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「妊娠中の歯科治療について」

2023.11.14

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

妊娠中にどうしても歯科治療をしないといけないこともあるでしょう。
妊娠前期の歯科治療は母体の負担が大きいので、応急処置だけにしておきましょう。
この頃は見た目に妊婦さんとわかりにくいので、歯科医院を受診した時には必ず母子手帳も持参して妊娠中であることを伝えて下さい。

母体の安定期(16~27週)であれば通常の歯科治療を受けることは可能です。
治療が必要なのか歯科医師に精査してもらい、対処していただきましょう。
妊娠後期には妊婦さんの体調、胎児の状況も考えて、緊急性が無ければ産後に治療する方が良い場合もありますので歯科医師と良く相談して下さい。

歯科の診療をする時はお口の中を直接診たり、問診することだけでなく、歯や歯周組織の
状態を診て、診断して治療方針を決めます。
その為にエックス線撮影はいろいろな情報が得られる重要な診査です。
歯科で撮影する小さなデンタル画像のエックス線量は0.01ミリシーベルト、顎と歯全部を撮影するパノラマ画像でも0.03ミリシーベルトと非常に低い線量です。

さらに最近はデジタル化しているところも多く、さらに線量が半分近く低くなっています。
また撮影時には、鉛の入った防護エプロンを装着しますし、歯、顎の撮影は赤ちゃんのいるお腹とは離れているので放射線の影響はとても少ないです。

治療によっては局所麻酔が必要な場合がありますが、通常の使用量であれば胎児や母乳への移行はわずかで影響はないといわれています。
無理に痛みを我慢して治療を行う方が母体にも胎児にも負荷がかかり良いことではありません。

歯が痛い時は薬を飲むこともあり得ますが、妊娠初期は胎児への影響も考えられますので、自己判断しないで必ず医師や歯科医師の指示に従うようにして下さい。

医薬品や医療機器等、医療の現場では、常にリスク(危険・不確実性)とベネフィット
(有益・恩恵)を考えなけばいけません。
リスクを0にすることは不可能で、より小さくして受容出来る範囲にすることが理想です。

歯科的な問題と母体や胎児への影響を考慮しどう対処していくのか、どのような治療が
必要なのか、医師や歯科医師に相談しその時の最善を尽くしていきましょう。

出来れば妊娠中に治療をしなくても良いように妊娠前から歯科健診を受けて、必要な場合は早目に治療しておくのが良いでしょう。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。