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【妊娠中期の出血】起こったときに取るべき行動・妊娠初期との違い・原因を説明

2023.08.26

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「あれ、もしかして血が混じっていた…?」「トイレに行ったら少量だけど鮮血がついた」。妊娠中に出血があると何か赤ちゃんに影響があるのではと不安になりますよね。妊娠に直接は関係しない出血もありますが、注意すべき危険な出血もあります。ここでは、妊娠中期の方に向けて、出血があったときにとるべき行動や妊娠初期の出血との違い、原因、対処法、注意が必要な出血までを説明していきます。

妊娠中期の出血の特徴

妊娠中期の出血は基本的にはないといわれています。また、出血といっても量や色、回数、タイミングなど、特徴によって危険度はさまざま。かかりつけ医に相談することも想定して、出血の特徴はメモしておきましょう。

具体的には、量が多いのか少ないのか、色は茶色に近いか鮮血に近いか、回数や頻度は1日にどれくらいか、タイミングは1日の中でいつかなど、把握できているとよいでしょう。

また出血以外に、おなかの張りや痛みなど、別の症状を伴っているかを把握しておくことも原因を正確に突き止めるために大切です。

妊娠初期の出血との違い

妊娠初期(0〜15週)と妊娠中期(16〜27週)の出血は、原因に違いがあります。

妊娠に影響のある出血は、妊娠初期と妊娠中期に共通するものだと切迫流産などが挙げられると思います。

妊娠初期に見られるもので妊娠に影響があるものは、着床時の出血、絨毛膜下血腫、異所性妊娠、胞状奇胎、切迫流産が挙げられます。

また、妊娠中期には切迫早産や早産など、妊娠に直接影響する出血があります。破水や前置胎盤、常位胎盤早期剥離なども妊娠中期に出血を伴うこともありますが、出血しない場合もあります。

妊娠に直接影響のない出血だと、妊娠初期と妊娠中期の両方で見られるのは、子宮頚部びらんや子宮頚管ポリープ、痔、膀胱炎、尿路結石などが挙げられます。

出血があったときに取るべき行動

実際に出血があると焦ってしまう場合も多いので、ここでは出血時に取るべき行動について説明します。適切に対処できるように手順を2つだけにまとめましたが、どこかにメモしておくとより安心かと思います。

1.色・量・頻度など出血の性状を記録

まずは色・量・頻度・タイミング・出血以外の症状など状況を記録しておきましょう。ちゃんと覚えているつもりでも、記憶違いがあるものです。自分の身体の状態を正しく理解するために、メモで残しておくことをおすすめします。

出血が少ない場合や痛みなどの他の症状も軽いときは、心配しすぎなくてもよい場合があります。不安な方は、かかりつけの産院に連絡して診察を受けた方がよいか判断してもらうと安心です。

2.かかりつけ医に連絡

出血量が多い(生理2日目以上の出血)と感じるときや、出血と一緒に起こった別の症状がつらいときは早めにかかりつけ医に相談しましょう。出血の状態や健康状態などを正確に伝えるために、妊婦さん本人が電話をすることをおすすめします。診察が必要であればすぐに受診し、そうでない場合は指示に従いましょう。

妊娠中期の出血の原因

続いて、妊娠中期の出血の原因として考えられることや病気について説明します。日常生活の中で原因となっていることや、病気とはいえ大きな心配は不要なこと、早急に対応が必要なことがあります。

運動のしすぎ

運動のしすぎなどによって出血をすることがあります。おなかの張りを感じているときに立ち仕事をしてしまった場合や、妊娠中期になったことで身体を動かしやすくなった方は注意が必要です。

肉体の疲労がたまると子宮の収縮が起こりやすくなり、切迫早産につながる危険性も否定できません。動きすぎには注意しましょう。

子宮頚部びらん

子宮の入口である子宮頚部にびらんがあると、そこから出血する場合があります。びらんは皮膚や粘膜の上層にある細胞がはがれ落ちて、その下にある層が見えている状態のことです。これは妊娠中では、よく起こる生理的な変化です。

ホルモンの影響で充血した状態になり、赤ちゃんの成長によって圧迫されることや、性行為や内診の刺激によっても出血することがあります。

子宮頚部びらんでは少量の出血が見られますが、おなかの張りや痛みがない場合は強く心配する必要はなく、経過観察となる場合が多いようです。

子宮頚管ポリープ

子宮頚管ポリープのほとんどは良性の腫瘍で、妊婦の方にも多く見られます。子宮頚部びらんと同様に少量の出血のため経過観察となることが多いようですが、出血を繰り返すと細菌感染を起こしやすく、そこから早産となる心配があります。

