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妊娠中期でも気持ち悪い!つわり後も吐き気がするときの原因や対処法

2024.04.10

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「妊娠中期になっても気持ち悪い」
「つわりのぶり返しってこれのこと?」

つわりには個人差があるため、安定期に入れば気持ち悪いのも落ち着くと聞いていたのに落ち着く気配がないという方もおられます。

ここでは、妊娠中期に気持ち悪さや吐き気で困っている方に向けて、気持ち悪さの特徴や原因、対処法、注意点などについて説明します。

妊娠中期の気持ち悪さの特徴

まずは、妊娠中期の気持ち悪さの特徴や、吐き気を感じやすい人はどのような人なのかについて説明します。

どのような気持ち悪さなのか

妊娠中期の気持ち悪さの種類は人によってさまざまです。例えば、つわりのときに感じていた気持ち悪さが妊娠中期になってさらに気持ち悪くなった方や、お腹が空いているのに何かを口に入れると気持ち悪くて食べられない方などがおられます。

また、つわりの症状のひとつとして気持ち悪さや吐き気を感じている場合は、頭痛や下痢など、他の症状も伴っている場合もあるでしょう。

食事に関しては、油っぽいものなど特定のものを食べたから気持ち悪くなるのではなく、酢の物やさっぱりしたものを食べても気持ち悪さを感じる方がいるようです。

吐き気を感じやすい人

つわりの原因はわかっていませんが 、妊娠中期になってもつわりを感じる人には、いくつかの特徴があるように考えられています。
以下のような特徴が挙げられるでしょう。

・普段から冷え性
・下痢や便秘に悩まされがち
・胃が弱い
・三半規管が弱くて車酔いをしやすい
・ビタミンなどの栄養が不足している

また、つわりを感じやすい方には、精神的なストレスを感じていることやホルモンバランスの変化に敏感であることなどもあるでしょう。

つわりは個人差が大きく、同じ人であっても一人目と二人目の出産のときで症状が異なることもよくあることです。

ただし、これらの特徴に当てはまっていたら必ず気持ち悪さを感じるとは言い切れませんので、あくまでひとつの目安になります。

妊娠中期の気持ち悪さの原因

妊娠中の気持ち悪さは、妊娠に伴う体の変化が主な原因となっています。子宮が大きくなって胃が圧迫されることや、ホルモンバランスの変化、便秘やストレス、ときには病気による影響によって気持ち悪さが起こっている場合もあります。

子宮で胃が圧迫される

妊娠が順調に進むと、赤ちゃんと子宮が大きくなって、子宮周辺の臓器が物理的に圧迫されます。

胃の内容物が押し上げられたり、食道括約筋の圧が弱くなったりすることが胸焼けや吐き気を起こし、気持ち悪さを感じる原因となる場合があります。

お母さんが小柄な場合や双子を妊娠している場合は、より気持ち悪さを感じやすくなる傾向にあるでしょう。

ホルモンバランスの変化

消化器系の働きはホルモン分泌の変化による影響を受けます。

具体的には、妊娠中は基礎体温の維持や受精卵を着床しやすくするためにプロゲステロンという黄体ホルモンが多く分泌されています。

一般的に胎盤が完成する妊娠15週頃にはプロゲステロンの分泌が少なくなる傾向にあるのですが、何らかの理由で分泌量の多い状態が続くと、プロゲステロンによって食道括約筋が緩むことになるのです。

食道括約筋が緩むことによって胃酸が食道に上がりやすくなるため、プロゲステロンの分泌が間接的に気持ち悪さを感じる原因になります。

病気などによる影響

吐き気以外に発熱や頭痛などを伴う場合は、病気による吐き気によって気持ち悪さを感じている可能性があります。

例えば、お腹の膨満感・張り・息苦しさを感じる場合は羊水過多症、吐き気と一緒に尿蛋白が認められるときは妊娠高血圧腎症、あるいは妊娠後期からですが、みぞおちから右の肋骨あたりの痛みを伴う場合はHELLP症候群などが挙げられます。

便秘

妊娠中の便秘から吐き気を感じる方もおられます。
便秘によって腸の中に老廃物がたまることが、便秘から吐き気を感じる原因のひとつといえるでしょう。

また、妊娠中に便秘が起こると体は下痢を起こそうとするため、下痢と一緒に吐き気を感じる方もいるかもしれません。

ストレス

妊娠中はお腹が大きくなったり、体が疲れやすくなってうまく動けなかったりと身体的なストレスを感じることが増えます。

また、出産に対する不安や、産後の心配などから精神的なストレスもあるものです。

ストレスがたまると自律神経に影響が出て、自律神経から胃酸の過剰分泌が起こり、気持ち悪さを感じることになるでしょう。

妊娠中期の気持ち悪さの対処法

ここからは妊娠中期の気持ち悪さの対処法について説明します。
食事の取り方をはじめ、気分転換、寝る姿勢、薬を使用したいときは医師から処方されるものを使うことなどについて、説明します。

