歯質保護作用:唾液の糖タンパク質が歯質にぺリクルを形成し、歯質を保護する。
⑩ 緩衝作用:口腔内が酸、アルカリに傾いても中性pHに戻す。
⑪ 再石灰化作用:酸等で歯質が脱灰した部位に唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオン 
等が再沈着し、再石灰化すること。

唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺といった大唾液腺とお口の粘膜などにある小唾液腺から分泌されていて日内変動があり睡眠中はほとんど分泌されません。

また食事後はお口が酸性に傾いていること等も踏まえて、歯磨きする時間設定や食事のとり方等にとても重要な意味を持ちます。
また自律神経の影響を受け、リラックスしている時は副交感神経優位でサラサラとした
漿液性の唾液が、緊張している時は交感神経優位で粘調性の唾液、または分泌量が減少します。

人前で発表する等、緊張している時はお口がカラッカラになるのはこの為です。
このことは、口臭にも影響しています。
加齢によっても唾液分泌量は減り、高齢者のお口は乾燥してます。
なので私達歯科医療従事者は、口腔ケアをしてお口を清潔にしむし歯や歯周病は勿論
誤嚥性肺炎の予防をしています。
大人の皆様も是非、唾液の大切さを知って御自分の口腔ケアの意識向上に役立てて下さい。

子どもは唾液分泌量が多いのですが、最近お口の機能低下で例えばお口をポカンとあけたままの子どもが増えて来てお口が乾燥している場合があります。
その為、むし歯ができやすくなっている場合もあります。

口腔機能発達不全ということが、今の子どものお口の成長において非常に問題となっています。
このことについては、また別のコラムで詳しくお話しますね。

しっかりと噛むことで唾液は分泌されます。
生きることの基本は食べること。
やはりしっかりと噛むことはその入口ですね!

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。