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「むし歯ができちゃう秘密2」

2023.10.19

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

では歯磨きさえしていれば、むし歯対策は万全でしょうか?
いえいえ、歯の質を強くすること、どんな食品を食べるのか、そして食べ方も大事なのです。

1960年代にKeyesという研究者がむし歯になる要因を概念図に表した「Keyesの三つの輪」を見ていただくとわかりやすいと思います。
これに加え1970年代には、Newbrunという研究者が時間的要因を加えて4つの輪の協同作用の結果として、むし歯が進行すると説明しました。

その後1990年代には、Fejeskovにより唾液の性質や飲食物や細菌の影響だけでなく、教育等社会環境や知識・習慣等の保健行動が間接的に影響を与えていると説明されました。

お口の中の細菌で、むし歯を作る菌はショ糖(砂糖)等を分解して酸を作り出します。
これを発酵といい、それによって脱灰がおこり歯に穴が開く、むし歯ができてしまうことはコラム「むし歯ができちゃう秘密1」にも記載しました。

お菓子やお料理に甘味があることは美味しいですし、食べたくなりますね。
でも、糖質を多くとることは、糖病病のような生活習慣病や肥満にも関わりますし、
いわゆるメタボリックシンドローム対策としても適正に取る方が良いですね。
糖質の中でも発酵性糖質がむし歯に関係しています。

では発酵性糖質にはどんなものがあるのでしょう?
化学構造として単糖、二糖類のスクロース(砂糖)、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)がそうです。
う蝕誘発性が一番高いのはスクロースなのですが、健康に良いかもしれない乳酸菌飲料や果物のジュース等にも入っています。
それだけではなく、炊いたお米やイモ類など多糖類の「調理でんぷん」にも含まれます。
でもこれらは重要な栄養源でもありますので、「0」にすることはできません。
適度に取ること、そして歯磨きや水でうがいすること等で取り除くことがむし歯の予防になります。

では、非発酵性の糖質ってあるのでしょうか?
ガム等に入っているキシリトールやエリスリトールといった甘味料は非発酵性糖質です。
全てをこれでまかなうことは難しいですし、一度に多量摂取すると軟便や下痢等の症状をおこしますので適宜取り入れてみるのが良いですね。

それともう一つ、気をつけてもらいたいのが遊離糖です。
食品や飲料の加工調理で加えられる糖のことで、はちみつ、シロップ、濃縮果汁等に存在する糖も含まれます。新鮮な果物や野菜に含まれる糖、母乳や牛乳に自然に含まれる糖は含みません。

お菓子や果汁入りジュース等の原材料名表示に、「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」「高果糖液糖」「砂糖混合異性化液糖」という表記があれば、これが遊離糖でグルコースとフルクトースを主成分とする液状の糖です。
つまり、発酵性糖質なのです。
ですから果物のジュースだからといっても、フレッシュなもの以外は加工食品として発酵性糖質が入っているということなので気をつけましょう。
WHOでも遊離糖摂取量のガイドラインがあり、目安としては1日約25g以下です。
例えば500mlのコーラ1本には約60gの遊離糖が含まれますので、イメージできますね。

でも神経質になる必要はありませんよ。
これから食品を購入したら、袋や箱に記載されている「原材料名」にも目を通してみると歯の健康のための意識が高まって良いかもしれませんね。

そして、食べ方も実は重要です。
これについては次のコラム「むし歯ができちゃう秘密3」でお話しますね。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。