食生活を見直す

ビタミンB1・ビタミンB6・ビタミンK・ビタミンCを摂取しておくと吐き気の防止になって、気持ち悪さを軽減することができるでしょう。

食品だと、鶏肉・豚肉・果物・じゃがいも・大豆・さつまいも・豆腐・魚などがこれらの食品を摂取できるためおすすめです。ただし、吐き気の原因となる食品がある場合は、それらを避けておくことも大切です。

食欲が湧かないときや食べることによって気持ち悪さを感じる方は、医師に相談の上でサプリメントを活用したり、ゼリー飲料などを活用したりするのもよいでしょう。

食べ方としては、消化によいものを小分けにして食べることやよく噛むこと、大食いや早食いはしないこと、寝る前の3時間以内は食べないこと、刺激物を避けておくことなども、気持ち悪さを防ぐためによいでしょう。

気分転換をする

気分を紛らわせることによって気持ち悪さが和らいだり、ストレスが気持ち悪さの原因となっていたりすることもあります。

好きな音楽や好きな映画などの趣味に触れてみたり、産後に行ってみたいところを考えてみたりするとよいでしょう。

思い切って何もしない時間をつくるのもおすすめです。気分転換をすることも立派な対処法だと覚えておきましょう。

寝る姿勢を工夫する

寝るときにシムス位で横になると楽に過ごせる場合があります。
シムス位は、仰向けの状態になって体の左側面を下にして横たわるようにする姿勢です。

仰向けとは違って、妊娠によって大きくなったお腹が胃や血管を圧迫せずに済むため、気持ち悪さが軽減されやすいでしょう。

人によってはシムス位がしっくりこない場合もあります。
その場合はクッションにもたれるようにするなど、様子を見ながら他の姿勢も試してみるとよいでしょう。

ずっと同じ姿勢でいると血流が滞りやすくなることが懸念されるため、たまには体の向きを変えたり、定期的に軽いストレッチをしたりすることをおすすめします。

薬を処方してもらう

どうしても気持ち悪くて仕方がない場合は、一度医師に相談して薬を使用するという対処法もあります。

気持ち悪さを和らげるために、制酸剤 を処方してもらうことができるでしょう。

ただし、薬は赤ちゃんにも影響するため、自己判断で市販の薬などは使わずに医師から処方されたものを正しい使い方で使うことが大切です。

妊娠中期の気持ち悪さの注意点

妊娠中に気持ち悪さを感じることは珍しいことではありませんが、なかには注意が必要な場合もあります。
ここでは、妊娠高血圧症候群や妊娠悪阻、受診が推奨されるときについて説明します。

妊娠高血圧症候群

妊娠中に起こる高血圧の症状を妊娠高血圧症候群(HDP )といいます。原因は現在でもよくわかっていませんが、産後に軽快することが多い高血圧です。

妊娠中は赤ちゃんに血液を回すためにお母さんの血管が拡張するのですが、この作用がうまくいかない場合に起こることがあると考えられています。

妊娠高血圧症候群は自覚症状がないケースも多々ありますが、むくみや頭痛、視界がチカチカするなどの症状があり、それらの中に吐き気も含まれます。

重度になると子癇発作・HELLP症候群・常位胎盤早期剥離・胎児発育不全など、無視できない合併症につながる場合があるため、妊娠高血圧症候群から吐き気を感じている場合は注意が必要です。

妊娠悪阻

妊娠悪阻(にんしんおそ)は、妊娠中に見られる激しい吐き気や嘔吐のことであり、脱水症状や体重の減少などを伴う危険なものです。
場合によっては内臓の機能に影響し、重篤な状態となる方もおられます。

1日中吐き気を感じる場合や、食事や水分を取ることもできないときなど、気持ち悪さがあまりにも強い場合には、妊娠悪阻を想定しておいた方がよいかもしれません。

経口補水液を飲んで応急処置をしつつ、かかりつけ医に診てもらうことをおすすめします。

受診が推奨されるときもある

吐き気に伴って以下に該当する場合は、かかりつけ医に診てもらうことをおすすめします。

・胸焼けや吐き気がひどくて薬を飲みたいとき
・体重が減少している
・脱水症状を起こしている
・気持ち悪くて飲食ができない
・貧血を伴う
・性器出血を伴う

これらに該当する場合は妊娠悪阻や妊娠高血圧症候群、それに伴う合併症と関連する可能性なども考えられます。

まとめ

つわりがあった妊娠初期と比べると妊娠中期は気持ち悪さや吐き気は落ち着く傾向にあります。

しかし、つわりは個人差が大きく、人によっては妊娠中期以降も気持ち悪さが続いたり、ひどくなったりすることはよくあるものです。

食生活や寝るときの姿勢などを工夫することで気持ち悪さが改善する場合もありますが、妊娠高血圧症候群やその合併症、妊娠悪阻などが原因となっていることもあるため、場合によっては吐き気以外の症状も観察するなどの注意が必要です。

「妊娠中に気持ち悪いのはよくあること」「吐き気くらいで受診するのは申し訳ない」とは思わないで、少しでも気になることがあったらかかりつけの先生を受診してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。