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「歯が抜けた!Part1」

2024.03.19

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

だいたい6歳前後になってくると、下の前歯くらいから乳歯が抜けて、永久歯が生えてきます。
御自分の歯が抜けた時のこと、覚えていますか?

私は良く覚えていますよ。
下の歯が抜けたら屋根の上に放り投げて、上の歯が抜けたら地面に埋めて、大人の歯がちゃんと生えますようにとお願いしました。

これは日本独自の風習で、シンガポールやタイ、ベトナム等でも同じような風習があるそうです。
他にはバングラデッシュではネズミの巣穴に歯を落とすとか、エジプトでは太陽に向かって投げるとか、チリでは抜けた歯をイヤリング等アクセサリーにするなど、国によって様々です。

欧米では、「寝る前に枕の下に抜けた歯をおいておくと、歯の妖精(tooth fairy)
が持っていって代わりにコインをプレゼントしてくれる」という風習があります。

我が家の子ども達も、丁度カナダ在住中でしたので、その風習を取り入れました。
綺麗な小さな袋に抜けた歯を入れて枕元に置いて、朝起きるとその袋にクォーターコイン(30円くらい)が入っていて、tooth fairyが歯のおまじないをしてくれているということで、子どもが自分で歯を大事にしようという気持ちになるきっかけとになりました。
tooth fairyの絵本も沢山あって、当たり前の風習として根付いていました。

欧米は歯に対する意識が日本より高いので、日本人家族は勿論、カナダのママ友からも歯の相談をされたりもしました。
この意識の高さは、社会的文化的背景があるのだろうかと、個人的に思っています。

せっかくカナダにいるので、主人の留学しているマギール大学歯学部でのセミナーも聴講させていただきましたが、そのベースにあるのは「ドラキュラ・スマイルはナンセンス!」ということです。

審美的に綺麗な歯列にすることは口腔ケアもしやすく、むし歯・歯周病予防、口腔管理向上に繋がります。

日本では八重歯が可愛いという時代もありましたし、まだ歯の意識は高くはないかもしれません。
そしてもうひとつ感じたことは、日本人は「お歯黒」という風習があったり、口元を手で隠す奥ゆかしさが美徳といった文化背景があるかもしれません。
コロナ感染対策でマスクに抵抗が無いのもその流れもあるかと感じました。

しかし欧米の皆様は、ニコッと笑顔で綺麗な歯を見せることで友好の気持ちを表現しています。
おそらく長い歴史の中で、多民族国家となっていることから「スマイル」の大切さを感じているのかもしれません。

綺麗な歯は自分の健康の為でもあり、コミュニケーションとしても重要な役割なのだなと感じました。
また、前歯が抜けていても平気でニコッとキュートな笑顔をみせてくれるのは微笑ましいですよね。成長の証ですもの!

これからのお子様達が活躍する今後のグローバルな社会では、日本人の良さを残しつつ
世界共通認識として歯・口腔の健康リテラシー向上を取り入れることが、健康の為にも交流の為にも良いのではと思います。

「歯が抜けた!大人の歯が生えてくる!」という経験は、子どもにとってわかりやすい成長への実感体験です。
我が家では初めて歯が抜けた日の感動の気持ちや記録を大切な記念として残しています。その後の歯磨きや食べ物の意識向上が自然に身についていってくれたと感じています。

いつかそうしたメモリアルな絵本のような冊子を作って、皆様にお届け出来ればよいなぁと一人勝手に夢みています。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。