出血以外では、膿みのようなおりものを伴う場合があるかもしれません。

妊娠と関係のないことですが、痔による出血もあります。排便時に鮮血と痛みがある場合は、肛門の外側が切れ痔になっていることが多く、血が出ていても痛みがない場合は内痔核(いぼ痔)の可能性があります。

清潔にして、排便時はいきみすぎないことが大切ですが、長引く場合は医師に相談しましょう。

内診後の出血

人によっては、内診後に出血を伴う場合があります。茶色の出血や、内診から数日経ったあとに出血があると、内診時の刺激が原因かもしれません。子宮頚部びらんのある方は内診後に出血しやすい傾向があります。

切迫流産

流産とは妊娠22週未満で妊娠が終了することであり、切迫流産は妊娠22週未満で流産のリスクがある状態のことを指します。

22週未満で痛みや出血によって受診する方も切迫流産となるため、流産しそうな人だけではなく、正常妊娠への回復が可能な方を指す言葉でもあります。

出血以外では重く張った感じがする腹痛を伴いますが、出血がなく強い腹痛を感じる場合などもあります。おなかの痛みは、生理痛に似ています。

切迫流産には有効な治療方法はなく安静にすることが基本です。症状に当てはまるものがあれば、かかりつけ医に診てもらった方がよいでしょう。

切迫早産

切迫早産とは早産になりかかっている状態のことです。妊娠22〜36週におなかの張りを頻繁に感じる場合は注意が必要です。

出血以外では、下腹部の痛み(生理痛に似た痛み)、破水などの症状も挙げられますので、少しでも思い当たることがあれば、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。

前期破水

前期破水とは、陣痛が発来する前に赤ちゃんを包む卵膜に穴が開き、羊水が外に流れてしまうことです。

温かい水のような分泌液が流れ出て、その後に陣痛が発来したり、週数によっては早産につながったりする場合があります。分泌液の量は少量なこともあれば大量なこともあり、出血を伴うことがあるのも特徴です。

破水かどうかの診断は分泌液を調べることで可能です。妊娠の維持が難しくなる場合もあるため、早めにかかりつけ医に相談をしましょう。

前置胎盤・低置胎盤

赤ちゃんに栄養や酸素を運ぶ胎盤は、一般的にはおなか(子宮)の上の方に作られます。しかし、何らかの理由で子宮の下の方に作られることがあります。これにより赤ちゃんの出口である子宮口が全部または一部が胎盤によって覆われることを前置胎盤、子宮口付近に作られることを低置胎盤といいます。

前置胎盤・低置胎盤では28週以前に痛みを伴わない出血が見られる場合があります。いつ入院やお産が始まってもよいように出血があったら、かかりつけ医に相談すること、また運動や性行為など身体への負担は避けることなどが大切です。

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは、妊娠中に赤ちゃんが産まれる前に子宮から胎盤が剥がれることです。胎盤はへその緒(臍帯)を通じて赤ちゃんに酸素や栄養素を運んでいる器官なので、胎盤が剥がれると赤ちゃんに酸素や栄養を運べなくなり、母体側では出血することが考えられます。

大量に出血することもあり、下腹部の痛みやおなかの張りなどが見られることもあるでしょう。切迫早産とも似ているため注意が必要です。多量の出血があるときに常位胎盤早期剝離を疑いますが、出血が全くない場合もあります。

出血や激しい腹痛によってショック状態を起こしたり、早期に胎盤が剥がれることで赤ちゃんが成長しにくかったり、死亡したりする危険な状態です。もし思い当たる症状があれば、早期にかかりつけ医に相談しましょう。

注意が必要な出血

基本的に、妊娠中期に出血することはありません。中には「胎動があれば大丈夫」という説もありますが、以下のような場合は油断せずに、かかりつけ医に相談することが大切です。

  • 出血だけでなくおなかの痛みや張りが強い
  • 出血が鮮血
  • 出血が続く
  • 破水がある

これらの場合は、切迫流産・切迫早産、前期破水、前置胎盤・低置胎盤、常位胎盤早期剥離など、危険な状態である可能性があります。早急にかかりつけ医に相談して、診察の要否を確認しましょう。

まとめ

妊娠中期の出血は基本的には起こらないといわれています。あったとしても、動きすぎなどの日常生活によるものや、子宮頚部びらんや子宮頚管ポリープなど経過観察となることが多い場合もあります。ただし、中には危険な状態のサインであることも考えられます。出血だけでなく痛みや張りがあるとき、鮮血、出血が止まらないときなど、少しでも様子がおかしいと感じる場合は、かかりつけの先生に相談してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。