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妊娠初期のつわり(悪阻)の時期はいつからいつまで?症状・対策を解説

2023.05.18

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

妊娠初期に起こるつわり。悪阻(おそ)とも呼ばれます。お母さんになったらどのような体調の変化が起こるか気になる方や、いつまでつわりに耐えないといけないのか不安になる方も多いのではないでしょうか。

ここではつわりについて理解したい方に向けて、つわりの時期や原因や症状、その対処法までを説明します。

つわりが起こる時期

つわりが起こる時期には個人差があります。最後の月経を0週とすると、早い人であれば妊娠3~4週から、多くの人は5~6週あたりからつわりの症状が現れ、12~16週ごろに落ち着き始めます。

この中でも、6~9週あたりは症状のつらさがピークに近づきます。多くの方にとって、つわりが終わる時期は妊娠中期である妊娠20週あたりです。しかし分娩直前の妊娠40週までつわり症状がある方もまれにいます。

症状の重さも個人差があり、最初は空腹時に吐き気を感じる方が多いようです。

妊娠初期に起こるつわりの原因・症状

つわりの主な原因はhCGと呼ばれる、妊娠に関係するホルモンの分泌量が変動するためとされています。ホルモン分泌の変化により、脳で嘔吐(おうと)に関係している部分が刺激されたり、女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増えて胃腸機能が低下し腹部膨満感が生じたりすることが吐き気につながります。

また、ホルモンバランスの変化により体の代謝機能に影響が現れ、体が栄養をうまく吸収できなくなることも、つわりに関係する要素として考えられています。

では実際にどのような症状が現れるのか。ここでは吐き気・におい・眠気・イライラ・頭痛・胃痛・食欲の変化について説明します。

吐き気

一般的なつわり症状として吐き気が挙げられ、吐きづわりとも呼ばれます。

胃や胸のあたりがムカムカしてしまい、食べても吐いてしまったり、お腹が空いているとき(食べづわりと呼びます)や満腹のときに吐き気を強く感じたりします。無理に食べると吐いてしまうこともあるでしょう。

においに敏感になる

妊娠前には何とも思わなかったにおいを強く感じたり、不快に思ったりすることがあります。温かい食べ物から出るにおいや香水など、具体的にはお米を炊いたときやおみそ汁、煮物といったにおい、シャンプーやアロマの香りなどで変化を感じる方が多くいます。

女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)がにおいの感受性を高める作用を持っていることが理由と考えられています。

眠気

眠気もつわりの症状の一つです。たくさん寝ても眠かったり、体がだるく感じたりすることがあります。

これには、妊娠のために必要なホルモンであるプロゲステロンが関係しています。プロゲステロンには便秘や肌荒れに加えて、眠気を起こさせる作用があります。

また、プロゲステロンが分解されてできるアロプロゲステロンというホルモンにも眠気を誘発する作用があることがわかっています。

イライラ

ホルモンバランスの影響により、つわりの症状でイライラしたり、涙もろくなったり、妊娠初期は感情の起伏が激しくなります。

また、ホルモンバランスが原因ではなく、精神的なストレスによってイライラしたり、ストレスがかかることによってストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンが分泌されたりもします。

イライラが赤ちゃんに影響するのではないかと心配する方もいますが、極度に強いストレスでなければ、まず心配はありません。

頭痛

つわりによって頭痛も起こります。

この頭痛には片頭痛と緊張型頭痛の2つがあります。片頭痛はホルモンバランスが関係しており、緊張型頭痛は姿勢の硬直や運動不足などが原因となっています。

片頭痛は頭の片側か両方にズキズキと脈打つような痛みが走るのが特徴で、吐き気や嘔吐などが見られる場合もあります。片頭痛があるときは前兆として強い光やにおい、大きい音など、普段気にならないことが煩わしく感じることもあるでしょう。

緊張型頭痛は頭を強く抑えられているような痛みがあり、妊娠後に体を動かしづらくなって同じ姿勢で過ごしてしまうことが原因となります。体がこわばってしまうと、頭が痛むことにもつながるのです。

胃痛

つわりによる胃痛は、ホルモンバランスの変化によって胃腸機能の低下が起こることが原因です。また、つわりによって吐いた後に胃酸が逆流した状態になっていたり、強いストレスにさらされたりすると胃痛につながります。

症状としては、キリキリしたり、締めつけられたり、張っているような胃痛が現れたりするでしょう。

また、子宮が大きくなる時期では、子宮によって胃が圧迫され、消化機能に影響が出ている場合もあります。

食の好みが変わり、食欲が増す

食や味覚に変化が見られるのも、つわりの症状の一つです。

以前は好きだったものが食べたいと思えなくなり、その反対に苦手だったものがなぜか食べたくなることがあります。また偏食になったり、口に何か入っていないと気持ち悪くて吐きそうになったりするなど、食に思いがけない変化が現れます。

つわりでつらいときの対処法

つわりでつらいときの対処法について説明します。ここでは吐き気・におい・食事・ストレスケアの4つを紹介していきましょう。

吐き気の対処法

吐き気の対処法として以下の方法があります。

  • 生姜を摂る
  • ビタミンB1やB6をはじめとするビタミンB群を摂る
  • 手首内側にある「内関(ないかん)」のツボ刺激
  • すぐ食べられるものを準備しておく
  • 嘔吐が多い場合は水分に加えて塩分を摂る

ビタミンB1は肉、魚、豆、穀類などに含まれ、特に豚肉が豊富です。他には、玄米、枝豆、豆腐などに含まれています。

ビタミンB6はバナナやドライトマト、マグロ、カツオ、鶏のささみや胸肉、サケなどに含まれています。

身近な食品から摂れれば良いですが、難しい場合はサプリメントを活用するとよいでしょう。

すぐにつまめる軽食を常に準備しておいたり、寝起きしてすぐの吐き気に備えて枕元に準備しておいたりすると安心です。口の中がさっぱりするミント系やレモンのような酸味のある味のアメやタブレット、お菓子などを準備しておくとよいでしょう。

嘔吐すると水分だけでなく電解質も失われてしまいます。脱水症状の対策として、水分に加えて塩分補給もしましょう。電解質は経口補水用液やスポーツドリンクなどにも含まれています。

つらいにおいは避ける

つわりがあると、においがつらいと感じるときが多いかと思います。生活の中では、これらのことを意識しておくとよいでしょう。

  • 食べ物は冷やしてから食べる
  • マスクをする
  • 苦手なにおいがする作業は誰かに代わってもらう

温度の高い食べ物やスープなどの湯気で気持ち悪くなることがありますので、熱いものは基本的に冷ました状態で食べるのがおすすめです。

また、物理的な手段として、マスクを着用しておくのもよいでしょう。最近では好きな香りをつけられるマスクもあります。普段から着用しておくと感染症のリスクを減らすこともできます。

苦手と感じるにおいは人それぞれですが、例えば米を炊いた後のにおいが気になる場合では、家族に少しだけ台所での作業を代わってもらったり、他の食材で代わりになるものがないか考えてみたりするとよいでしょう。

食事は無理せず栄養を重視する

次は、食事がつらいときの対処法をご紹介します。

  • 食べられないときは無理しない
  • 必要に応じてサプリメントなどで補う
  • 葉酸の摂取を心がける

「妊娠中はできるだけ食事を取らなければ…」と焦る気持ちがあると思いますが、食べられないときは無理をせずに、食事をストレスに感じないことが大切です。食べられるときや、食べたいと思ったときに食べるようにしましょう。

ただし、葉酸が不足すると流産や胎児の奇形、貧血につながるという報告があります。葉酸はイチゴやほうれん草などに含まれており、葉酸以外ではビタミンB12・ビタミンB6・ビタミンCなどが葉酸の吸収に役立つことがわかっています。

食事から摂ることが難しい場合はサプリメントを上手に活用するとよいでしょう。

精神面や日常のケアを積極的に

普段から頑張っている自分をいたわることが大切です。人によってさまざまですが、ストレスケアやリフレッシュの方法について説明します。

  • 好きな音楽を聴いて気分転換をする
  • 友達と話す
  • つらいときは家事や仕事で無理をせず家族に相談する
  • 無理のない範囲で運動をする
  • 感情が大きく変化してしまうことを受け入れる

短い時間であっても、音楽を聴いたり映画を見たり、好きなことに触れて気持ちを和らげることが大切です。可能な範囲で運動をして、気持ちをリフレッシュさせるのもよいでしょう。

また、可能であれば、友達に話を聞いてもらうか、どうしてもつらいときは家族を頼って、過ごしやすい状態や環境を作りましょう。

極端に大きなストレスでなければ心配し過ぎる必要はありませんが、ストレスホルモンであるコルチゾールが胎児の成長に影響を及ぼすとも考えられています。妊娠中はどうしても気持ちの変化が大きくなりがちなので、自分を責めずに受け入れることも大切なポイントです。

まとめ

妊娠初期のつわりの時期や、つわりによってどのような変化が起こるか、また、どのような対処法があるかを説明しました。妊娠初期の体調の変化は、ホルモンバランスの変化や感じるストレスや不安などによって引き起こされるものです。

症状でつらくなることは仕方のないことなので、時には周囲の人を頼って、無理をせずに過ごすことが大切です。あまりにひどい場合は診察を受けることも考えましょう。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。